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4.ご先祖様の遺産ー伝説の薬師
しおりを挟む「ご主人様、朝食でーす。」
イチカたちに先ほど美味しい紫色のカレーを持ってきた金髪のメイドさんが、今度はこんもりと意味不明なものがのった器を持ってきた。
「あら、もうそんな時間? ぐっすん。」
さっきまで床に崩れて、家の中にいるのにマントを着たままオイオイと大泣きしていた女性は、ルールーの隣に座り直すと、金髪のメイドさんが持ってきた器にスプーンを突っ込み、(´~`)モグモグと食べ始めた。
「もういいわ。人間、諦めが肝心よね。」
彼女はスプーンを持って、さらにモグモグと食べた。
「ところでコナン……じゃなかった、あなたの今の名前は?」
食べながらお皿を持ち上げ、目線をルールーに戻す。
「アラ、さすが伝説の薬師・薬子《くすこ》ね。立ち直りがとても早くてステキね。」
ルールーの素直な感想に、薬子は隣から彼女を睨みつけた。
「今はルーって名乗っているわ。」
ルールーは薬子の睨みをきれいに無視する。
「わかったわよ。そこまで無視しなくてもいいんじゃない? それで、そのルーは私に何の用かしら?」
いつの間にか金髪のメイドさんが持ってきた食後のコーヒーを飲んでいるルールーは、にっこりしてとんでもないことを言い放った。
「私たち、辺境砦の兵士になりたいから、あなた、推薦してくれないかしら。」
ちょ……ちょっと待って、ルールー。
今、いま何て言ったの?
“私たち”ってことは、二人とも?
なんで私も人数に入ってるわけ?
イチカが心の中で絶叫している横で、二人の話は進んでいく。
「別にいいけど、なんでまた砦で兵士なんかやるの? その娘、辺境伯の実子でしょ? それならすぐに見習いとかがあるんじゃないの?」
「うーん、それは無理かしら。」
ルールーは色っぽい角度で小首をかしげて、薬子に微笑んだ。
一瞬、顔を真っ赤に染めた薬子がすぐ我に返ると、わざとらしく咳払いして隣を向き、テーブル脇に控えていた金髪のメイドさんに、奥に置いてある紙を持ってくるように言いつけた。
すぐに金髪のメイドさんは下がり、黒い紙を持って戻ってきた。
「よく理由はわからないけど、いいわよ。ちょうど今週、砦に薬を納入する予定があるから、納品するものと一緒に砦の守備隊隊長にこれを持っていくといいわ。」
薬子はそう言うと何かを書きつけ、それをルールーに渡した。
「助かるわ、薬子。じゃあこれは私から。」
ルールーはそう言うと、飲み終えたコーヒーのソーサーに何かの文字を書きつけた。
横に座っていた薬子は、書きつけられた文字をのぞき込んでしばらく固まっていた。
数秒後、叫び声をあげた。
「なにこれ! なにこれって……これって……長寿命薬の魔法式じゃない! あなた、私を馬鹿にしてるの?」
「心外ね。」
「私は十分長生きしてるの! これ以上、長生きしたくないわよ!」
「誰があなたにって言ったの? これから出会う、あなたのお気に入りに飲ませるのよ。」
「私のお気に入り……」
薬子はしばらく無言で考えていたが、いきなり立ち上がった。
瞳をキラリと光らせる。
「それって……それって……つまり! 自分の好きな人と死に別れせずに生きていけるってこと!」
薬子の瞳がさらにきらめきを増した。
「そういうこと。それを相手に飲ませれば、相手もあなたと同じくらいの寿命になるわ。」
薬子はルールーの両手を握って上下に振ると、鼻歌を歌いながら奥に消えていった。
――それって、強制的に相手の寿命を延ばせるってことで、きっといいこと……なのよね。
イチカは、薬を盛られる人物のことを考えようとして、すぐにやめた。
なぜか、暗い想像しか思い浮かばなかったからだ。
――人間、知らないほうがいいこともある。うんうん。
イチカは無理やり納得した。
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