ご先祖さまは中二病⁉

しゃもん

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7.前線の砦2_砦の兵士への採用合否

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 ルールーとイチカは今、砦の中にある訓練場にいた。

 目の前には、隻眼の背の高い男が薬子からの推薦状を見ながら、二人を睨みつけていた。

「でっ……ゴホン……あっ、ま、その、だなぁ。一応、先ほどの殺気からしてルー殿は、だなぁ……まあ、ここの兵士になるのに問題はないが……」

 隻眼の男の視線がイチカに注がれた。  
 その瞬間、ルールーから殺気がほとばしる。

 ――おいおい。  
 なんだこのねーちゃんの化け物みたいな殺気は……俺、思わず漏らしそうになったぞ。

 全員の心が、ある意味ひとつになった次の瞬間。  
 訓練場にいた全員が、思わずその場に屈みこんだ。

「ぐげっ……た、立っていられない……!」

 ルールーはその場に急に屈みこんだ男たちに笑みを見せると、唯一その場で用紙を手にしたまま立っていた男の背後に回り、彼の腰に差してあった剣を抜いて首筋に小さな傷をつけ、そっと耳元で囁いた。

「私たちを雇わないとは言わないわよねぇ?」

「「「はいぃーーー! もちろん雇いますっ!」」」

 なぜか砦にいた兵士全員が一斉に立ち上がり、ビシッとルールーに敬礼してそれを承認した。  
 ルールーはそんな兵士たちににっこり笑いかけ、満足そうに頷いた。

「じゃあ、私たちを宿舎に案内して頂戴。もちろん一番いい部屋にしてね。だって私たち、女の子ですもん♪」

(((こんな女がいてたまるかぁぁぁぁぁ!!)))

 全員の心がそう叫んでいたが、ルールーの希望通りに、イチカとルールーはこの砦で一番良い来客用の客室に案内された。

 客室に着いたルールーは、薬子から預かってきた荷物を砦の兵士に片付けさせ、すぐにその荷物の代金を払いに行くよう命じた。

「じゃ、支払いは頼んだわね。」

「畏まりました!」

 若い兵士はビシッと敬礼すると、駆け足でその場を離れた。

 ルールーはその様子に満足げに頷くと、荷車に乗せられていた二人の荷物を、自分たちの部屋に運ぶよう命じた。

「畏まりました、ルー様。お部屋はこちらになります。」

 先ほどの兵士より少し年配の兵士は、二人の荷物を両手に持ちながら、いかつい顔に精一杯の笑顔を貼り付け、いそいそと二人を砦で一番良い部屋へと案内した。

「こちらです。」

 兵士は部屋の中に荷物を置くと、丁寧に二人を中へと案内した。  
 ルールーがイチカを連れて部屋に入ると、すぐに二人分の料理が運ばれてきた。

 ルールーは運ばれてきた食事を受け取ると、それを部屋に設置されていたテーブルに並べた。

「さあイチカ、食べましょう。」

 イチカの目の前には、ふんわりと湯気を上げたスープと塩をまぶした肉、ぶつ切りのキュウリ、ただ茹でただけのニンジンが盛られていた。

「まあ、見た目と味は明日からなんとかするとして……まずは食べましょうか。」

 イチカは頷くと、ルールーの向かいに座り、小さく肉を切り分けて口に運んだ。

 ――あったかい。

 味は塩味しかしないが、なぜかとても美味しかった。

「さあ、今日は食べたら寝ましょうね。明日から忙しくなるわよ。」

 イチカは素直に頷くと、ルールーに言われるまま食事をなんとかすべて胃に収め、そのままベッドに入ってすぐに眠ってしまった。

 ルールーはすぐに眠りについたイチカの周囲に守護結界を張り巡らせると、おもむろに立ち上がって部屋の扉を開けた。

 ルールーが開けた扉の前には、聞き耳を立てていた老兵士がいた。

 ――げっ、なんで気づかれたんだ。

「あなたがこの砦の本当の隊長様かしらぁ?」

「なんでわかった?」

「さあ、なんででしょ?」

 ルールーは小指を可愛らしく振って、とぼけた。

「あんたはいったい何者なんだ?」

「うーん、そうね。侯爵さまには“正当な叡智の書の後継者”が現れたって報告して頂戴。」

「はあぁー!? そんなウソ八百言えるか!」

「あら、嘘じゃないわよ。数年のうちに証明できるわ。」

「おい、よそ者。“叡智の書”の後継者は男なんだよ。」

 老人は通路の壁に寄りかかりながら腕を組み、バカにしたような顔でルールーに言い返した。

「それこそ嘘ね。“叡智の書”の後継者は、後継者と同じ性別になるのよ。」

「なんだと!!?」

「確かめてみなさい。」

 ルールーはそれだけ言うと、扉をバタンと閉めてイチカが眠っている部屋へと戻った。

 ――“叡智の書”の後継者が女……おんなぁ……?  
 んなわけ……いや……?

 くそっ! 俺には判断できん。  
 すぐに侯爵様にお知らせせにゃならん!

 老兵士は足早にその場を後にすると、隊長室に設置されている水晶で緊急連絡を取るため、踵を返した。
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