ご先祖さまは中二病⁉

しゃもん

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8.前線の砦3_叡智の書、後継者現れる!

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 丸坊主でいかつい顔の老兵士――マル・ボーズは、ルールーが砦を去った後、隊長室まで急いで戻ると、懐から机の引き出しの鍵を取り出し、カチャリと差し込んだ。

 すると、軽い音と共に、机の上に青い水晶がふわりと浮かび上がった。

 ゴクリ。

 マルは額に汗をにじませながら、水晶に両手をかざし、唸るような声で呪文を唱え始めた。

「つながれーツナガレー、つながれーツナガレー……くそっ。  
 つながれーツナガレー、つながれーツナガレー……くそっ。  
 つながれーツナガレー、つながれーツナガレー……くそっ。  
 つながれーツナガレー、つながれーツナガレー……くそっ……!」

 怨念じみた声でブツブツと呟きながら両手をかざし続けると、青い水晶からザーザーという耳障りな音が響き始め、やがてそれが人の声に変わった。

「ザーザー……あー……ボウズ……マル……ボウズ……。」

「辺境伯さま、マル・ボーズです。」

「おお、久しぶりだな、ボーズ!」

「辺境伯さま、短縮するなら“マル”でお願いします。」

「わかった、ボーズ!」

「マルです。おやっさん。」

「あーあー、“おやっさん”言うな、ボーズ。」

「だから“マル”ですって言ってるんだよ、オイ。」

「ああぁーオイ。誰に向かってタメ口を聞いてる!」

「すんません。とにかく、呼び名は“マル”でお願いします。」

「ああーなんだぁ、マル。それでこんな夜中に緊急通信なんかしやがって、何があった?」

「いいですかい。一回しか言わないんで、ちゃんと聞いてください。」

「ああーこんな真夜中なんだ。いいから早く言いやがれ。」

「……ゴニョニョ……!」

「はぁー、よく聞こえん。もう一度言いやがれ。」

「いいですか、おやっさん。正当な“叡智の書”の後継者が、この砦に現れました。」

「ああぁー? 正当な“叡智の書”の後継者が現れたって? ボーズ、寝ぼけるな! 寝言は寝てから言いやがれ。」

「いやー、なんと言いましょうか……。」

「オイ、寝ぼけてないなら、どんな人物なんだ?」

「絶世の美女を連れた……ガー……ザー……???」

「もう一度、詳しく説明し……やがれ……ガー……ザー……。」

「絶世の美女を連れた、小さなガキです。」

「絶世の美女を連れた小さなガキ? で、どっちが正当な“叡智の書”の後継者だって言ってたんだ?」

「おやっさん。俺自身は信じられませんが、ものすっごく強い絶世の美女本人じゃなく、棒切れみたいなガキがそうだと……。」

「……。」

 水晶から音が途絶えた。

 ――あちゃー、やっぱりガセかよ。

「ザーザー……ああ、ボーズ……他に何か言ってなかったか?」

「正当な“叡智の書”の後継者とその相棒は同性同士だから、自分が女でも問題ないと……。  
 それと、この砦で寝言ほざいた二人が、自分たちを雇ってほしいそうです。」

「ザーザー……ああ、ボーズ……とりあえず、儂がそっちに行くまで、その二人を雇っておけ!」

「そうですよね、追い……へっ!? 雇うんですか?」

「そうだ。すぐにはそちらに行けないが、儂がそっちに行くまで、その二人を雇って、どこにも行かせないように見張りをつけておくんだ。」

「(゜Д゜)ハァ? なんか納得いきませんが、おやっさんがそうしろというなら、そうします。」

「必ずそうするんだ!」

「……わかりました。」

 非常に納得できなかったマル・ボーズだが、臨時報告を終えて水晶通信を切った。

 イチカとかいうガキが“叡智の書”の後継者かどうかは、マルにはまだ信じがたかったが、辺境伯からの命令は絶対だった。

 ――まあ、考えてもどうにもなるまい。  
 明日、砦の他の連中にも周知しなければならないか。

 面倒が増えて嫌になるとブツブツ呟きながら、マルは戸棚に隠していた酒瓶を取り出し、寝酒代わりに瓶に口をつけてグビリと飲み干した。

「ぷはぁー、うめぇ……。」

 どうでもいいけど、早くおやっさんにこっちに来てもらわないと、なんかまた起こりそうな気がするぜぇ……。

 マルは酒瓶を抱えたまま長椅子に横たわると、窓の外に浮かぶ月をぼんやりと見上げながら、もう一口、酒を煽った。

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