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9.前線の砦4 _ルールーの治癒魔法
しおりを挟む部屋に戻ったルールーは、守護結界の範囲をイチカから部屋全体にかけ直すと、イチカの白い髪を一房手に取った。
最初にイチカと出会った時、毒素を含んで真っ白だったその髪は、薬子の薬のおかげで何とか毒素が取り除かれ、ルールーの手にある髪にも、少しずつではあるが、彼女が本来持っていた魔力の流れが戻りつつあった。
すぐには改善されないが、あと数年かければ、今はただ白いだけの髪も、本来の黒髪へと戻るだろう。
――イチカ、かわいそうに。
こんなに魔力を注いでも、なかなか元の黒い髪に戻らないなんて……あいつら。
ルールーはイチカを抱きしめながら、未だに白髪のままのイチカの頭を撫で、魔力を注ぎ続けた。
その頃、夢の中にいるイチカは、寒さに震えていた。
すると、白い巨大な鳥が現れて、イチカをギュッと抱きしめてくれた。
――あったかーい。
もうこれで凍えなくてすむんだ。
イチカはホンワカした気分のまま、さらに深い眠りに落ちていった。
それにしても、イチカをここまで毒素まみれにした人物については――
(´∀`*)ウフフーーー!
――よぉ~く調べてから……
見つけたら、イチカが受けた苦しみを倍にして……償わせなければ。
砦の一番良い客室から、夜中に奇妙な高笑いが響き渡り、砦にいる兵士たちは明け方までガクブル状態で一睡もできなかった。
翌朝。
イチカは、大きな白い鶏に圧死される夢を見て目を覚ました。
――ぐっ……く、苦しい!
し……死ぬ!
ガバッと起きようとしたが、なぜか体が動かない。
ムガムガ……。
「アラ、目が覚めたのね。」
艶っぽい声とともに、イチカを拘束していた力が緩み、視界が開けた。
ルールーが体を起こすと、イチカの目の前に大きな胸が現れた。
「体調はどうかしら?」
ルールーの大きな胸に、イチカの額がぎゅっと挟み込まれた。
――モガッ……うぐっ……く、苦しい……
い、息が……!
イチカは死ぬ気でルールーの大きな胸から逃れようと必死に暴れた。
「もう、ちょっとじっとしてて! まだ計れないから。」
――計り終わる前に自分が死ぬ……!
い、いい加減に放せ、コラ!
「もう少しで終わるからね。」
『も……もうダメ。死ぬ……。』
ルールーの体調確認が終わった頃には、ぐったりとしたイチカの体がベッドの上に横たわっていた。
「あらあら、イチカったら。もう朝なんだから、起きないとダメよ。」
ルールーはイチカの薄茶の髪を愛おしそうに撫でたあと、何を思ったのか、おもむろに立ち上がった。
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