ご先祖さまは中二病⁉

しゃもん

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13.イチカの従弟_王都で品定めをする

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 スターは今日もため息を吐きながらも自分の従弟の剣の訓練に付き合っていた。
 それにしても本当に単調な剣筋だ。
 確かに魔力はあるがそれを生かし切れていないので、スターの方が魔力が低いにも拘わらず、すぐに剣で打ち返せてしまえる。
 本日もきれいに彼の剣を叩き落とした。
「もう一回だ。」
「ああ、構いないけど何度やっても変わらんと思うぞ。」
 スターは飛ばされた剣を拾って、こちらに戻って来る自分の従弟にめんどくさそうな表情で答えた。

「そんなことはない。」

 いや、そんなことならあるぞ。
 ほんとはもう、こいつらと付き合いたくないんだよなぁ。

 スターは少し離れたところでイチャイチャしているグループを横目で見ながら内心、ため息を吐いた。

 くそっ。
 俺がもう少し若かったら、国境の砦で訓練してたのは俺だったはずなのに!

 ホント、弟がうらやましい。

 それもこれも目の前にいるこいつが・・・ウスラトンカチで実妹の現状に全く気が付いていないのが原因なんだぞ。
 忌々しい。
 普通、気づくだろ。
 なんでこいつは実妹がいまだに別邸にいないことに気が付かないんだ。
 なぜなんだ???

 バカだからか?
 いや、馬鹿でも気づくんじゃないか?

 スターがイライラも相まって思いっきりまた剣を弾き飛ばすと、その剣がたまたま先ほどスターが横見で見たイチャイチャグループの方に飛んで行った。

「キャーッ。」
 剣はイチャイチャグループのかなり手前にある地面に刺さった。

「おい、お前たち。かわいいリーナに当たったら危ないだろ。もっと向こうで訓練しろ。」
 第三王子であるヒカルが立ち上がって、偉そうにスターに命令した。

 おいおい。
 もっと向こうに行けってか。
 そもそもお前らがここからいなくなれよ。
 ここは訓練場だろ。

 それに魔法仕えるんだから結界くらい張れ。

 スターが心の中で毒づいているとその第三王子にかわいいと言われ、目をウルウルさせて喜んでいるリーナが両手を組んで第三王子に懇願した。
「ヒカル様。マティアス兄さまたちを怒らないで。せっかく訓練しているんですもの、リーナちょっぴり驚いたけどヒカル様が守ってくれるから怖くありませんわ。」
「リーナ。」
 リーナの両手を包み込むようにヒカルの手がリーナの手を上から掴んで自分の傍に引き寄せると、彼女の手に口づけた。

「ヒカル様!」
 リーナの顔が真っ赤になる。

 やれやれ。
 またこの展開かよ。
 今度はここで何を始める気かね。
 スターは第三王子と義理の従妹であるリーナが二人とも真っ赤な顔で見つめあっている。

 ちょうど二人が抱き合って顔が近づいたところでタイミングよく、どこからか馬の蹄の音が聞こえてきた。

 ありゃりゃ。
 これはうるさくなりそうな展開がやって来たようだな。

 すぐにスターの想像通りの人物が黒い馬に乗って現れた。
 背後には黒い馬に乗っている人物のとりまき達もいる。

「ヒカル様。ごきげんよう。」
 黒い馬に乗って現れた人物は第三王子の婚約者。
 侯爵令嬢のジーナ・シロイが真っ赤な髪を風になびかせて現れた。

「やあ、ジーナ。久しいな?何か用かな。」
 ヒカルは馬上のジーナを見上げながらも腕の中のリーナを隠すこともなく、抱き寄せたままジーナに何食わぬ顔で受け答えをしている。

「あら、ヒカル様こそ。こちらで何をなさっているのかしら。」
 なぜかジーナは馬から降りることもなく、そのままヒカルを見下ろしていた。

「見て分からんのか。剣の訓練中だ。」

 おいおい。
 いくら何でも女を抱えて剣の訓練は誰も信じないと思うぞ。

「その体制でなんの訓練なのか。まったく納得いきませんがそこはいいですわ。私の要件は明日の舞踏会のことです。」
「舞踏会か。私はここにいるリーナをパートナーにする。」
 ヒカルのとんでもない宣言にジーナの周りにいたとりまき達から一斉に非難の声が上がった。

 そりゃそうだよな、普通。
 非難するわ。
「もう一度お聞きしますわ。婚約者である私ではなく、そこにいる女をパートナーにするということは私との婚約を破棄なさるとうことですわよ。」
「もちろんですわ。」
 ジーナの取り巻き達もこのヒカルの発言に全員が息を飲んだ。

 あーあ、やっちまったよ。
 いいのか、バカ王子。
 それにバカ王子の取り巻き達も何か言えよ。

 ジーナは馬上からリーナを睨みつけた。
 リーナがびくりとヒカルの腕の中で怯えていた。

 ヒカルはさらにギュッとリーナを抱きしめると馬上のジーナに宣言した。
「私はジーナ・シロイとの婚約を破棄する。」

 ざわざわとジーナのとりまき達が口々に非難するがそれをなぜかジーナが止めた。
「あとで後悔なさっても遅いですわよ。」
 ジーナはそういうと呆れた表情を一瞬浮かべた後、とりまき達の非難の声を止めると彼女たちを連れて去って行った。

「ヒカル様。よろしいのですか?」
 リーナが震えながらもヒカルの腕の中で上目遣いに見上げてきた。
「大丈夫だよ、リーナ。元々私の婚約者候補にはリーナも上がっていたんだ。ジーナも侯爵令嬢だが君も侯爵令嬢じゃないか。」
「ヒカル様!」
 二人はまたイチャイチャを再開したが俺はそれどころじゃなかった。

 おい、第三王子。
 何かを勘違いしていないか。

 マティアスに実妹は確かにいるが、それはリーナじゃないぞ。
 マティアス。
 お前も何か言うべきじゃあないのか。
 スターはそう思ってマティアスに視線を向ければ、彼からは違う言葉が発せられた。
「スター。もう一回勝負だ。」
 今気にするのはそこじゃあないだろう。

 俺は一縷の望みにヒカルの取り巻き達に視線を向けた。

 彼らはヒカルと同じようにリーナを誉めそやしていた。

 ダメだこりゃ。

 俺は決めたぞ。
 夏に領地に戻ったら絶対、今回の役回りを弟のトウキと交換させる。

 スターはもう一戦とほざいているマティアスにその怒りをぶつけた。
 そしてスターの攻撃で立ち上がれなくなった従弟を訓練場に残して先に寄宿舎に戻った。

 ちなみに訓練場にマティアスを置き去りにしたことでその後、部屋に第三王子が突撃してきた。

「おい、スター。なんでリーナの兄であるマティアスを置き去りにするんだ。お前の従弟だろ。」
 まあ、ちょっとイラついていたせいか八つ当たりしてたのでちょっとは反省しているよ。
「おい。スターいいか。二度とこんなことはするなよ。リーナが悲しむからな。今度やったら私が黙っていないからな。」
 どうやら義理の従妹であるリーナに第三王子であるヒカルを通して文句を言ってほしいと懇願されたようだが、このままジーナと婚約するということは、将来平民になるということだ。
 なぜなら、辺境候の地位は血筋がないものには名乗ることすら出来ないからだ。

 それなのにマティアスから妹だと聞かされたから従妹が侯爵令嬢になると思って、何の裏取りもせずに本物の侯爵令嬢であるジーナとの婚約を破棄するバカに何を言われても怖くなかった。

 こいつ本当にわかっているのか。
 いや、わかっていないな。

 むしろあの様子を見るとジーナ嬢は裏取りをしてそのことを知っていたからあの発言をしたのだろう。
 俺は同室である従弟のマティアスが治療を終えて戻って来るまで延々とヒカルの喚き声を聞かされた。

 早く、領地に返って、この役回りを交換するからな。

 だがスターの願いは辺境で魔獣の暴走スタンピードが起こるまで叶えられなかった。
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