戦後復興期、動乱に立ち向かう勇者たち〜 拉致監禁、のち脱出

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無法地帯のリオグランダ州にて(*)

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 1865年4月、澄み渡る青空の下。馬のいななく声音だけが、灼熱の太陽の下で吹き荒れる乾いた風の中にかすかに響いていた。
 リーヴェルトは革手袋を外し、粗い指先で額の汗を拭った。乾いた喉を鳴らすと、すぐ後ろを歩く部下たちへと振り向く。

「――諸君、聞け」

 彼の声が響いた。部下たちはざわめきながらも立ち止まり、興味津々にリーヴェルトを見上げる。
 リーヴェルトは、彼の腕の中で怯えるように縮こまるカリーナ・ヴァン・レインをちらりと見た。

「このカリーナ・ヴァン・レイン嬢は、我らが南部の勝利の象徴だ」
リーヴェルトは、言葉を区切りながら続けた。
「この身をもって、新たなる時代への礎となっていただく」
 部下たちから歓声と囃し立てる声が上がる。

 紙のような顔色となったカリーナの細い手首を、リーヴェルトは無造作に掴んだ。
「こちらへ、カリーナ嬢」

 引き寄せられ、カリーナは中央、男たちの視線を一身に浴びる場所へ。

 そして、彼女はすくと立った。誇り高く、侵しがたい神聖さで。
 そんな彼女の前に、リーヴェルトは一歩進む。

「……南部の誇りとなられるカリーナ嬢に、最大の敬意を」

 言うとリーヴェルトは帽子を脱ぎ、胸に当てる。
 そして荒々しい唇を、カリーナの薄紅色の唇に押し当てた。

 ぴくり、とカリーナの肩が震える。信じられぬほどの柔らかさに酔いしれながら、リーヴェルトはちろりと唇を舐めた。
 カリーナの瞳から熱い涙が一粒、頬を伝った。

 それを見た瞬間。
 リーヴェルトは、理性の奥で何かが爆ぜる音を感じた。

 有色人種の劣等遺伝子のくせに。高貴で、気高く、それでいてか弱いこの娘。

 ようやく自分のものにできる。彼女の涙も、震えも、すべてを。
 いまや、誰もリーヴェルトを止めることはできない。

 リーヴェルトは、カリーナを見下ろしながら、ゆっくりと、喉の奥で笑みを漏らした。
 粗野な歓声に包まれたこの場で、彼女を抱き上げる日が近いことを確信しながら。

「どうか……覚悟していてください、カリーナ嬢」

 低く、熱を孕んだ声で囁くと、カリーナは小さく身をすくめた。

 リーヴェルトの胸の奥には、もう隠しきれない興奮が渦巻く。

 先ほど堪能した桜桃チェリーのような唇は戦慄き、桃のような色合いの指先は固く握りしめられている。

 ヴァン・レイン将軍に紹介されたその日から、このお高くとまった女をずっと心の中で汚し続けた。今、この手に抱くことができる。
 彼女がどんなに涙を流しても、どんなに震えようとも、すでに運命は決まっている。彼女はもう逃げられない。

「カリーナ嬢……」

 リーヴェルトはわざと、柔らかく名を呼んだ。
 その声に、カリーナはびくりと反応する。
 恥ずかしさと屈辱、恐怖で、彼女の頬はほんのりと紅潮している。それを見て、リーヴェルトの胸はさらに膨れ上がるような感覚に満たされた。

(このまま、今すぐ……)

 ずっと抱きたかったこの女の、柔らかく豊かな身体が震える様を思う存分感じたい。
 この場で、今すぐ。
 そんな衝動をリーヴェルトは必死に抑え込んだ。

(夜だ。夜まで待て)

 皆の前で彼女を辱めるよりも、夜、二人きりになったときに、徹底的に味わう方がいい。
 初めて泣き叫ぶ声を聞く瞬間を、誰にも邪魔されず、自分だけのものにするために。

「……どうか、ご安心ください」
リーヴェルトはわざと丁寧な口調を崩さずに言った。
「私が責任を持って、貴女にふさわしいお立場をご用意いたします」

言葉とは裏腹に、その声は甘く濁っていた。
カリーナはただ、蒼白な顔で、必死に俯くだけだった。

リーヴェルトは帽子をかぶり直し、カリーナの細い肩にわざと重く手を置いた。
カリーナは怯えるように、ほんのわずか身を引いたが、リーヴェルトの手から逃れることはできない。

「行きましょう、カリーナ嬢。今夜は盛大な宴を用意しておりますのでな」

部下たちがまた囃し立てる。
そのざわめきの中で、リーヴェルトは確かに見た。
カリーナの瞳に、滲むような絶望の色が広がっていくのを。

(泣いても、喚いても、無駄だ。今夜、お前は私のものだ)

リーヴェルトは唇を歪め、カリーナを引き連れて、リオグランダ州の夕陽へと歩き出した。
 その手に感じる彼女の体温を、舐めるように味わいながら――。







 夜も更け、焚き火は小さくなっていた。
 男たちは散り散りに眠りにつき、静けさが一帯を包んでいる。

 リーヴェルトは、カリーナを自分の天幕へと連れて行った。
 女のか細い手首を掴んだまま、逃げられぬように、だが丁寧に。

 天幕の中に押し込むと、彼はゆっくりと口を開いた。

「──お入りください、カリーナ嬢」

 静かな、柔らかい声。表向きの礼節は崩さない。
 それがかえって、カリーナを震え上がらせるのを、リーヴェルトはよく知っていた。

 カリーナは黙ったまま、ぎゅっと体を縮める。
 涙で濡れた睫毛が、夜の闇の中でかすかに光っていた。

 リーヴェルトはその様を、飢えた猛獣のような目で見つめる。
 その場で貪りたい衝動をどうにか押し殺しながら、歩み寄った。

「ご安心ください、カリーナ嬢」
 低く、囁くような声。
「私は、無理やりな真似はいたしません……」

 カリーナの怯えた瞳が、ちらりとこちらを見上げた。
 その目に宿る絶望と諦念に、リーヴェルトは興奮を深めた。

「ただ、お傍に置いていただくだけでよろしいのですよ」

 言葉だけは丁寧だった。
 だが手は、すでにカリーナの腰に伸び、そっと引き寄せていた。

「カリーナ嬢……あなたのすべてを、私は……」
 喉を震わせ、言葉を絞り出す。
「この命にかえても、手に入れたかったのです」

 震えるカリーナの体温が、指先からじわじわと伝わってくる。
 はあ、はあ、とリーヴェルトの呼吸が荒くなった。

「黒人の私を憎んで、軽蔑しているくせに……」
「軽蔑? これから私の妻となる女性を、ですか。南部の男はレディを敬いこそすれ、貶めることなどしませんよ」

 ゆっくり、腰に回した手に力を込める。嫌がるカリーナの身体を、じわじわと、自分の胸に押しつけていく。

「さあ、座ってください」

 命令ではない、あくまで「お願い」の形を取る。だがその声には逆らいがたい圧が滲んでいた。

 カリーナはおずおずと、隅の寝台に腰を下ろした。
 その小さな動きすら、リーヴェルトにはたまらない悦びだった。

──今宵から、お前は俺のものだ。

 そう思うだけで、血が煮えたぎる。

「ご不安でしょう。初めてなのだ、無理もありません」
 わざと労わるように言いながら、リーヴェルトはカリーナの細い手をそっと取った。
 冷たく、震えている。
 そのか細い指を、丁寧に、指先から撫で上げる。

「ですが、すぐにお分かりいただけますよ。どれほど私が、貴女を大切に想っているか……」

 ぞっとするような優しい声で、彼は言った。

 カリーナはもう、逃げられない。
 リーヴェルトはそのことに、心の底から酔いしれていた。

 わざとらしい優しさを込めて、彼はカリーナの顎に指を添えた。
 震えるその顔を無理やりこちらへ向けさせる。

(……泣いている)

 カリーナの睫毛には、小さな涙が滲んでいた。
 その美しさが、リーヴェルトの胸を猛烈に熱くした。

「今夜からは……私のものだ」

 彼はそう囁くと自分の口を尖らせながら、ゆっくりとカリーナの唇に己の唇を重ねた。
 カリーナは必死に拒もうとするが、無駄だった。か細い腕では、男の力を押し返すことなどできはしない。

 リーヴェルトは深く、長く、カリーナの震える唇を味わった。
 彼女の体温、涙の塩気、細やかな震え――
 すべてが彼をますます興奮させた。逃げ惑う舌を吸い上げると、カリーナの体が大きく揺れた。

 彼女の唾液をすすって満足したリーヴェルトが、ぷちゅと音を立てながら唇をカリーナから離すと。彼女は喘ぐように荒い息を吐いた。

「……素晴らしい」
 リーヴェルトは、呟く。
「こんなにも美しく、儚いカリーナ嬢が……これからは、私のためだけに泣き、私のためだけに震える……」

 指先でカリーナのドレスをそっと撫で下ろす。
 コルセットを通してもなお柔らかく感じる豊かな胸元の感触は、リーヴェルトを先へ先へと誘い込む麻薬のようだった。

 カリーナが絶望に満ちた目で彼を見上げ、無言で首を振った。が、その仕草すら、リーヴェルトにとっては甘美な挑発だ。

「大丈夫です、カリーナ嬢。最初は少しばかり痛いかもしれないが、すぐに」

 気持ちよくなりますよ……、とリーヴェルトは声を潜め、耳元でささやいた。
 カリーナの細い体が一層強く震える。

(ああ、たまらない)

 リーヴェルトは、もはや抑えようのない興奮に全身を焦がしながら、ゆっくりと、彼女をベッドへ押し倒すと、彼女の黒髪が柔らかく揺れ動き、リーヴェルトの頬を優しく打った。

 彼の瞳には、もはや哀れみも、理性もなかった。
 そこにあるのは、征服者の歓喜。
 そして、手に入れた「誇り高き獲物」を、徹底的に壊す悦びだけだった。

「あなたは、まるで小鳥のようだ」
 彼女の身体は羽毛のように軽かった。
 それでも、必死に抗おうとする小さな手が、リーヴェルトの胸元を押し返す。

(……可愛い)

 そんな無力な抵抗さえ、彼にはたまらない悦びだった。
 カリーナの絹のような手触りの肌、青ざめた唇。華奢な肩に、大きく形よく盛り上がった胸に片手で掴めそうなほどほっそりとした腰つき。
 すべてが、自分のものになる。

 リーヴェルトは鋭く光る眼差しを、じっと彼女に向ける。
 カリーナは身じろぎ一つできず、ただ座ったまま、震えていた。

「カリーナ嬢。貴女ならば、私を自由にしていただいて構わないのですよ」
 ゆっくりと、指先でカリーナの手を取り指を撫でる。
 彼女の腕にぞぞっと鳥肌が立ち、カリーナが顔を背けた。

 それをリーヴェルトは愉しげに受け止めた。怯え、拒絶するほど、彼の支配欲は燃え上がる。

「頭のてっぺんから足の先まで、この体は貴女のものだ」

 耳元に、吐息まじりに囁く。
 その言葉に、カリーナの肩がぴくりと跳ねた。

「嫌がらないでください。私は貴女に手をあげるような無粋な男になりたくない」

 指先が執拗にカリーナの首筋をなぞる。獲物を慈しむ捕食者のように。

「……本当に、美しい」

 唇が、カリーナの濡れた睫毛に、そっと触れた。
 驚きと屈辱に、カリーナはびくっと震えたが、リーヴェルトは構わず続ける。

「泣いても……泣き顔すら、こんなにも愛しい」

 カリーナは必死に体を捻るが、力の差は歴然だった。

「……カリーナ嬢。そんなに震えなくても、何も怖いことはありません」
 リーヴェルトは、少しかすれた声でささやいた。

 それは明らかに嘘だった。
 彼自身、理性をかろうじて繋ぎ止めているに過ぎない。
 内心では、すぐにでもこの高貴な魂を持つ娘を蹂躙したくてたまらなかった。

 カリーナは無言で首を振った。
 涙が頬を伝い、ベッドシーツに小さな跡を作る。

「泣いて、泣いて……どうか、この夜を忘れないでください。あなたの夫と結ばれる日のことを」
 リーヴェルトはうっとりと呟きながら、カリーナの頬を舐めるように指先でなぞった。涙の味を、確かめるかのように。

 ゆっくりと、カリーナのドレスの胸元に手をかけた。
 柔らかい体を堪能しつつ布地をずらすたびに、彼女はびくりと震え、小さく声を洩らした。
 その一つ一つが、彼の興奮を際限なく煽る。


 コルセットの紐をすべて緩めて外し、ついにシュミーズの肩紐をずらすと。リーヴェルトが焦がれて焦がれてやまなかったカリーナの白い二つの丘と神聖な頂が顔を出した。

 薔薇のような。息もできぬほどの美しさ。

(これが、ずっと、欲しかった……!)

 リーヴェルトは、ついに耐えきれず、愛らしい突起に口づけた。そのままちゅうと吸い上げながら、大きく柔らかな乳房を手のひらで強く押しつぶす。
 カリーナは押し殺した悲鳴を洩らし、シーツをぎゅっと握りしめた。

「ああっ!」
 リーヴェルトはうめいた。
「野蛮人のくせに、お前は罪な女だ! 俺の美しい原罪め、罰してやる……!」

 荒々しい手つきで、彼はカリーナの体を押さえつけた。破り捨てるような勢いでドロワーズを外すと床に投げ捨て、カリーナの下腹部に指をあてた。恥毛の感触を味わいながら下へ指を進め、激しく突き立てた。

「いやあっ」
 カリーナが短く叫んだ。堪えきれないという様子で。
「痛いっ、痛いのっ、や、やめてぇ!」

 だが、ほんの少しだけ潤んでいたその場所に、リーヴェルトは歓喜する。

 このリーヴェルトへの、愛の証だと。

 上流階級の令嬢にとっては、たとえ婚約者であろうとも、婚姻前に触れ合うことは慎むべきとされていた。軽い接吻すら、世間の目にははしたない行為と映ることがあった。

 まさかカリーナがすでに、この「夫」を裏切る形で純潔を喪っていたなど。リーヴェルトにしてみれば思いもよらぬことだった。

 かつてただ一度、心から愛する男と夜を共にしたカリーナ。すでに、夜の営みを受け入れるための成熟を、静かに、そして確かに身に宿しつつあったのだ!

 その哀しむべき真実に、リーヴェルトはなお気づかずにいた。

 そして彼は、無我夢中で自分の衣服を脱ぎ捨て、カリーナの体を押さえつけた。聞こえる叫び声を認識できぬまま、カリーナの脚を大きく開いて。

 自らの欲望を、止めることなく、ぶつけた。

 一度、二度と抜き差しすれば、あまりの気持ちよさに勝手に腰が動く。その度にカリーナの白い胸がうごめいてリーヴェルトの眼を釘付けにした。

「ひっ、あっ、いっ、んっ、あんっ」
 カリーナが小さく声をもらす。抑えきれないように。

 ぎしぎしと寝台を揺らしながら、リーヴェルトは夢中でカリーナを犯す。

 カリーナはずっと涙を流し続けた。美しい黒髪を乱し、淫らな曲線を描いた体を揺らし、長く白い脚をピンと伸ばしながら。
 すべてが、リーヴェルトにとっては至高の美だった。

 カリーナを抱き上げると、向かい合うような姿勢で拘束し揺さぶりながら激しく口付けをする。ビクビクと揺れ動く胸元と黒髪から目が離せない中、リーヴェルトは夜を徹してカリーナの体をすべて暴いた。

「んうっ、も、もう、許して……」
「だ、ダメだ。そこは優しく、撫でるように触るんだ!」
「ぐっ、うぐ、ん、ん、ん」
 彼女へ命令をし陰茎や陰嚢も触らせて、舐めさせた。拙い手つきや舌先であればあるほど、リーヴェルトは興奮し、何度も彼女の脚を大きく開いて最奥に愛の証を注いだ。

 こうしてリーヴェルトは貞淑で清純な乙女を最後まで汚した満足感と達成感で、冷酷な歓喜に酔いながら深みに堕ちていった。



  
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