青い泡雪

ねこりんご

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自主練

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少し間が空いた。ホタルが気まずそうに口を開く。
「あの、今から青武器の練習しに行きません?ボク、ちょっとまだコツを掴めてなくて。」
「いいぜ!アタシも練習する!んで、どこでやろうか?」
「開けている場所……川原はどうでしょう?」

 川原まで走って行った。
 魔法召喚のペンを取り出し、空中に剣の形を出す。剣の形をした光がたちまち白い魔剣になった。
 他の三人も各々の武器を準備していた。マシュマルは鞭、ホタルは槍、ヨウカは僕と同じく剣だ。
 早速練習を始める。雪の上にスクールバッグを置いた。
 荷物置き場から少し離れた場所で練習を始める。
 どれくらい青くなったか確認するため、一人ずつ青武器の練習をして残りの三人は見ることになった。
「じゃあ僕からやるね!」
 剣を握りしめ、全身の魔力に集中を向ける。
 授業の時よりも上手くいっている気がする。
「凄い……!青の濃度が上がってる!」
 マシュマルの目がキラキラしている。授業もこの四人でグループを組んでいるため、各々がどれくらい出来ているか把握できているのだ。
 だいぶ魔力を送るのが辛くなくなってきたから、少し青武器のまま動いてみることにした。
 まず剣を振ってみる。腕は全身から魔力が送り込まれているために少し重いのに、剣自体はとても軽く感じる。いつもより早く振れた。
 次に走ったりジャンプしてみたりした。全身で魔力が動いているため、腕以外はとても動かしやすい。
 青武器を解除し、マシュマルと交代する。一通り練習した後、ホタルの番になった。
 やはり二人とも授業時よりも青の濃度が高まった。マシュマルは鞭の速度がとても速くなったし、ホタルは槍を遠くまで投げられるようになっていた。
 ホタルも満足したところで、ヨウカが剣に集中し始めた。やはり体質のせいで難しいようだ。ほんのりと色づいていたが、僕や他の二人よりはまだまだ白い。
 ヨウカは悔しそうに歯を噛み締めた。こんな様子を見ているとこっちも悔しい。沈黙が続く。
 ヨウカがぽつりと呟いた。
「こんな体質、無ければ良かったのに。」
 そんな事無いよ、と口から出そうになった。しかしこれはヨウカに失礼かもしれない。
 本当にヨウカのためを思い、体質に配慮していたなら。
 この練習をするよりも、どうにかヨウカの体質を役立てて楽にできるかを先に考えていたのかもしれない。
 ヨウカの持っている火の魔法を、彼女にとっての障壁ではなく武器にする方法は無いのだろうか。
 
 ヨウカの目から、ぽつりと雫が落ちた。ヨウカの下にある雪が、どんどんと溶けている。
 ……これはヨウカが持つ火の魔法か?だとしたら……
 僕たちが呆然としている間にどんどん雪がなくなってゆく。川の流れが速くなり、気温も上がってきた。
 見るからに非常事態のこの光景に、なぜか僕は見覚えがあった。
 小学生の時にヨウカの魔法をからかう人が居て、彼女のメンタルが耐えられなくなったんだっけ。
 確かその時、ヨウカは……。
「マシュマル、ホタル!大変だ!ヨウカの魔法が暴走している!」
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