【完結】婚約破棄と追放をセットでくらった件 〜神スキルで逆転人生〜

長船凪

文字の大きさ
80 / 125

80 ジェラルディーヌ子爵領

しおりを挟む
 海に囲まれた島にあるジェラルディーヌ子爵家に到着し、本来第三夫人など親としては不本意だろうが、本人たっての希望ということで、挨拶も無事済んだ。

 殴られずに済んだ……。
 内心、一番気がかりだった親への挨拶を三つともなんとか終えて、俺はほっとした。

 エマは応接室にて、頬を染めつつ俺の隣に座ってもじもじしている。


「ところで、全く話は変わりますが、あまり作物の収穫量が上がらない土地とエマに聞きました。失礼ですが、こちらの農民は土壌改良の知識などは持っているでしょうか?」

「土壌改良? 畑と言えば……耕して種や苗を植えて水をやるくらいでは?」


 もしや土壌改良の概念がない?


「……植物の灰、あるいは馬や牛や腐葉土などを利用したりは?」
「始めて聞く話です、動物の糞など土に混ぜてどうなるのです?」
「それらには作物をそだてるのにいい栄養がありますから」

「な、なんと……そんなやり方が!! 早速種まき前にやらせてみましょう」

「草の灰くらいならすぐに手に入るでしょうから、いくつかの畑にそれぞれのものを試してみるといいでしょう、一斉に全部でなくて、植物の育ち具合を農民に比べさせてください」
「聞いたか? メモをとっておけ!」

 子爵は執事に命じて俺の話をメモをとらせた。

「あとは肥沃な土地でなくても育ちやすい野菜を植えるとかですね」

 サツマイモなどがあれば良いんだがな。
 サツマイモは「救荒作物」で土壌中の有用な微生物を引き寄せることで痩せた土地でも生育が可能になっているとかなんとか。

 そばも痩せた土地でも作付可能な、比較的手間の掛からない作物だ。
 他はブルーベリーや山菜類とか……もあったか?

 そしてほったらかしでもわりと育つ野菜には、ニラ、シソ、エゴマ、三つ葉、パセリ、ミョウガ、しょうが、フキ、 ししとうなどもあったはず。

 ──詳しいことはおいおい相談しよう。
 第三夫人など本来不名誉のはずだし、俺が夫として妻の生家のこの土地と民にとって少しはよい存在になれるように……やれることはなるべくやろう。

 そして、まだまだ砦に夫人達を受け入れる用意はできていないし、第一王子の立太子のお祝いと星祭りの準備もあるので、一旦エマは実家に預けて俺達だけで帰ることにした。
 
 思えばお祝いの言葉だけで王弟殿下が灯籠祭り時に慌ただしく帰ったのは、後継ぎが試練を終えて帰って来てたからなんだろうな。

 ◆ ◆ ◆

 馬車にて護衛達と共に魚介類を買う為、子爵領にある市場にまたも向かう俺だったが……。

「ところで、精霊の類は、普段はどこにいるんだ?」

 俺は護衛として連れてきている二人の魔法使いのうちの一人であるコニーにそんな質問をしてみた。


「ウンディーネなどは私に呼ばれるまでは魔力を温存するために普段はこの世界とは違う、精霊界というところにいます」

「では、俺がテイムしたミゲールもそうなのかな?」

「そうかもしれませんが、まだ聖獣の類かはっきりしませんので確証を得たいなら高位の大神官のいる神殿へ行き、判定をしてもらうべきでしょう。ですが子爵様がもし聖獣をつれた聖者認定でもされたら神殿に拘束される可能性もあり……神殿と王侯貴族間で揉める原因にもなりかねません」


 婚約したばかりで俺が神殿所属の者になると厄介だよなぁ。
 なるべく清貧を貫きなさいとか言われて美味しいものが食べられなくなるのも嫌だ。


「なるほどな、ひとまず聖獣うんぬんは置いておこう」
「はい」

 その時、何故か不意に目の前にミゲールが姿を現した。

『ネオ、馬車を停めて降りて!』

 そんな思念が俺に伝わって来た。

「え? 御者! 停めてくれ!」

俺の命令で馬を止めた御者。

「なにかございましたか?」
「よくわからないが、うちのクラゲが馬車を降りろと言ってきた!」
「はあ?」
御者が疑問符をつけたような顔をしているが、ひとまず俺はミゲールに従って馬車を降りた。

少し荒地に見えるそこに降り立つミゲールが、

『ここ、掘って』

と、触手でつついたのは大地。一見、何もない土の上だ。
「なんだ? 急にここ掘れわんわんみたいなことを言って……」
「とにかく掘ってみましょう、お宝でもうまっているのかもしれません」

そう言った魔法使いのマーヤが土魔法で捜索すると、とんでもないものが出できた。

「ネオ様! サファイアが出ました! ここはサファイア鉱床です!」
「サファイアって宝石の!?」

俺はマーヤが魔法で掘り出した、それなりに大きいサファイアの原石を手に、身が震えた。

「そうです! おそらくジェラルディーヌ子爵もご存じなかったのでしょうが、宝石のサファイアが採れる土地だったんですよ!」
「なんと……これで子爵領も豊かになるかな」

「このサファイアが永遠に採れる訳ではないでしょうが、かなり財政は潤うことでしょう」
「おお……早速魔法の伝書鳥をジェラルディーヌ子爵に飛ばしてサファイア鉱床の話をしてくれ」

「はい!」
「それと、ミゲールありがとうな。婚約者のエマの実家にそんなお宝鉱脈が眠っていたとは……」
『妻の実家のある土地を豊かにして上げたいってネオが思ってるみたいだったから……』

なんて良い子なんだ!! うちの空飛ぶクラゲちゃんは!

 それからまたね~と言って、ミゲールは姿を消した。精霊界とやらに帰ったのかもしれない。

 さて、いきなりサファイアが見つかったりして、やる事が山積みだが、ひとまず市場で買い物を終えたら、王家に連絡をせねば。

 立太子のお祝いは貴族が他国からも貴賓が来るだろうが、仮面舞踏会でもないのに仮面着用や、ベールの着用が可能かどうか、お伺いを立てなければ……。

 防犯面を考えたら、普通は覆面や仮面のようなものは拒否されるだろうとは思うが……。

 あ、王家には肝心の婚約報告もしないと……。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...