【完結】婚約破棄と追放をセットでくらった件 〜神スキルで逆転人生〜

長船凪

文字の大きさ
81 / 125

81 市場に向かう途中

しおりを挟む
 ひとまずサファイアの原石を魔法の袋に収納してから市場へ向かう。  

「市場へ向かってくれ」

 俺は御者にそう命じた。

「え? すぐに子爵家に戻らなくていいのですか?」

 魔法使いのマーヤが俺の態度に驚く。
 サファイア鉱床がさっき見つかったのに、のんきに市場で買い物とか正気か!? と思ったんだろうな。

 しかし宝石は安全なところに収納したし、どうせここからなら市場のが近いからそちらに向かってからでもいいのでは? と、俺は思う。


「時間は有効に使いたい」
「そ、そうですか、分かりました」
「出してくれ」


 再び馬車を走らせ、俺達は市場に向かった。

 その途中、馬車の前に飛び出した人間がいて、馬車は急に斜め前方に進路を変え、急に止まった。

「危ないだろう! 急に飛び出すな!」

 御者が飛び出して来た男にどなったのが聞こえた。 
 すんでのとこで轢くとこだったのでは?

 飛び出した人間に怪我がないか馬車から降りて見たらどうやら島民の男で、女性も駆け出して来た。


「あなた! お金返して! そのお金は生活費よ!」
「うるせぇ! 俺はこれで酒を買うんだ!」


 どうやら生活費を酒に注ぎ込むクソ夫らしい。
 しかも奥さんの顔には少なくとも3回は殴られてるような痕がある。
 やはりクソだな。


「お前、自分の妻を殴って生活費を酒代にするつもりなのか?」
「ああ!? お前に関係あるかよ!? ってか、なにもんだ!? 随分綺麗な服を着てるけどよ!?」

 既にそこそこ酒が入っているせいか、俺が身分のある貴族と気がつかないみたいだ。

「無礼者!」
「子爵様、こいつ手打ちにしますか?」


 護衛騎士達が出て来た。


「ひいっ!? 子爵ぅ!?」
「ここで手打ちにする代わりに、お前にピッタリの仕事を紹介してやる」
「「えっ!?」」

 妻と夫の声が被った。

「妻とは別れろ、お前はこれから先、死ぬまで鉱山で働いて、お前の稼ぎは全てそこの彼女への慰謝料になる。まあ、しかし仕事が始まるまでは監獄にいろ。俺は酒の為なんかで女を殴る男は大嫌いなんだ」

「ひとまず投獄ですね! 衛兵を呼びます!」

 護衛騎士は、魔石から信号弾のような光を上空に打ち上げ、そして護衛騎士はDV夫を懐から取りだした紐で縛り上げた。

 酒クズの妻の方は縛られた夫を呆然と見ている。
 俺は男の懐から財布と思われる巾着を抜き取り、中に金が入ってるのを確認し、それを彼女の方に手渡した。

「念の為に聞くが、あの男との間に子供はいるか?」
「病気で亡くなりましたから、もういません……」
「……そうか、あの酒クズとは別れた方が身の為だ」
「は、はい」


 俺は顔に3箇所も殴られた痕のある女性にそう忠告してから、ひとまず酒クズを駆けつけた衛兵に引き渡し、市場に向かった。


「お! やった! 海苔がある! 魚や海老も買おう、あ、海藻も!」

 俺はこの際だと、あれやこれやと買い込む。 

「毎度ありー」


 そして買い物を済ましてから、ジェラルディーヌ子爵家の応接室に戻った。

 「なんと! サファイア鉱床がうちの領地に!?」
「はい、これが先ほど見つかったサファイアの原石です」
「おお……結構なサイズですね」

「そうですね」
「これで娘の結婚指輪を作りましょう! 貴方が見つけてくださった石なので、娘も喜ぶでしょう!」

 そ、そうきたかぁ。ちなみに今エマはドレスショップに行ってるらしい。

「なるほど」
「さて、忙しくなってきましたね、石の研磨、指輪の細工師探しにサファイア鉱床を掘る人間も集めなくては」


 もうすぐ俺の義理父となる子爵は意気揚々としていた。

「あ、いい忘れるところでしたが、馬車で道を走っていたら馬の前に飛び出してきた男がいたのですが、そいつ自分の妻を殴って生活費を酒代にしようとするクズですし、舐めた態度をとられてついカッとなって勝手にサファイア鉱床の労役を言い渡してしまいました。
ひとまずは諸々の準備が整うまで投獄してるはずなのですが」

「なんと! うちの領民が申し訳ありません。その処分で結構です」


 ──ふう。怒られずに済んでよかった。
 あとはやつの稼ぎは全部元妻に行くようにも頼んでおく。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...