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お弁当。

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「武器屋だ。スリングショットがある。
これなら戦闘訓練受けてない女の子でも使えるのでは? 
球もそのへんの石拾っておけばなんとかなる」

 いつものように市場へ来たコウタが足を向けたのは武器屋で、そこでY字型のスリングショットを見つけた。
 お髭の親父さんが店主だ。

 スリングショットの他にもナイフからショートソードにロングソード、弓矢。
 木製の台の上に色々並べてある。


「いわゆるパチンコとか言われる武器ね。漫画で見たことあるわ」
「銀貨3枚であんまり高く無いし、買っても良いんじゃね?
サヤ達、接近戦ヤバイし、それならそこそこ距離を取れるんだろうし?」

 決が出た。

「これ下さい」
「毎度~~」

 お買い上げした。

「お、お前達、今日は飯屋だよな?」
「あ、いつも食い物屋の時来てくれるお客さん。そうですよ」

武器屋の前にいたら冒険者のお兄さんが声をかけて来たので、私が応えた。

「お前達のとこの売り物の食べ物を、箱に詰められるか? 箱代はあんまり高くなきゃ払うし。
出先の森で食いたいんだが」

「え、ああ、じゃあ、お弁当にするんですね、箱を仕入れて来ますよ」

 私は箱を仕入れる事にした。

「すまんな」

「そんな訳で二人とも、箱を買おうよ。汁とか漏れないやつ」

 お得意様は大事にしないと。

「カナデっち、大丈夫? こっちでそんなん高くならない? 100均無いよ」
「内側に油紙を敷くとかさ、外装は蔦で編んだような物でも良くない?」
「曲げワッパの弁当箱みたいなのが有ればいいけどな」

「こっちは紙が高級品な世界よね。紙箱が買えない。
てか、曲げワッパ系、逆に元の世界では高いやつじゃない? 
工場大量生産でなく、手仕事で作るから二千円くらいはする」

「しかし曲げワッパ系、逆にこっちで安い可能性はあるぞ」
「とりま、雑貨ゾーンを見てみようよ、さりげ見るの楽しそう」
「そうだね」

 そんな訳でしばらく箱物を扱う雑貨屋を市場内で探すと、見つけた。

「あった! ワッパ系、銅貨5枚くらいだし、買える」
「風情あるじゃん! じゃあ五個くらいいっとく?」
「そうね、備え有れば憂いなし。私の好きな漫画の主人公もこれ系に味噌詰めて持ち歩いてた気がするし、自分用にも欲しいな」

「オソマ……」
「違う! ウン◯じゃない! あれは味噌!」

 私はコウタの呟きに秒で反応し、思わずツッコんだ。

「あはは! ごめんごめん。ちょっと言いたかっただけだ」
「ナニ? オソマって、ウ◯コの事?」
「ほら、コウタのせいで紗耶香ちゃんが変な言葉覚えちゃったじゃん~~」

「スマンスマン。とりあえず、店主さん! この箱五個下さい」
「あいよ」

 コウタは強引に話題を切り替えるようにワッパ系弁当箱を五個買った。

「桶とかオヒツっぽいのや酒樽がこっちに有るなら、ワッパ弁当箱も有ると思ったんだよ」

 そう言えばそれらは商人さんの家にもあった。
 栗ご飯の残りもオヒツに入れてアイテムボックス内に入れてある。

「ああ、どれも木材が曲線で結合出来てるよね」
「てかさ、串焼きの肉とハンバーガーを詰める訳? チョイスが変くない?」
「串焼きの肉を串に刺さずに、栗ご飯と詰めてあげれば良くない?」

「特製弁当か、奏、漬け物系か彩りになりそうなオカズをスキルで買えるか?」
「いいよ、どっか目立たない所で買おうか」
「テントの中に布で目隠しの仕切りを作って、そこで……」
「分かった」

 コウタは急いでテントの設営をして、私は巻きスカートディスプレイ様に用意した着物用ハンガーラック的な……衣桁(いこう)のような物を目隠しに使う。
 その裏でコソコソとお買い物。



「ね、二人とも、ほうれん草のおひたしと白菜の漬物、どっちがいい?」
「色味的に選ぶなら緑色のほうれん草じゃね? あとプチトマトとかもかわたん」
 紗耶香ちゃんは女の子だから、彩りに赤も入れたいようだ。

「選べない、両方! 白菜は自分達用でも良い。
それと、俺、急激にベーコンとほうれん草のソテー食いたくなった!」

「あれ、なんでかすごく美味しいよね、ベーコンとほうれん草のソテー。
じゃあほうれん草とベーコンを仕入れる。あ、粒コーンもいる?」

「カナデっち、コーンは彩りが綺麗だからいっとこうよ」

 もはや己の食べたい物をリクエストしている気がするけど、まあいいか。


 *

 私はほうれん草を鍋で茹でて、ほうれん草とベーコンとコーンを炒めた。
 コウタは肉とハンバーグを焼く。
 紗耶香ちゃんはパンに焼けたハンバーグとレタスを挟んだり、油紙に包んだりする作業。

 ちなみに串焼き用の肉は家で既に刺して来ている。
 今日もお客様は沢山来てくれている。大変だけどありがたい。

 *

 お弁当が出来上がった頃にちょうど良く冒険者のお兄さんが店に来た。

「どうぞ、本日のお得意様限定メニュー、お弁当です。中身は栗ご飯と焼き肉、ほうれん草とベーコンとコーンのソテーとなっております。
箱代込みで銀貨三枚ですが、大丈夫ですか?」

「ああ、スッゲー美味しそうだな。
弁当箱はまた洗えば使えるから大丈夫だ、ありがとう。
わがまま言ってすまんな」

「いいえ、またのお越しを!」
「あざす!」
「ありがとうございました!」

 私達はお客様を送り出した。

「カナデっち、結局白菜の漬物は自分達用?」
「そう。私達のお昼ご飯、栗ご飯の残りと白菜の漬物、ほうれん草とベーコンとコーンのソテー」

「サヤ、ほうれん草のやつ、早く食べたい」
「そうだね、昼のピークを過ぎたら食べようね」
「それまで、ちょっと我慢な」

 ようやく昼のピークを過ぎ、準備中の札を置いて、私達の休憩時間。

「ああ、やっぱほうれん草とベーコンのソテー、美味いなあ」

 コウタはしみじみと言った。

「多分、塩胡椒の力だよ」

 私はクールに言ったが、確かに凝った料理じゃないけど美味しいなあと思ってる。

「塩胡椒ぱない」

 紗耶香ちゃんも本日のランチの味がお気にめして、ゴキゲンのようだった。
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