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二日目 「変わり始めた明日」
その二
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しばらく街を歩いていると、道の先で何やら人だかりができているのを見つけた。
その中心で、微かに黒煙が出ているのがうかがえる。
人だかりの中心には、ありふれた二階建ての一軒家があった。
ただその一軒家は、炎上していた。
家のベランダには少女がおり、何かを叫びながら自らの首にナイフを突き立てていた。
野次馬の波をかき分けながら、ぎりぎりまで近づくと、ようやく彼女の声が聞きとれた。
「来ないでっ!! 私はもう死ぬの!!」
彼女は、そう叫んでいたのだ。そして人だかりの正体は、それに群がる野次馬たちだった。
心配そうに見つめるだけで、何もしない者達。
何を思ったのか、スマートフォンで動画を撮り、勝手にネットに投稿する物たち。
そして、目の前で少女が自殺しようとしているというのに、なぜか口元から笑みがこぼれ、瞬きすらせずに、家が燃える様子を平然と観続ける物達。
これではまるで見世物じゃないか。
❘なぜ奴らにはそんなことが出来るのか、俺にはわからなかった。
それだけは、永久にわからないままでいいと思った。
このままでは間違いなく彼女は死ぬことになるだろう。
彼らはそれすらも、無表情で見つめ、撮影し、自分たちが盛り上がるためのネタにするというのだろうか。それは、絶対に許されないことだ。彼女の死は、軽々しくネタにしていいものではないはずだ。でも、きっと彼らはこの先も、それを続けるだろう。
きっと誰かが助けるなんて、勝手に思い込んで、仕方なかったなんて勝手に言い訳して、自分が同じ目に遭わない限り、いつまでも、ずっと変わらずに。
そう思うと、腹の底から、熱く煮えたぎる、何かが込み上げてきた。
気付けば俺は、野次馬共を押しのけ脆くなっていた木製のドアを蹴り飛ばして家の中へと駆けこんでいた。
昔の僕だったら、怖気づいて野次馬にさえなれなかったことだろう。
でも、それでいい。あんな風になるくらいなら。でも俺は、もうどちらでもない。
俺はもう、僕なんかじゃない。今の俺ならきっと、彼女を助けることができる。
この力さえあれば、この状況だって変えられるはずだ。
炎上していたのは表だけのようで、中まではあまり燃え広がっておらず、二階へと続く階段も無事だった。
俺は躊躇わずに階段を駆け上がり、少女のもとへと急ぐ。
廊下の終わりに少女の背中が見えた。もう目前まで迫って来ている。
ベランダの窓を閉めているせいか、こちらにはまだ気付いていない。
だが俺は、それ以上前に進めなかった。
突然、何をすればいいのかわからなくなった。最初は少女からナイフを奪い、そのまま取り押さえればいいと考えていた。そうすれば、彼女は救われるとばかり思っていた。
でも違う。いまはっきりと気付いた。それじゃあ彼女は救われない。それじゃあ彼女はもう、戻れなくなってしまう。
ならどうすればいいのだろうか。どうすれば、彼女を救う事ができるのだろう。
背後から、野次馬共が階段をドタドタと駆け上がってくる音がする。今更乗り込んできたのか。
その中心で、微かに黒煙が出ているのがうかがえる。
人だかりの中心には、ありふれた二階建ての一軒家があった。
ただその一軒家は、炎上していた。
家のベランダには少女がおり、何かを叫びながら自らの首にナイフを突き立てていた。
野次馬の波をかき分けながら、ぎりぎりまで近づくと、ようやく彼女の声が聞きとれた。
「来ないでっ!! 私はもう死ぬの!!」
彼女は、そう叫んでいたのだ。そして人だかりの正体は、それに群がる野次馬たちだった。
心配そうに見つめるだけで、何もしない者達。
何を思ったのか、スマートフォンで動画を撮り、勝手にネットに投稿する物たち。
そして、目の前で少女が自殺しようとしているというのに、なぜか口元から笑みがこぼれ、瞬きすらせずに、家が燃える様子を平然と観続ける物達。
これではまるで見世物じゃないか。
❘なぜ奴らにはそんなことが出来るのか、俺にはわからなかった。
それだけは、永久にわからないままでいいと思った。
このままでは間違いなく彼女は死ぬことになるだろう。
彼らはそれすらも、無表情で見つめ、撮影し、自分たちが盛り上がるためのネタにするというのだろうか。それは、絶対に許されないことだ。彼女の死は、軽々しくネタにしていいものではないはずだ。でも、きっと彼らはこの先も、それを続けるだろう。
きっと誰かが助けるなんて、勝手に思い込んで、仕方なかったなんて勝手に言い訳して、自分が同じ目に遭わない限り、いつまでも、ずっと変わらずに。
そう思うと、腹の底から、熱く煮えたぎる、何かが込み上げてきた。
気付けば俺は、野次馬共を押しのけ脆くなっていた木製のドアを蹴り飛ばして家の中へと駆けこんでいた。
昔の僕だったら、怖気づいて野次馬にさえなれなかったことだろう。
でも、それでいい。あんな風になるくらいなら。でも俺は、もうどちらでもない。
俺はもう、僕なんかじゃない。今の俺ならきっと、彼女を助けることができる。
この力さえあれば、この状況だって変えられるはずだ。
炎上していたのは表だけのようで、中まではあまり燃え広がっておらず、二階へと続く階段も無事だった。
俺は躊躇わずに階段を駆け上がり、少女のもとへと急ぐ。
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ベランダの窓を閉めているせいか、こちらにはまだ気付いていない。
だが俺は、それ以上前に進めなかった。
突然、何をすればいいのかわからなくなった。最初は少女からナイフを奪い、そのまま取り押さえればいいと考えていた。そうすれば、彼女は救われるとばかり思っていた。
でも違う。いまはっきりと気付いた。それじゃあ彼女は救われない。それじゃあ彼女はもう、戻れなくなってしまう。
ならどうすればいいのだろうか。どうすれば、彼女を救う事ができるのだろう。
背後から、野次馬共が階段をドタドタと駆け上がってくる音がする。今更乗り込んできたのか。
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