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二章 「スクール水着の半魚人」
その二
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「えぇっと、二年の、伊瀬カズマです」
少し迷ってから、普通に自己紹介することにした。すると、意外に態度が和(やわ)らいだ。
「あぁ、これはどうもご丁寧に。同じく二年の、魚々乃女真九理です」
この人なりの礼儀なのか、言いながら深々と会釈(えしゃく)する。背びれのせいで背中が破けていた。
ちゃんと話せば分かる人なのかもしれない。
「で、今日はどうしたの?」
「どうしたの!? 自分の胸に手を当てて、考えてみてはいかがです?」
「……うーん。借りた傘壊したのに、黙(だま)って返したから?」
そりゃ怒るだろ。
「やっぱりあなただったんですねっ! ――――って、今日はそのことじゃありません」
「えぇ? じゃあ、借りた教科書に落書きしたから?」
「それはもう消しておきました! 二度とあなたには貸しません」
「えー」
「えーじゃありません! 大体、夏休み明けまで返してくださらなかったじゃないですか!!
この前貸した課題も、返ってこないと思ったら、名前だけ変えて提出されていましたし!」
だんだん、この人が不憫(ふびん)に思えてきた。いきなり壁をぶち壊したのも、はなから当てるつもりはなかったんだろうし、わからなくもない。
「そうだっけ?」
「そうですっ!」
ただ、ここまで来ると貸す方も悪い気がする。
「今日は今日とて騒ぎを起こしますし、どうせ先日プールに現れた長髪の黒っぽい人影というのも、あなたなのでしょう!? いくら友人とはいえ、堪忍袋の緒が切れました!!」
「プール? 夏休み明けから入ってないけどな。それに、ワタシいつもお団子だし」
言いながら、後頭部のお団子を触る。
「……言われてみれば、それもそうですわね。すみません、偏見が過ぎました」
再び深く頭を下げる魚々乃女(ぎょぎょのめ)さん。やっぱり話の分かる人なのだろう。そして破けた背中がちょっときわどいことになっていた。後でトモカさんにそれとなく伝えてもらおう。
「まったく、この水泳部副部長魚々乃女(ぎょぎょのめ)を欺(あざむ)くとは、許すまじき行為ですわね。犯人探しをしなくてはなりませんわ」
「それよかワタシたち、トモダチだったっけ?」
「へ?」
立ち尽くしたまま、魚々乃女さんの顔が凍りつく。
少し迷ってから、普通に自己紹介することにした。すると、意外に態度が和(やわ)らいだ。
「あぁ、これはどうもご丁寧に。同じく二年の、魚々乃女真九理です」
この人なりの礼儀なのか、言いながら深々と会釈(えしゃく)する。背びれのせいで背中が破けていた。
ちゃんと話せば分かる人なのかもしれない。
「で、今日はどうしたの?」
「どうしたの!? 自分の胸に手を当てて、考えてみてはいかがです?」
「……うーん。借りた傘壊したのに、黙(だま)って返したから?」
そりゃ怒るだろ。
「やっぱりあなただったんですねっ! ――――って、今日はそのことじゃありません」
「えぇ? じゃあ、借りた教科書に落書きしたから?」
「それはもう消しておきました! 二度とあなたには貸しません」
「えー」
「えーじゃありません! 大体、夏休み明けまで返してくださらなかったじゃないですか!!
この前貸した課題も、返ってこないと思ったら、名前だけ変えて提出されていましたし!」
だんだん、この人が不憫(ふびん)に思えてきた。いきなり壁をぶち壊したのも、はなから当てるつもりはなかったんだろうし、わからなくもない。
「そうだっけ?」
「そうですっ!」
ただ、ここまで来ると貸す方も悪い気がする。
「今日は今日とて騒ぎを起こしますし、どうせ先日プールに現れた長髪の黒っぽい人影というのも、あなたなのでしょう!? いくら友人とはいえ、堪忍袋の緒が切れました!!」
「プール? 夏休み明けから入ってないけどな。それに、ワタシいつもお団子だし」
言いながら、後頭部のお団子を触る。
「……言われてみれば、それもそうですわね。すみません、偏見が過ぎました」
再び深く頭を下げる魚々乃女(ぎょぎょのめ)さん。やっぱり話の分かる人なのだろう。そして破けた背中がちょっときわどいことになっていた。後でトモカさんにそれとなく伝えてもらおう。
「まったく、この水泳部副部長魚々乃女(ぎょぎょのめ)を欺(あざむ)くとは、許すまじき行為ですわね。犯人探しをしなくてはなりませんわ」
「それよかワタシたち、トモダチだったっけ?」
「へ?」
立ち尽くしたまま、魚々乃女さんの顔が凍りつく。
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