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二章 「スクール水着の半魚人」
その一
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「――――アブネッ!」
飛び退(の)いたトモカさんの脇を、水の砲弾が掠(かす)めていった。砲弾は、コンクリートの壁を粉々にして砕け散った。衝撃で、雨が降ったように水が飛び散る。
直後、プールから打ちつける波のような轟音(ごうおん)が響き渡った。振り返ると、うずしおの如(ごと)くかき混ぜられた水面が、竜巻のような水柱となって立ち上がった。
「な……!!」
高さにして十数メートルはありそうな水柱が、斜めに渦を巻いている。
「床屋のカンバンみたいだね」
トモカさんはどこまでものんきだ。
「言ってる場合かよ! 早く逃げましょう」
「ダイジョウブだよ、多分知り合いだし」
「え?」
水柱が盛大な水しぶきを上げて二つに割れ、水面に青い人影が現れた。
『オソイッ!!』
くぐもった低い声だった。
水しぶきが晴れ、露わになったその正体に、視線が釘づけになる。
水面に立っていたのは、全身をウロコでおおった半魚人だった。人間の耳に当たる部位からは大きなヒレのようなものが飛び出している。そしてなぜか、学校指定のスクール水着を着ていた。
「……あ、やっぱり」
「知り合いなんですかアレ?」
『――――アレトハシツレイナッ!!』
半魚人は水に飛び込むと、背びれで水面をかき分けながら、ものすごい勢いで迫ってくる。まさかのクロールだった。
「うわっ!」
大きな波を立てて飛び跳ね、プールサイドに着地する半魚人。
途端に右から左へ体中のウロコが剥がれ落ちていき、顔の両側に生えた大きなヒレも、耳の形に変化した。
「――――人様に向かって指をさすとは、品がないにもホドがありますわっ!」
現れたのは、気の強そうな女の子だった。高圧的な高い声に変わっている。
トモカさんよりも色素の明るい、波のようにうねる淡い青色の長髪に、澄(す)んだ水色の瞳。流れない方の水星、水を操(あやつ)る〝青い水星人〟だろう。
少し端に寄った切れ長の目が、どことなく魚のような印象を醸(かも)し出しているものの、気品のある整った顔立ちをしていた。
「おぉ、相変わらずのクールビューティーだね。ウオノメさん」
「魚々(ぎょぎょ)乃女(のめ)です!! いつも言っているでしょう!?」
トモカさんがさん付けで呼んでいるあたり、あまり仲良くないのかもしれない。
「……それはそうと、一人で来いと言ったはずです。隣の殿方(とのがた)は、どこの魚の骨ですの?」
酷(ひど)い言われようだった。馬の骨ならまだ漢方にでもなるだろうに。
飛び退(の)いたトモカさんの脇を、水の砲弾が掠(かす)めていった。砲弾は、コンクリートの壁を粉々にして砕け散った。衝撃で、雨が降ったように水が飛び散る。
直後、プールから打ちつける波のような轟音(ごうおん)が響き渡った。振り返ると、うずしおの如(ごと)くかき混ぜられた水面が、竜巻のような水柱となって立ち上がった。
「な……!!」
高さにして十数メートルはありそうな水柱が、斜めに渦を巻いている。
「床屋のカンバンみたいだね」
トモカさんはどこまでものんきだ。
「言ってる場合かよ! 早く逃げましょう」
「ダイジョウブだよ、多分知り合いだし」
「え?」
水柱が盛大な水しぶきを上げて二つに割れ、水面に青い人影が現れた。
『オソイッ!!』
くぐもった低い声だった。
水しぶきが晴れ、露わになったその正体に、視線が釘づけになる。
水面に立っていたのは、全身をウロコでおおった半魚人だった。人間の耳に当たる部位からは大きなヒレのようなものが飛び出している。そしてなぜか、学校指定のスクール水着を着ていた。
「……あ、やっぱり」
「知り合いなんですかアレ?」
『――――アレトハシツレイナッ!!』
半魚人は水に飛び込むと、背びれで水面をかき分けながら、ものすごい勢いで迫ってくる。まさかのクロールだった。
「うわっ!」
大きな波を立てて飛び跳ね、プールサイドに着地する半魚人。
途端に右から左へ体中のウロコが剥がれ落ちていき、顔の両側に生えた大きなヒレも、耳の形に変化した。
「――――人様に向かって指をさすとは、品がないにもホドがありますわっ!」
現れたのは、気の強そうな女の子だった。高圧的な高い声に変わっている。
トモカさんよりも色素の明るい、波のようにうねる淡い青色の長髪に、澄(す)んだ水色の瞳。流れない方の水星、水を操(あやつ)る〝青い水星人〟だろう。
少し端に寄った切れ長の目が、どことなく魚のような印象を醸(かも)し出しているものの、気品のある整った顔立ちをしていた。
「おぉ、相変わらずのクールビューティーだね。ウオノメさん」
「魚々(ぎょぎょ)乃女(のめ)です!! いつも言っているでしょう!?」
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「……それはそうと、一人で来いと言ったはずです。隣の殿方(とのがた)は、どこの魚の骨ですの?」
酷(ひど)い言われようだった。馬の骨ならまだ漢方にでもなるだろうに。
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