28 / 57
三章 「双子の月」
その四
しおりを挟む
現れたのは、泣きはらした顔の古都さんだった。
「こっ、古都さん?」
「……ふぇぇ、ひっぐ、ひっぐ。体育の先生に怒られて、消防署の人にも怒られて、お母さんにも怒られて。……ひっく、占いセット、取り上げられちゃいましたぁ……」
よく見ると、おでこに丸文字で『バカ』とかかれていた。……発想が小学生レベルだ。
「じゃ、じゃあ、もう占いはできないんですか?」
「はいぃ、今度勝手に使ったら、メル○リで売るって……」
現代っ子なお母さんだった。
泣きながら教科書やノートをカバンの中につめ、帰りの支度(したく)を済ませると、古都さんは教室を出て行った。
「……今日はっ、もう帰ります」
律義に出入り口の戸を閉めておじぎし、古都さんはしょんぼりした様子で帰って行った。
……自業自得とはいえ、さすがに不憫(ふびん)だった。
「……弱ったな。アイツにボヤ騒ぎの犯人を占ってもらうつもりだったんだが」
「いえ、一応、占ってはもらえたんですけど――――」
「そうなのか?」
「ただ……」
言い淀む僕の代わりに、トモカさんが答える。
「山奥の縄文杉ダッテ!」
「縄文杉?」
「今回の件とは、あまり関係なさそうですね」
万美さんは困ったように眉をひそめた。
「他には何か言ってませんでしたか?」
「さぁ……特に何も」
「あ、ソ言えば昨日、電話で緑の宇宙人がドウとかって」
「緑? そんな色のやつ、太陽系にいたっけか?」
首をかしげる樹理さん。他の二人も似たような反応だった。僕にも心当たりがない。
「……てコトは、緑の宇宙人は、異星人なのかな?」
「〝黒い異星人〟の次は、〝緑の異星人〟かよ」
「〝黒い異星人〟よりは、よっぽど現実的だと思いますけど」
「ソウだね、普通にその辺にいそう」
「でも、私見たことないです。緑の髪の方って」
万美さんの一言に、みんな行き詰ってしまった。確かに、僕も見たことがない。異星どころか、違う銀河にいるのかもしれなかった。そのとき、僕は教室の窓辺が赤い夕焼け色に染まっていることに気づいた。
「――――雨、やんできましたね」
「こっ、古都さん?」
「……ふぇぇ、ひっぐ、ひっぐ。体育の先生に怒られて、消防署の人にも怒られて、お母さんにも怒られて。……ひっく、占いセット、取り上げられちゃいましたぁ……」
よく見ると、おでこに丸文字で『バカ』とかかれていた。……発想が小学生レベルだ。
「じゃ、じゃあ、もう占いはできないんですか?」
「はいぃ、今度勝手に使ったら、メル○リで売るって……」
現代っ子なお母さんだった。
泣きながら教科書やノートをカバンの中につめ、帰りの支度(したく)を済ませると、古都さんは教室を出て行った。
「……今日はっ、もう帰ります」
律義に出入り口の戸を閉めておじぎし、古都さんはしょんぼりした様子で帰って行った。
……自業自得とはいえ、さすがに不憫(ふびん)だった。
「……弱ったな。アイツにボヤ騒ぎの犯人を占ってもらうつもりだったんだが」
「いえ、一応、占ってはもらえたんですけど――――」
「そうなのか?」
「ただ……」
言い淀む僕の代わりに、トモカさんが答える。
「山奥の縄文杉ダッテ!」
「縄文杉?」
「今回の件とは、あまり関係なさそうですね」
万美さんは困ったように眉をひそめた。
「他には何か言ってませんでしたか?」
「さぁ……特に何も」
「あ、ソ言えば昨日、電話で緑の宇宙人がドウとかって」
「緑? そんな色のやつ、太陽系にいたっけか?」
首をかしげる樹理さん。他の二人も似たような反応だった。僕にも心当たりがない。
「……てコトは、緑の宇宙人は、異星人なのかな?」
「〝黒い異星人〟の次は、〝緑の異星人〟かよ」
「〝黒い異星人〟よりは、よっぽど現実的だと思いますけど」
「ソウだね、普通にその辺にいそう」
「でも、私見たことないです。緑の髪の方って」
万美さんの一言に、みんな行き詰ってしまった。確かに、僕も見たことがない。異星どころか、違う銀河にいるのかもしれなかった。そのとき、僕は教室の窓辺が赤い夕焼け色に染まっていることに気づいた。
「――――雨、やんできましたね」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
別れし夫婦の御定書(おさだめがき)
佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。
離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。
月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。
おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。
されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて——
※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。
課せられた使命は魔王討伐!? 女神様から与えられたチートは、赤ちゃんから何度でもやり直せる「強くてニューゲーム!?」
強敵・災害・謀略・謀殺なんのその! 勝つまでレベリングすれば必ず勝つ!
やり直し系女勇者の長い永い戦いが、今始まる!!
本作の数千年後のお話、『アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~』を連載中です!!
何卒御覧下さいませ!!
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる