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2[リア]
絵心
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──ガーデンパーティー当日。
くまんつ様たちがやって来た。
初日にわたしを助けてくださったゴリさん……もとい第三騎士団の皆さんだ。
くまんつ様はいつ会っても紳士で優しくて素敵な方だ。
彼とヴィルさんとは幼馴染だそうで、二人の容赦ない掛け合いに、皆お腹を抱えて笑っていた。
彼と話しているヴィルさんは、いつもの世界を癒すキラキラスマイルとは少し違い、自然で優しい微笑みを浮かべていた。
よく晴れた日のバーベキューパーティーは癒しの時間だ。
わたしのつたないチキン南蛮は、料理長の試行錯誤によってオルランディア風にアレンジされ、会心の一撃を放っていた。
料理長はオルランディア風に味を調整し終えると、いつもわたしに改良版のレシピをくれる。
異世界レシピを輸出して、オルランディア版を逆輸入することによってウィン・ウィンの関係ができているのだ。
うちの料理長は「神の舌」の異名を持つすごい料理人で、お父様は有名な料理評論家、おじい様は王宮料理人だったという。
知っているレシピをお渡しすれば、すべてプロ仕様のすごいレシピに生まれ変わるかも知れない♪
くまんつ様はブランド牛もほったらかしで、タルタルソースをたっぷり背負った鶏を美味い美味いと食べてくれた。
以前、ヴィルさんからの手紙に「とても絵が上手なお友達」の面白い話が書いてあった。それが実はくまんつ様のことらしい。
「え? 団長って、そんなに絵うまかったっけ?」
「いや、見たことないなぁ」
くまんつ様の部下の人達が口々に言った。
どこからともなく、紙とペンが出てくる。
「ふっ……仕方ないですね。神童と呼ばれた私の才能をお見せしましょう」
くまんつ様はとても堂に入った感じで、サラサラっと何か描いてくださった。
「リスの絵」だと言う。
見せて頂こうと近づいていくと、後ろから慌てた様子のアレンさんに呼び止められた。
「リア様! それを見ては駄目です!」
「え?」
一瞬、彼のほうを振り返った。
しかし、くまんつ様が前で「ほら」と言った。
前後から声をかけられ、「ん?」と前を向く。
くまんつ様は、親切に紙をこちらへ向けてくださっていた。
それを見た瞬間、アレンさんが止めようとしていた理由が分かった。
時が止まった──
「遅かった! リア様、しっかりしてください」と、アレンさんの声が遠くで聞こえる。
画伯だ。
くまんつ様は画伯なのだ……。
大きな体に繊細さを持つギャップ系紳士。
なのに、そこはストレートなのだ。
やられる……
も、も、もう、防御が間に合いませんっ。
そして、時は動きだした。
「くまんつ砲」に腹筋を破壊され、呼吸困難に陥った。
わたしを助けにきたアレンさんに対しても、彼は「ほらほら、アレン」と、容赦ない攻撃をしかけた。
わたしを介抱しながら必死に抵抗していたアレンさんは、「こっちに向けるな! 見……」と言い残し、わたしと共に庭園の芝生の上に散った。
くまんつ様のリスは、耳が上と左右に四つある。上の二つはリスの耳で、左右の二つは人間の耳だ。
目はぐるぐるで焦点が合っておらず、人間と同じ形の鼻に、物凄い出っ歯がついていた。
そして、縦縞だったはずの模様は、海軍も驚くほどの横縞に。もっふりとしているはずのシッポは、稲妻の形をしていた。
激やせして出っ歯になったシマシマの海軍ピカ●ュウである。
ヴィルさんが「これは世界の人々のリスではないぞ」とツッコんだせいで、余計に庭園でうずくまる負傷者が増えた。
幼少期から見慣れていて耐性のあるヴィルさんだけがスンとしていて無事だった。
画力以外の才能が爆発したその芸術作品もとい無慈悲な大量破壊兵器は、「俺のリス」と名付けられ、くまんつ様のサインが入ってわたしの手元にやって来た。
帰り際、くまんつ様がじっとわたしを見て言った。
「リア様、見合いで王宮へ行かれる際は、絶対にヴィルのそばを離れないでください」
「はい?」
「絶対に、片時も離れないでください。アレンでもフィデル先輩でも構いません。必ず誰かのそばにいてください。王宮とは言え妙な輩はいますから」
お見合いの最中は護衛と離れざるを得ないのですけれどねぇ……と思いつつも、「分かりました」と答えた。
そして、皆で手を振り、彼らが帰っていくのを見送った。
迷《・》画「俺のリス」は、アレンさんが用意してくれた小さな額に入れられた。
「アレンさん、辛いことがあったときは、これを一緒に見ましょうねぇ」
「腹筋はやられますが、元気は出そうですね」
暖炉の上にお座りしているクマ君の後ろに額を立てかけた。
それを見て「裏返しで置くのですね?」と、彼が言った。
「そのほうが効果が高いと思うのです」
「ほう」
「落ち込んだときは、よよよ……っと、ここに来て、おすがりします」
額を取り、くるりと表をこちらに向けた。
わぁ……すごい(笑)
自然と笑顔になり、笑顔を通り越して腹筋にクる。
アレンさんが「急にこっちに向けるな」と、暖炉につかまって痙攣していた。
いくらでも笑える凄いアイテムを手に入れてしまった。
相変わらずお見合いリストにヴィルさんの名前は載っていなかったので、自分から積極的に距離を縮めるのは躊躇があった。
彼は王族だし、現実的に考えれば考えるほど、『わたし、遊ばれているのでは?』というネガティブな考えが頭をかすめる。
わたしは神薙様なのだし、開き直って好き好きしてしまうのも、ある意味正解だとは思う。
しかし、そういう「割り切ったお付き合い」的なものには慣れていないし、結局は遊ばれそうな気がした。
彼が人目を盗むようにグイグイ迫ってきても、上手く対処もできずにいる。
不思議と物理的な拒絶が難しい。
彼を見るとドキドキするし、彼の目を見ると動けなくなる。
距離を取ったほうが良いと思っていても、なかなかそれができずにいた。
くまんつ様たちがやって来た。
初日にわたしを助けてくださったゴリさん……もとい第三騎士団の皆さんだ。
くまんつ様はいつ会っても紳士で優しくて素敵な方だ。
彼とヴィルさんとは幼馴染だそうで、二人の容赦ない掛け合いに、皆お腹を抱えて笑っていた。
彼と話しているヴィルさんは、いつもの世界を癒すキラキラスマイルとは少し違い、自然で優しい微笑みを浮かべていた。
よく晴れた日のバーベキューパーティーは癒しの時間だ。
わたしのつたないチキン南蛮は、料理長の試行錯誤によってオルランディア風にアレンジされ、会心の一撃を放っていた。
料理長はオルランディア風に味を調整し終えると、いつもわたしに改良版のレシピをくれる。
異世界レシピを輸出して、オルランディア版を逆輸入することによってウィン・ウィンの関係ができているのだ。
うちの料理長は「神の舌」の異名を持つすごい料理人で、お父様は有名な料理評論家、おじい様は王宮料理人だったという。
知っているレシピをお渡しすれば、すべてプロ仕様のすごいレシピに生まれ変わるかも知れない♪
くまんつ様はブランド牛もほったらかしで、タルタルソースをたっぷり背負った鶏を美味い美味いと食べてくれた。
以前、ヴィルさんからの手紙に「とても絵が上手なお友達」の面白い話が書いてあった。それが実はくまんつ様のことらしい。
「え? 団長って、そんなに絵うまかったっけ?」
「いや、見たことないなぁ」
くまんつ様の部下の人達が口々に言った。
どこからともなく、紙とペンが出てくる。
「ふっ……仕方ないですね。神童と呼ばれた私の才能をお見せしましょう」
くまんつ様はとても堂に入った感じで、サラサラっと何か描いてくださった。
「リスの絵」だと言う。
見せて頂こうと近づいていくと、後ろから慌てた様子のアレンさんに呼び止められた。
「リア様! それを見ては駄目です!」
「え?」
一瞬、彼のほうを振り返った。
しかし、くまんつ様が前で「ほら」と言った。
前後から声をかけられ、「ん?」と前を向く。
くまんつ様は、親切に紙をこちらへ向けてくださっていた。
それを見た瞬間、アレンさんが止めようとしていた理由が分かった。
時が止まった──
「遅かった! リア様、しっかりしてください」と、アレンさんの声が遠くで聞こえる。
画伯だ。
くまんつ様は画伯なのだ……。
大きな体に繊細さを持つギャップ系紳士。
なのに、そこはストレートなのだ。
やられる……
も、も、もう、防御が間に合いませんっ。
そして、時は動きだした。
「くまんつ砲」に腹筋を破壊され、呼吸困難に陥った。
わたしを助けにきたアレンさんに対しても、彼は「ほらほら、アレン」と、容赦ない攻撃をしかけた。
わたしを介抱しながら必死に抵抗していたアレンさんは、「こっちに向けるな! 見……」と言い残し、わたしと共に庭園の芝生の上に散った。
くまんつ様のリスは、耳が上と左右に四つある。上の二つはリスの耳で、左右の二つは人間の耳だ。
目はぐるぐるで焦点が合っておらず、人間と同じ形の鼻に、物凄い出っ歯がついていた。
そして、縦縞だったはずの模様は、海軍も驚くほどの横縞に。もっふりとしているはずのシッポは、稲妻の形をしていた。
激やせして出っ歯になったシマシマの海軍ピカ●ュウである。
ヴィルさんが「これは世界の人々のリスではないぞ」とツッコんだせいで、余計に庭園でうずくまる負傷者が増えた。
幼少期から見慣れていて耐性のあるヴィルさんだけがスンとしていて無事だった。
画力以外の才能が爆発したその芸術作品もとい無慈悲な大量破壊兵器は、「俺のリス」と名付けられ、くまんつ様のサインが入ってわたしの手元にやって来た。
帰り際、くまんつ様がじっとわたしを見て言った。
「リア様、見合いで王宮へ行かれる際は、絶対にヴィルのそばを離れないでください」
「はい?」
「絶対に、片時も離れないでください。アレンでもフィデル先輩でも構いません。必ず誰かのそばにいてください。王宮とは言え妙な輩はいますから」
お見合いの最中は護衛と離れざるを得ないのですけれどねぇ……と思いつつも、「分かりました」と答えた。
そして、皆で手を振り、彼らが帰っていくのを見送った。
迷《・》画「俺のリス」は、アレンさんが用意してくれた小さな額に入れられた。
「アレンさん、辛いことがあったときは、これを一緒に見ましょうねぇ」
「腹筋はやられますが、元気は出そうですね」
暖炉の上にお座りしているクマ君の後ろに額を立てかけた。
それを見て「裏返しで置くのですね?」と、彼が言った。
「そのほうが効果が高いと思うのです」
「ほう」
「落ち込んだときは、よよよ……っと、ここに来て、おすがりします」
額を取り、くるりと表をこちらに向けた。
わぁ……すごい(笑)
自然と笑顔になり、笑顔を通り越して腹筋にクる。
アレンさんが「急にこっちに向けるな」と、暖炉につかまって痙攣していた。
いくらでも笑える凄いアイテムを手に入れてしまった。
相変わらずお見合いリストにヴィルさんの名前は載っていなかったので、自分から積極的に距離を縮めるのは躊躇があった。
彼は王族だし、現実的に考えれば考えるほど、『わたし、遊ばれているのでは?』というネガティブな考えが頭をかすめる。
わたしは神薙様なのだし、開き直って好き好きしてしまうのも、ある意味正解だとは思う。
しかし、そういう「割り切ったお付き合い」的なものには慣れていないし、結局は遊ばれそうな気がした。
彼が人目を盗むようにグイグイ迫ってきても、上手く対処もできずにいる。
不思議と物理的な拒絶が難しい。
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