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1章 隠密令嬢(?)とリア充令息
物理的に広がる世界
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また、目覚めからの始まりだ…。
目が見えないのは分かっているから、落ち着いている。
また夢オチとか洒落にならないから。真面目に。
倦怠感に起き上がるのが億劫になっているけど、横たわっていた場所を触る。これは…、ベッドではないね。硬くないけど、ツルツルした生地…ソファかな?
「目覚めたようだね、私はユースティン・バロンだよ。覚えてるかな」
優しげな声がする方を振り返ると、頭を撫でられた。
すごく落ち着く。…そうだ。
「はい、バロンさん。あの…、名前を付けてもらえませんか?」
早く自分を確立したいんだよね。
「では、そうだね。“シリル”、はどうかな?」
――シリル。
うん、言いやすい名前だ。この際、バロンさんの元で働かせてもらおう。
使用人の仕事で空きがあるか聞いてみたいな。
「はい。では、これから“シリル”と呼んでください。…仕事で手が足りない職はありますか?」
「ん?君には、ここでゆっくりしてもらって構わないんだけど?」
「居候の身でそれは心苦しいです…」
身体が不自由しているのに、仕事とか無茶あったかな。
バロンさんは何を勘違いしたのか、慌てて訂正した。
「シリル、君にはこれから学園に入学してまっとうな道を通ってほしいんだ。お金の心配はいらないからね?」
「私は、バロンさんに拾ってもらった恩があるので、無償で学園に行くより、近くで働かせていただけた方が助かります。その…目も見えませんし…―」
これは先天性の症状なのかな?よく生きてこれたよ。前世の記憶があるから、物事を知らなすぎる事は…ないと思いたいけど、常識全般は違うんだろうか?
「…そんなに私の側でないと不安かい?」
「はい」
この家以外に安全な場所なんて今はないと思う。
「では、私の職場で一緒に働くかい?それなら心細くないだろう?」
「ちなみに、何をなさってるんですか?」
「私は、こう見えて宮廷魔術師なんだ。魔法は学園で、と思ったけれど、私が教えよう。」
「あ、ありがとうございます!では、さっそく――」
立ち上がろうとすると、肩を押し戻された。
代わりに、目蓋に何か触れて――バロンさんの唇!?
元々見えないのに強烈な光に目が眩む。
「目を開けてごらん」
言われるがまま瞼を開くと、茶髪灰目の優し気な男性が見えた。
み、みえたああああ!!
「えっ、バロンさん、ですか?」
「そうだよ。…――よかった。これで仕事でも不便しないはずだよ。」
わ、凄い!
というか、バロンさんってめっちゃ美形なんだけど…。
茶髪に少し金髪が混じっていて、灰色の瞳の目元に少し皺が寄ってるんだけど、そこが渋い感じのイケメンで素敵!何か毒気を抜かれるようなあどけなさもあるんだけど、大人のフェロモンも相まって危険な香りがする…。ヤバいな…、無自覚で他人を甘い罠に引っ掛けそうなタイプ。
あれ?こんな人に私は抜くのを手伝わせてしまったのか!?ああ、恥ずかしい!本当にごめんなさい。というか、あれで精通したのかな?…これって聞いてもいい事?
「どうしたんだい、シリル?」
「あっ‥‥、えっとですね、バロンさんと、あの、さっき、した事と言いますか…」
しどろもどろになってると、「ああ!」という声が聞こえた。
「身体を洗った時の事だね?気持ちよかったかい?」
「!?うっ…はい。それでですね、私、多分ですけど、あんな事した事ないと思うのですが、あれは、…せ…、精通、したのでしょうか」
ううう~、何か聞く事じゃない気がしてきた!!
でも、こういうのってよく分からないし、これから困るだろうし?
「そうか。そのことが知りたかったんだね。私がシリルのを剥いてあげたから、あの時きちんと精通していたよ。ほら、思いっきり放って気持ちよかっただろう?」
大人の色気を含んだバロンさんの笑みに心臓を貫かれそうになった。うっ!!こんな美形に微笑まれた事なんて一度も、一度もない!!大事な事だから二回言った。
我が幼馴染も美形というか芸能人並みのイケメンだったけど、微笑まれた事なんてない。よくて何かの大会で優勝した時の高揚した顔しか見た事ないんじゃないかな。
それにしても眼福!バロンさん、マジでイケメン!!
でも、あんな事させておいてなんだが、色々と教えてもらおう。知識がなさ過ぎて自分の身体の事が全然分からない。
「バロンさん。本当に申し訳ないんですが、その、分からない事ばかりなので、色々と教えてほしいです…。ここでの常識とか、あの…、身体の事とかっ…」
「ふふ、大丈夫だよ。君の身は責任もって預かる事とするから安心してくれていいよ。分からない事は何でも聞いてくれていいからね。」
何だろう。全てを包み隠さず見られたからか、羞恥心が半端ないよ~。って、ん?今、目が見えるようにしてもらったけど、風呂に入る前に治してもらってたらこんなに困らなかったんじゃ…。
……。
いや、そこは疑問を持ってはいけないんだろう。私は居候の身。そして、かなり待遇がいい。これ以上注文するのも違う気がする。いや、しか~し!
「バロンさん。私は…、目が治ったのでしょうか」
「ん~、私がかけたのは視力を一定時間上げる魔法だから、根本的には治ってはいないよ。…不安かい?」
バロンさんに顔を覗き込まれているが、さっきから心配ばかりかけているな、私。こんなに心配された事ないからすごく嬉しい…けど、心が痛いな。
「不安はあります。ですが!バロンさんがいるので私は平気です!不束者ですが、これからよろしくお願いします。」
こんなに緊張したの初めてかも。
自分の事で誰かに世話になること自体前世でもなかった。両親からは「自給自足」だとばかり言われて、何かを教わったり、一緒に過ごす事が全くと言っていいほどなかった。…私は自活?自立を7歳の頃にはもうできるようになっていた。ああいう家庭環境が私を強くしたんだろうな。
…でも、肝心の心は育たなかった訳で…。ビジネスライクな日々だった…。
バロンさんのような、私を甘やかしてくれる大人って、初めて会えたかも。うっ、涙もろくなりそう。
落ち着いた所で、着替えて、バロンさんの研究所に行くことになりました。…え?今まで服着てただろうって?着てはいたんだけど、あれです。彼シャツみたいな…バロンさんのダボダボなワイシャツ一枚でした。下も履いてなかったんですよ~!!すうすうして下が反応しそうでずっとヒヤヒヤしましたよ。
分かった事は、ここでの生活は私を堕落させてしまう。そういう事です。
目が見えないのは分かっているから、落ち着いている。
また夢オチとか洒落にならないから。真面目に。
倦怠感に起き上がるのが億劫になっているけど、横たわっていた場所を触る。これは…、ベッドではないね。硬くないけど、ツルツルした生地…ソファかな?
「目覚めたようだね、私はユースティン・バロンだよ。覚えてるかな」
優しげな声がする方を振り返ると、頭を撫でられた。
すごく落ち着く。…そうだ。
「はい、バロンさん。あの…、名前を付けてもらえませんか?」
早く自分を確立したいんだよね。
「では、そうだね。“シリル”、はどうかな?」
――シリル。
うん、言いやすい名前だ。この際、バロンさんの元で働かせてもらおう。
使用人の仕事で空きがあるか聞いてみたいな。
「はい。では、これから“シリル”と呼んでください。…仕事で手が足りない職はありますか?」
「ん?君には、ここでゆっくりしてもらって構わないんだけど?」
「居候の身でそれは心苦しいです…」
身体が不自由しているのに、仕事とか無茶あったかな。
バロンさんは何を勘違いしたのか、慌てて訂正した。
「シリル、君にはこれから学園に入学してまっとうな道を通ってほしいんだ。お金の心配はいらないからね?」
「私は、バロンさんに拾ってもらった恩があるので、無償で学園に行くより、近くで働かせていただけた方が助かります。その…目も見えませんし…―」
これは先天性の症状なのかな?よく生きてこれたよ。前世の記憶があるから、物事を知らなすぎる事は…ないと思いたいけど、常識全般は違うんだろうか?
「…そんなに私の側でないと不安かい?」
「はい」
この家以外に安全な場所なんて今はないと思う。
「では、私の職場で一緒に働くかい?それなら心細くないだろう?」
「ちなみに、何をなさってるんですか?」
「私は、こう見えて宮廷魔術師なんだ。魔法は学園で、と思ったけれど、私が教えよう。」
「あ、ありがとうございます!では、さっそく――」
立ち上がろうとすると、肩を押し戻された。
代わりに、目蓋に何か触れて――バロンさんの唇!?
元々見えないのに強烈な光に目が眩む。
「目を開けてごらん」
言われるがまま瞼を開くと、茶髪灰目の優し気な男性が見えた。
み、みえたああああ!!
「えっ、バロンさん、ですか?」
「そうだよ。…――よかった。これで仕事でも不便しないはずだよ。」
わ、凄い!
というか、バロンさんってめっちゃ美形なんだけど…。
茶髪に少し金髪が混じっていて、灰色の瞳の目元に少し皺が寄ってるんだけど、そこが渋い感じのイケメンで素敵!何か毒気を抜かれるようなあどけなさもあるんだけど、大人のフェロモンも相まって危険な香りがする…。ヤバいな…、無自覚で他人を甘い罠に引っ掛けそうなタイプ。
あれ?こんな人に私は抜くのを手伝わせてしまったのか!?ああ、恥ずかしい!本当にごめんなさい。というか、あれで精通したのかな?…これって聞いてもいい事?
「どうしたんだい、シリル?」
「あっ‥‥、えっとですね、バロンさんと、あの、さっき、した事と言いますか…」
しどろもどろになってると、「ああ!」という声が聞こえた。
「身体を洗った時の事だね?気持ちよかったかい?」
「!?うっ…はい。それでですね、私、多分ですけど、あんな事した事ないと思うのですが、あれは、…せ…、精通、したのでしょうか」
ううう~、何か聞く事じゃない気がしてきた!!
でも、こういうのってよく分からないし、これから困るだろうし?
「そうか。そのことが知りたかったんだね。私がシリルのを剥いてあげたから、あの時きちんと精通していたよ。ほら、思いっきり放って気持ちよかっただろう?」
大人の色気を含んだバロンさんの笑みに心臓を貫かれそうになった。うっ!!こんな美形に微笑まれた事なんて一度も、一度もない!!大事な事だから二回言った。
我が幼馴染も美形というか芸能人並みのイケメンだったけど、微笑まれた事なんてない。よくて何かの大会で優勝した時の高揚した顔しか見た事ないんじゃないかな。
それにしても眼福!バロンさん、マジでイケメン!!
でも、あんな事させておいてなんだが、色々と教えてもらおう。知識がなさ過ぎて自分の身体の事が全然分からない。
「バロンさん。本当に申し訳ないんですが、その、分からない事ばかりなので、色々と教えてほしいです…。ここでの常識とか、あの…、身体の事とかっ…」
「ふふ、大丈夫だよ。君の身は責任もって預かる事とするから安心してくれていいよ。分からない事は何でも聞いてくれていいからね。」
何だろう。全てを包み隠さず見られたからか、羞恥心が半端ないよ~。って、ん?今、目が見えるようにしてもらったけど、風呂に入る前に治してもらってたらこんなに困らなかったんじゃ…。
……。
いや、そこは疑問を持ってはいけないんだろう。私は居候の身。そして、かなり待遇がいい。これ以上注文するのも違う気がする。いや、しか~し!
「バロンさん。私は…、目が治ったのでしょうか」
「ん~、私がかけたのは視力を一定時間上げる魔法だから、根本的には治ってはいないよ。…不安かい?」
バロンさんに顔を覗き込まれているが、さっきから心配ばかりかけているな、私。こんなに心配された事ないからすごく嬉しい…けど、心が痛いな。
「不安はあります。ですが!バロンさんがいるので私は平気です!不束者ですが、これからよろしくお願いします。」
こんなに緊張したの初めてかも。
自分の事で誰かに世話になること自体前世でもなかった。両親からは「自給自足」だとばかり言われて、何かを教わったり、一緒に過ごす事が全くと言っていいほどなかった。…私は自活?自立を7歳の頃にはもうできるようになっていた。ああいう家庭環境が私を強くしたんだろうな。
…でも、肝心の心は育たなかった訳で…。ビジネスライクな日々だった…。
バロンさんのような、私を甘やかしてくれる大人って、初めて会えたかも。うっ、涙もろくなりそう。
落ち着いた所で、着替えて、バロンさんの研究所に行くことになりました。…え?今まで服着てただろうって?着てはいたんだけど、あれです。彼シャツみたいな…バロンさんのダボダボなワイシャツ一枚でした。下も履いてなかったんですよ~!!すうすうして下が反応しそうでずっとヒヤヒヤしましたよ。
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