巻き込まれ転生

もふりす

文字の大きさ
8 / 30
1章 隠密令嬢(?)とリア充令息

仕事場

しおりを挟む
バロンさんに視力を上げてもらっていますが、見えるのはあと5時間のようなので、その間にバロンさんの仕事場とその周辺――王城を案内してもらう事になりました。

バロンさんは宮廷魔術師という立派な資格があるからいいけど、私はジロジロ見られています。そうですよね!こんな子供が出入りしていたら怪しみますよね!どうかスルーしてほしい。

そういえば、自分の姿を見たんだけど、黒目黒髪でした。でも、顔立ちが中世的で日本人離れしてました。のっぺり顔卒業ですよ!?よっしゃああ!って思わず感激しちゃいましたよ。前世の影の薄さは連の世話係としてやりやすかったけど、おかげさまでずっとスルーされていたんですよ。幼馴染を好きな奴に恨まれはしなかったくらいに影が薄かった訳なのだけど、友達もできなかったんですよ!!まあ、主に時間が拘束されてたのもあるけど、誰も影の私に興味を持つ人はいなかった。全体的に影、だから。自己評価だけど、私もそれなりにハイスペックだったと自負している。だけど、常に傍にいる天才的な幼馴染の存在が私を消したといいますか…。

ここでは、そこそこ日の当たる生活をしたいなぁ~。

王城は前世のイギリス、バッキンガム宮殿みたいな形をしていて、少し安心した。もっと、こう…ドイツのノイシュヴァンシュタイン城みたいな凝った造りだったら絶対委縮してた!前世の人生短かったけど、海外を転々とできて良かったなって今は思うよ…。

「シリル、ここが私の仕事場だよ」

促されて見上げると、扉が重厚な造りで『魔術研究所 ユースティン・バロン室長様』と難しい文字で書いてあった。何でか補正が効いてるみたいで文字読めるみたいです。バロンさん、相当偉い人なんだね。

「わぁ~、すごい!本棚、大きい!!」

大分語彙力乏しい感想が口から零れました。何か驚きが大きすぎて、何て言ったらいいか分からなかったんですよ。でも、バロンさんも私を微笑ましそうに見るだけで、私が穴に入りたくなりました。

部屋は吹き抜けの2階なんだけど、奥半分の一階とその上の二階が本棚で敷き詰められていて、こちら半分に書斎とか薬品棚とか書類がたくさんありました。壁は蔦模様の入ったモスグリーンの壁紙になっていて、床は板張りです。お金がかかっているけれど、この部屋は嫌味がない豪華さで私は好きだな。

目の前の球体に触れると、地球儀のように地図が浮かび上がった。お~。

バロンさんが手を振りかざすと、書斎机の上のカンテラに火が灯り、本棚付近の階段の下から上に向かって眩い光が駆け上がった。灯り?…いや、あれは妖精?ヨウセイ…。すごいっ!!本当に別世界だ。

「これから君と二人で使う場所だ。気に入ったかい?」

ほうほう、なるほど…、ん??

「え…?二人?」

「そうだよ。大勢で仕事をやると思っていたのかい?」

「あの、はい。それにここってバロンの自室のようなものですよね?部下の方と仕事はされないんですか?」

聞いてみると、何だか複雑そうな顔をされました。…聞いちゃいけなかった?

「私も部下はいるにはいるんだけれど、私が共同の研究所の出入りを禁止されているんだ。だから、ここで仕事をするようにしているんだよ」

「それは、どういう…?」

「あ~、うん。それは、私がいると部下の仕事がなくなっちゃうんだ。仕事の処理速度に差があって効率を上げるために伝授したんだけど、誰もついてこれなかったんだ。そういう訳で、私だけ別件の仕事をここでこなす事になったんだよ。私がいなくても研究所の方は心配ないからね。…リーダーシップないから以前室長になる件も断ったんだけどね。誰か代わってくれないかな~」

ははは、と笑うバロンさんは、私が思っていたより優秀な人のようだ。彼が私の上司…、いや師匠。

きっと今の私の帰る場所はバロンさんのあの家だけと思っていいのだろう。彼の知識を吸収して、私も早く自立できるようになろう。

「バロンさん」

「ん?」

「あと4時間は目が見えますよね?」

「?そうだね…。もしかして、それまでに学びたいと思っているのかい?」

「はい。できれば、生活が不便にならないよう、生活魔法を少々と、魔道具の作成の基礎を」

「それは…。私は時間内に教えられるけど、君は…疲れてしまうんじゃないか?」

「大丈夫です!スパルタは慣れっこですから!」


舞い上がっていた私はその時気付かなかった。バロンさんが私の記憶の有無を疑っている事に。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...