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1章 隠密令嬢(?)とリア充令息
仕事場
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バロンさんに視力を上げてもらっていますが、見えるのはあと5時間のようなので、その間にバロンさんの仕事場とその周辺――王城を案内してもらう事になりました。
バロンさんは宮廷魔術師という立派な資格があるからいいけど、私はジロジロ見られています。そうですよね!こんな子供が出入りしていたら怪しみますよね!どうかスルーしてほしい。
そういえば、自分の姿を見たんだけど、黒目黒髪でした。でも、顔立ちが中世的で日本人離れしてました。のっぺり顔卒業ですよ!?よっしゃああ!って思わず感激しちゃいましたよ。前世の影の薄さは連の世話係としてやりやすかったけど、おかげさまでずっとスルーされていたんですよ。幼馴染を好きな奴に恨まれはしなかったくらいに影が薄かった訳なのだけど、友達もできなかったんですよ!!まあ、主に時間が拘束されてたのもあるけど、誰も影の私に興味を持つ人はいなかった。全体的に影、だから。自己評価だけど、私もそれなりにハイスペックだったと自負している。だけど、常に傍にいる天才的な幼馴染の存在が私を消したといいますか…。
ここでは、そこそこ日の当たる生活をしたいなぁ~。
王城は前世のイギリス、バッキンガム宮殿みたいな形をしていて、少し安心した。もっと、こう…ドイツのノイシュヴァンシュタイン城みたいな凝った造りだったら絶対委縮してた!前世の人生短かったけど、海外を転々とできて良かったなって今は思うよ…。
「シリル、ここが私の仕事場だよ」
促されて見上げると、扉が重厚な造りで『魔術研究所 ユースティン・バロン室長様』と難しい文字で書いてあった。何でか補正が効いてるみたいで文字読めるみたいです。バロンさん、相当偉い人なんだね。
「わぁ~、すごい!本棚、大きい!!」
大分語彙力乏しい感想が口から零れました。何か驚きが大きすぎて、何て言ったらいいか分からなかったんですよ。でも、バロンさんも私を微笑ましそうに見るだけで、私が穴に入りたくなりました。
部屋は吹き抜けの2階なんだけど、奥半分の一階とその上の二階が本棚で敷き詰められていて、こちら半分に書斎とか薬品棚とか書類がたくさんありました。壁は蔦模様の入ったモスグリーンの壁紙になっていて、床は板張りです。お金がかかっているけれど、この部屋は嫌味がない豪華さで私は好きだな。
目の前の球体に触れると、地球儀のように地図が浮かび上がった。お~。
バロンさんが手を振りかざすと、書斎机の上のカンテラに火が灯り、本棚付近の階段の下から上に向かって眩い光が駆け上がった。灯り?…いや、あれは妖精?ヨウセイ…。すごいっ!!本当に別世界だ。
「これから君と二人で使う場所だ。気に入ったかい?」
ほうほう、なるほど…、ん??
「え…?二人?」
「そうだよ。大勢で仕事をやると思っていたのかい?」
「あの、はい。それにここってバロンの自室のようなものですよね?部下の方と仕事はされないんですか?」
聞いてみると、何だか複雑そうな顔をされました。…聞いちゃいけなかった?
「私も部下はいるにはいるんだけれど、私が共同の研究所の出入りを禁止されているんだ。だから、ここで仕事をするようにしているんだよ」
「それは、どういう…?」
「あ~、うん。それは、私がいると部下の仕事がなくなっちゃうんだ。仕事の処理速度に差があって効率を上げるために伝授したんだけど、誰もついてこれなかったんだ。そういう訳で、私だけ別件の仕事をここでこなす事になったんだよ。私がいなくても研究所の方は心配ないからね。…リーダーシップないから以前室長になる件も断ったんだけどね。誰か代わってくれないかな~」
ははは、と笑うバロンさんは、私が思っていたより優秀な人のようだ。彼が私の上司…、いや師匠。
きっと今の私の帰る場所はバロンさんのあの家だけと思っていいのだろう。彼の知識を吸収して、私も早く自立できるようになろう。
「バロンさん」
「ん?」
「あと4時間は目が見えますよね?」
「?そうだね…。もしかして、それまでに学びたいと思っているのかい?」
「はい。できれば、生活が不便にならないよう、生活魔法を少々と、魔道具の作成の基礎を」
「それは…。私は時間内に教えられるけど、君は…疲れてしまうんじゃないか?」
「大丈夫です!スパルタは慣れっこですから!」
舞い上がっていた私はその時気付かなかった。バロンさんが私の記憶の有無を疑っている事に。
バロンさんは宮廷魔術師という立派な資格があるからいいけど、私はジロジロ見られています。そうですよね!こんな子供が出入りしていたら怪しみますよね!どうかスルーしてほしい。
そういえば、自分の姿を見たんだけど、黒目黒髪でした。でも、顔立ちが中世的で日本人離れしてました。のっぺり顔卒業ですよ!?よっしゃああ!って思わず感激しちゃいましたよ。前世の影の薄さは連の世話係としてやりやすかったけど、おかげさまでずっとスルーされていたんですよ。幼馴染を好きな奴に恨まれはしなかったくらいに影が薄かった訳なのだけど、友達もできなかったんですよ!!まあ、主に時間が拘束されてたのもあるけど、誰も影の私に興味を持つ人はいなかった。全体的に影、だから。自己評価だけど、私もそれなりにハイスペックだったと自負している。だけど、常に傍にいる天才的な幼馴染の存在が私を消したといいますか…。
ここでは、そこそこ日の当たる生活をしたいなぁ~。
王城は前世のイギリス、バッキンガム宮殿みたいな形をしていて、少し安心した。もっと、こう…ドイツのノイシュヴァンシュタイン城みたいな凝った造りだったら絶対委縮してた!前世の人生短かったけど、海外を転々とできて良かったなって今は思うよ…。
「シリル、ここが私の仕事場だよ」
促されて見上げると、扉が重厚な造りで『魔術研究所 ユースティン・バロン室長様』と難しい文字で書いてあった。何でか補正が効いてるみたいで文字読めるみたいです。バロンさん、相当偉い人なんだね。
「わぁ~、すごい!本棚、大きい!!」
大分語彙力乏しい感想が口から零れました。何か驚きが大きすぎて、何て言ったらいいか分からなかったんですよ。でも、バロンさんも私を微笑ましそうに見るだけで、私が穴に入りたくなりました。
部屋は吹き抜けの2階なんだけど、奥半分の一階とその上の二階が本棚で敷き詰められていて、こちら半分に書斎とか薬品棚とか書類がたくさんありました。壁は蔦模様の入ったモスグリーンの壁紙になっていて、床は板張りです。お金がかかっているけれど、この部屋は嫌味がない豪華さで私は好きだな。
目の前の球体に触れると、地球儀のように地図が浮かび上がった。お~。
バロンさんが手を振りかざすと、書斎机の上のカンテラに火が灯り、本棚付近の階段の下から上に向かって眩い光が駆け上がった。灯り?…いや、あれは妖精?ヨウセイ…。すごいっ!!本当に別世界だ。
「これから君と二人で使う場所だ。気に入ったかい?」
ほうほう、なるほど…、ん??
「え…?二人?」
「そうだよ。大勢で仕事をやると思っていたのかい?」
「あの、はい。それにここってバロンの自室のようなものですよね?部下の方と仕事はされないんですか?」
聞いてみると、何だか複雑そうな顔をされました。…聞いちゃいけなかった?
「私も部下はいるにはいるんだけれど、私が共同の研究所の出入りを禁止されているんだ。だから、ここで仕事をするようにしているんだよ」
「それは、どういう…?」
「あ~、うん。それは、私がいると部下の仕事がなくなっちゃうんだ。仕事の処理速度に差があって効率を上げるために伝授したんだけど、誰もついてこれなかったんだ。そういう訳で、私だけ別件の仕事をここでこなす事になったんだよ。私がいなくても研究所の方は心配ないからね。…リーダーシップないから以前室長になる件も断ったんだけどね。誰か代わってくれないかな~」
ははは、と笑うバロンさんは、私が思っていたより優秀な人のようだ。彼が私の上司…、いや師匠。
きっと今の私の帰る場所はバロンさんのあの家だけと思っていいのだろう。彼の知識を吸収して、私も早く自立できるようになろう。
「バロンさん」
「ん?」
「あと4時間は目が見えますよね?」
「?そうだね…。もしかして、それまでに学びたいと思っているのかい?」
「はい。できれば、生活が不便にならないよう、生活魔法を少々と、魔道具の作成の基礎を」
「それは…。私は時間内に教えられるけど、君は…疲れてしまうんじゃないか?」
「大丈夫です!スパルタは慣れっこですから!」
舞い上がっていた私はその時気付かなかった。バロンさんが私の記憶の有無を疑っている事に。
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