巻き込まれ転生

もふりす

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1章 隠密令嬢(?)とリア充令息

不機嫌な幼馴染と支える攻略対象達 Ⅰ

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藍が生まれ変わったであろう歳から8年が経った。

…何で見つからない!?

8年間を無駄にしてはいないから。そこまで藍のために時間を割くつもりはない。助手なら藍の方が俺を見つけ出すのが筋だと思うんだがな。

藍がいつまで経っても社交界の場に出てこない。勿論どこかで使用人になっているかもと思って調べさせた。結局、黒髪黒目の令嬢や女子供を見つけられなかった。

唯一、黒髪黒目っぽい令嬢を一人見つけたが、違った。
名はエリザヴェータ・グレンヴィル。兄のアキムとは学友なのだが、俺の知る藍と性格が違いすぎるし、本人と会ってみたら普通の令嬢だった。自慢ではないが、藍とその他は識別する目も頭もあるし、第六感が「違う」と言うんだ。…一応黒髪黒目を隠している線を鑑みて、俺の藍センサーを働かせたが、それらしき奴はいなかった。

最終手段で、あの神様と他の神様を呼び出したんだが、やはり転生しているし、この世界にいると言う。ただ、それ以上の情報を開示はしてくれなかった。神様達曰く、藍をこの世界が殺そうとしているんだとか。…うん、お前らも歓迎してなかったもんな。だからといって、地獄行きを無視する程、俺も冷血漢ではなかったんだよな。

生まれた時期が合っているなら、現在8歳だ。

俺は、今魔法学園に通いながら二足歩行ロボットを次々と作り、助手として働かせている。…なんだが、どうも使用人一同の闘争心に火をつけてしまったらしい。

”坊ちゃまには申し訳ありませんが、そんな機械に私達は負けませんよ(わ)!!”

と俺の作ったロボットに宣戦布告を言い渡した訳だ。

俺は正直どっちが勝とうが別にいい。ロボットが負ければ改善すればいいだけだし。この攻防のおかげで、公爵家の環境がもっと良くなるのだから、止めるつもりもない。ってか、別にリストラしないから。戦々恐々とする日々なんてストレスが溜まるよ?持ち場の仕事が終わったら、下がってくれていいから。でも、使用人って働くの好きなのかな?ずっと屋敷中を駆け回ってる気がする。…お疲れ様?

ただ、俺にとって不可解なのが、どれだけロボットを作ろうが、藍ほどのスペックの機体が出来上がらないのだ。まあ、人工知能は今自力でインターネット回線を作り上げ、ネットの中で育成中だ。電波塔も作ったし、この世界でネットが使えない事はない。ただ、普及するには時間がかかりそうだ。

…何が足りないんだろう。流石に藍を捕まえてモルモットにするつもりはないよ?

異世界にあれこれ技術を持ち込んでいいかと言われれば駄目だろうが、神様が是とするから気兼ねなく機械いじりをやっている。普通に考えて、元のシナリオから逸脱する行為だけど、ヒロインと恋愛するつもりはないからな。

神様の俺に対するVIP待遇が物凄く腑に落ちないけど、気にするのは諦めた。無駄な事に頭使うのも面倒。前世でもこんなに周囲に目を向けた事、なかった…な。

「はあああああぁ~~~~」

肺の中の息を全て吐き出した。

物凄くストレスを感じる。使用人のこと言えないわ…。
どれもこれも?…藍が見つからないからだ。早く姿を現せっての。

机に突っ伏していると、機嫌を窺う教師の声が降ってきた。


「――オードラン君、何か問題がありましたか?」

(…そうか、今授業中だったか。)

さっきのため息を、授業がつまらない、と解釈されたようだ。まあ、つまんないよ?でも、成績以前に単位を取る必要があるから、一応大人しくしてるんだよ。…寝ちゃうけど。

魔法工学とか他人から学ぶまでもなく、実戦の時に自分で気づいて学習できるじゃないかと俺は思う。魔法関係以外の教科は前世で一通り学んだ内容だし、習い事をしていた影響で面白みのある部活動がなかった。


授業の時間は案外長くて、懐に入れていた通信機でミハイルから俺のロボット達の成長記録を報告してもらっている。最初の頃はミハイルにも触らせてなかったんだが、思ったより管理が面倒というか…、俺に整理整頓は向いてない事が判明した。だから、辞書三冊くらいの説明書を作ってやって、数十体の機体の管理を任せた。

『ユベール様。041のソフトに問題が発生しています。胸部辺りで発熱しているようです。…どのように対処しましょうか』

こういう時、藍だったら勝手に先読みして「ICチップの性能が悪かったから治したけど、別に良かったよね?」とか言ってくれるんだけどな…。

「それじゃあ、小さな部品でICチップが必要だから、それが収納してあるA倉庫から取ってきてくれ。勿論素手で触らないでくれよ?他の工具も研究室のロックを解除しておくからそこで使って。持出は厳禁で」

『承知致しました。後ほど書類にまとめてデータとしてそちらの端末にお送りいたしますね』

「よろしく、あ――…ミハイル」

『どうかされましたか?』

「何でもない。頼んだぞ」


ふ~、ヤバい。末期だ。さっき、藍って言いかけた。

「はあああああぁ~~~~」

これは、禁断症状だな。本当に、あいつはどこにいるんだ。

「また大きなため息だな。どうした、欲求不満か?」

「あ?」

「おう、怖い怖い。随分と不機嫌だな。さっきも授業中にため息ついてたよな。大丈夫か」

「…大丈夫に見えるか?」

「見えんな。本当にどうしたよ」

俺に話しかけてくるのは、同級の中では気心の知れた友人?だと思う。
名はアキム・グレンヴィル。
あの令嬢の兄だ。こいつは世話好きというか世渡り上手なお節介野郎だ。

…俺の解釈はそうだ。

たまにこうやって声を掛けては俺の愚痴を聞いてくれる数少ない友人…だろうな。

何かと寝てるか集中していると気付けなかったりするが、俺の性格を理解し、めげずに話しかけ続けてきた奴だな。他にも数えられる程度だが、友人らしい存在はいる。…が、少し面倒な事に全員ゲームの攻略対象な訳だ。女達が寄ってたかって騒ぐから平穏な時間を過ごせない。教室にいる時は騒ぎ立てないというルールをあの殿下が決めてくれたおかげで教室は寝やす…過ごしやすい。

殿下は俺を諦めてはいないようだが、配下は3人いる。勿論攻略対象。


そんな事を考えていたのがいけないのだろうか。
教室に騒音の団体が押し寄せてきた。


「やあ、ユベール。今日も不機嫌そうで何よりだよ」

殿下がやってきた。




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