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第一章 ぶつかり合う感情
*少年視点
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私はヴァーミリアン・エド・バルモンド。
国の宰相を父に持ち、母は宮廷魔術師として名を馳せている。
国の中枢にいる、有力貴族の嫡男だ。
彼らの血筋を受け継いだ私は、特に苦労もなく家庭教師から学んだ事を吸収していた。
元々何事にも疑問を持つ性質だったからか、とことん知識をつける勉学の時間が好きだった。授業中に分からない事があれば質問し、時には先生と共に問題が解決するまで時間を費やしてきた。
父も母も私が知識を付けるごとに大いに喜んでくれたが、私付きの執事はいい顔をしなかった。
彼、ロレンソはいつもこう言っている。
”ヴァル、貴族の必要最低限の知識はついてるんですから、もう少し羽ぇ伸ばしません?
私はもう飽きましたよ。本の知識しか話さないヴァルとか、無愛想なヴァルとか”
露骨に嫌味を言い、私が現在進行形で読んでいる本の上に一枚の紙を置くロレンソにため息をつき、後方を振り返った。私が睨みつけているのに動じない彼を見て、もう一度紙に目を通した。
「…何だ、これは」
「いや、見た通りですけど~?」
「私への新手の嫌がらせか?」
「えぇ~、俺って信用ないですか?
書類の記載事項の真偽くらい確認してますってば!」
「……」
私はまだ本の世界から抜け出せずに夢でも見ているのか?
目の前の紙、手紙には――、
『今度、城下町の散策にお付き合いいただけますか?
私、ヴァーミリアン様に勧めたい場所があるんですの。良い返事をお待ちしておりますわ。』
最後には、ナーロレイ・キュランダと名前が記されている。
彼女と文通を送り合う仲になって早1週間。
これは自惚れてもいいのだろうか。
彼女が私に好意を向けてくれている、と。
――――パシンッ
「痛っ!」
ニヤついた口角を一気に下げて、頭を叩いたであろうロレンソを見やる。
彼の手には分厚い辞書があった。それも私が愛用しているものだっっ!
それは私の、疑問を解決して来てくれた大切な相棒だ。粗末に扱うんじゃないッ、と返したかったが、ロレンソの表情を落とした真顔に口を噤んだ。
「毎度失礼を申し上げているのは重々承知しておりますが、言わせていただきます。
我らが主であるヴァルが聡明な方であると同時にポンコツな少年だと私は誰よりも知っております。その人生の先輩からの言葉です。
熱が冷めやらないうちに、さっさと返事を書いてください!
あれからどれだけ時が過ぎてると思ってるんですか!小一時間ですよ!」
「え、」
私はそんなに経っていると知らず混乱している間に、机の乱雑に積まれた本はメイド達によってどかされ、一枚の便箋と封筒が置かれた。勢いに圧されて書き終えると、もう一枚紙を目の前に差し出された。
そこには、前当主主催のパーティーへの招待状の詳細が記されており、私は誘導されるように人差し指を朱印に近づけられ―――、
「ちょ、と待って?…――これは誰宛て?」
にっこりと笑う執事の目がキラリと光ったのを見て、彼の用意周到さに感心した。
分かったという意味も含めて、彼の手を空いている左手で上からパシパシと叩いて外させた。
一瞬で目を通し、承諾というか捺印を押して朱の付いた指をハンカチで拭った。
封筒に入れ閉じてから渡せば、ロレンソの腕には一羽の鳥が止まっていた。
「…お前は、応援してくれてるんだよね?」
「何を可笑しなことを。勿論でございますよ。」
ただ…今の坊ちゃんにナーロレイ様は勿体ないとも思っていますよ、と憎たらしいほど爽やかな笑みで断言された。
私の経験上、私を坊ちゃん呼びする時は、何かが起こる。
――執事って、主より強くてもいいのか?
国の宰相を父に持ち、母は宮廷魔術師として名を馳せている。
国の中枢にいる、有力貴族の嫡男だ。
彼らの血筋を受け継いだ私は、特に苦労もなく家庭教師から学んだ事を吸収していた。
元々何事にも疑問を持つ性質だったからか、とことん知識をつける勉学の時間が好きだった。授業中に分からない事があれば質問し、時には先生と共に問題が解決するまで時間を費やしてきた。
父も母も私が知識を付けるごとに大いに喜んでくれたが、私付きの執事はいい顔をしなかった。
彼、ロレンソはいつもこう言っている。
”ヴァル、貴族の必要最低限の知識はついてるんですから、もう少し羽ぇ伸ばしません?
私はもう飽きましたよ。本の知識しか話さないヴァルとか、無愛想なヴァルとか”
露骨に嫌味を言い、私が現在進行形で読んでいる本の上に一枚の紙を置くロレンソにため息をつき、後方を振り返った。私が睨みつけているのに動じない彼を見て、もう一度紙に目を通した。
「…何だ、これは」
「いや、見た通りですけど~?」
「私への新手の嫌がらせか?」
「えぇ~、俺って信用ないですか?
書類の記載事項の真偽くらい確認してますってば!」
「……」
私はまだ本の世界から抜け出せずに夢でも見ているのか?
目の前の紙、手紙には――、
『今度、城下町の散策にお付き合いいただけますか?
私、ヴァーミリアン様に勧めたい場所があるんですの。良い返事をお待ちしておりますわ。』
最後には、ナーロレイ・キュランダと名前が記されている。
彼女と文通を送り合う仲になって早1週間。
これは自惚れてもいいのだろうか。
彼女が私に好意を向けてくれている、と。
――――パシンッ
「痛っ!」
ニヤついた口角を一気に下げて、頭を叩いたであろうロレンソを見やる。
彼の手には分厚い辞書があった。それも私が愛用しているものだっっ!
それは私の、疑問を解決して来てくれた大切な相棒だ。粗末に扱うんじゃないッ、と返したかったが、ロレンソの表情を落とした真顔に口を噤んだ。
「毎度失礼を申し上げているのは重々承知しておりますが、言わせていただきます。
我らが主であるヴァルが聡明な方であると同時にポンコツな少年だと私は誰よりも知っております。その人生の先輩からの言葉です。
熱が冷めやらないうちに、さっさと返事を書いてください!
あれからどれだけ時が過ぎてると思ってるんですか!小一時間ですよ!」
「え、」
私はそんなに経っていると知らず混乱している間に、机の乱雑に積まれた本はメイド達によってどかされ、一枚の便箋と封筒が置かれた。勢いに圧されて書き終えると、もう一枚紙を目の前に差し出された。
そこには、前当主主催のパーティーへの招待状の詳細が記されており、私は誘導されるように人差し指を朱印に近づけられ―――、
「ちょ、と待って?…――これは誰宛て?」
にっこりと笑う執事の目がキラリと光ったのを見て、彼の用意周到さに感心した。
分かったという意味も含めて、彼の手を空いている左手で上からパシパシと叩いて外させた。
一瞬で目を通し、承諾というか捺印を押して朱の付いた指をハンカチで拭った。
封筒に入れ閉じてから渡せば、ロレンソの腕には一羽の鳥が止まっていた。
「…お前は、応援してくれてるんだよね?」
「何を可笑しなことを。勿論でございますよ。」
ただ…今の坊ちゃんにナーロレイ様は勿体ないとも思っていますよ、と憎たらしいほど爽やかな笑みで断言された。
私の経験上、私を坊ちゃん呼びする時は、何かが起こる。
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