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十一
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この声は…
「…相田さん?」
『うん、僕だよ』
くすくすと笑う声が頭の中に直接響いて、どこから声がしているのか、相田さんの居場所が分からない。
キョロキョロと野原を見回してその姿を探していると、八代君がじっと一点を見ている事に気が付いた。
倣うように視線の先を見れば、そこは鬱蒼と茂っている森の入り口で。
「そこにいるのじゃろう?勿体ぶっておらずにさっさと姿を現したらどうじゃ」
『そうだね。そうするよ』
次の瞬間、暗闇に一つの拳大ほどの大きさの光の玉が浮かんだ。かと思えば、その光の周囲に小さな光の玉が次々と現れて。たくさん出現したそれらは吸い寄せられるように拳大の光の玉の周囲に集まっていって白い人影──相田さんの姿へと形を変えた。
『ふふ、皆ありがとう』
緩慢な笑みを浮かべる相田さんの姿をした存在に、俺は前に八代君が言っていた事を思い出した。
───『魂は精神の塊。その想いが強ければ強いほど、弱い者は自ずとその周囲に集まってくる。強者の魂を核とし、その者の姿を形作る』
恐らく、最初に現れた拳大ほどの大きさの光の玉が相田さんの魂で、八代君が言っていた『強者の魂』なのだろう。
『ふふ、驚かないんだね。まあ、僕もこの姿になってそんなに経ってないけど、慣れたし。そういうものか』
「…さっき、俺のせいってどういう意味ですか?」
『ああ、気になる?言ってもいいけど、そこの彼に怒られそうだしなぁ。どうしようかな?』
そこの彼って…
相田さんが八代君を見ながら、くすくすと笑う。…こんな笑い方をする人だっただろうか?
「…宗介」
「な、何?」
「僅かじゃが、あやつの魂から九重の気配を感じる」
「!」
「お主、九重と…いや九重の式神と接触したな」
『九重? …ああ、あの親切なミミズさんの事?うん、会ったよ』
「何を話した」
『何って、そりゃあ僕の死因が変わった原因についてに決まってるでしょ?』
ふわふわと宙を飛びながら、相田さんは続ける。
『僕、本当は心臓発作で死ぬはずだったんでしょ?でも、実際は車に轢かれて即死。何でそうなったんだと思う?久住さん』
「何でって…」
『ぶっぶー。はい残念、時間切れ。正解は君と関わったせいで僕の運命が変わったから、でしたー』
…え? 俺と、関わったから?
『君と関わったせいで僕はそこの彼が仕えてる神様とやらの管轄下になったんだって』
相田さんが言っている事がどういう意味なのか分からず、咄嗟に八代君を見る。
「…そういう事か。あの外道め、悪趣味な事をする」
けれど、八代君は俺の視線には応えずに相田さんに伏せていた視線を向けた。
「確かに、お主の運命は少しばかり変わった。じゃが、だからと言ってこやつを恨むのはお門違いじゃぞ」
「!?」
俺を恨む?
『何で』
「こやつも好きでそんな事をした訳ではないという事じゃ」
『…っ、じゃあ!僕はどうすればいいんだよ!』
それまで浮かべていた緩慢な笑みから打って変わって怒りのそれへと変わった相田さんに対して、八代君は少しも表情を変えずに口を開いた。
「突然死を迎えた事にやり切れなく思うのも無理はない。じゃが、悪霊と化せば、お主はその苦しみにこの世におる限り苛まれ続ける事になる。…直にあの世から迎えの者が来る。悪い事は言わん。その者と共にあの世へと疾く渡れ」
『………』
何かを考え込むように押し黙る相田さんの方へ八代君が一歩近づいた、その時。
「『あーあ。あともうちょっとだったのに。ざーんねん』」
「!!」
『え?』
相田さんの背後に突如として現れた九重の式神が、ぽっかりと口を開ける。
「『悪霊になってから食べるつもりだったけど、まあ盗られるよりいっか』」
マイクで話しているように重なって聞こえる九重の声。それは目の前の赤黒いミミズのような式神から発せられていて。
「伏せよ!」
八代君が九重の式神に向かって走り出す。それと同時に現れた薄紫色の炎弾が式神に打ち込まれた。
「───!」
恐怖、混乱、怒り、悲しみ。その全てがごちゃまぜになったような声が式神から発せられ、思わず耳を塞ぐ。
何だこの声…!
「*****、顕現せよ!」
けれど、そんな叫び声の中で聞こえた聞き慣れた声に、閉じていた目を開ければ、そこには数十匹の猫を従えて戦っている八代君の姿があった。
「すごい…」
八代君にもこの叫び声が聞こえているはずなのに、ものともせずに式神と対峙している。
…何をしてるんだ、俺は!
「相田さん!こっちに!」
とにかく自分が出来る事をするんだ。せめて、八代君の足を引っ張らないように。
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