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しおりを挟む「───…」
閉じた瞼の向こうに光を感じる。
…朝か
ゆっくりと起き上がり、ぼうっとする頭がまず最初に思い出したのは昨夜の事。
そうだ。雨月が気を失った後、オレもその隣りで眠ったのだと思い出し、己の隣りに視線を向ける。
「な…」
だが、そこにもう雨月の姿はなかった。
「っ」
途端に迸った衝動がオレを突き動かす。ベッドから降り、寝室の扉を勢いよく開ける。と、
「あ、起きましたか」
「………」
そこには何食わぬ顔でいつも通りに食事の準備をしている雨月が立っていた。
「今起こしに行こうと思ってたんです」
「………」
「早く着替えて来て下さいね」
そう言うと再びキッチンへと戻っていった後ろ姿を、オレは暫く呆然と見ていた。
*****
「………」
目の前で朝食を食べているこの男の考えている事が全く分からない
「食べないんですか?」
食事に手を付けず、ひたすらに自分を見ているオレを流石に不思議に思ったのか、雨月が食べる手を止めて首を傾げる。
「…お前、何考えてんだよ」
「?」
そう聞いても尚、何を言っているのか分からないというように首を傾げる様子に思わず舌打ちしてしまう。
「だから、何でそんな普通にしてられんだって聞いてんだよ」
経緯はどうあれ、無理矢理抱いたようなもの。であれば、それなりの反応が返って来てもおかしくはない。それが普通だろう。
にも関わらず、目の前の男は特別何も気にする事はなかったとでも言いたげな態度。
昨夜の雨月のベッドでの艶姿がまるで幻だったのでないかと思ってしまうほどだ。
「…ああ、もしかして昨夜の事ですか?」
それ以外に何があるんだ。
「まあ、ああいった事は初めてでしたけど…」
「何だよ」
暫く考え込むようにした後、雨月は答えた。
「別に気にする程の事ではないですね」
「───は?」
雨月の言葉に耳を疑った。
「あ。すみません、今日も少し出てきますね。食事はいつも通り冷蔵庫の中の物を好きしてもらって構いませんから」
そう言って、雨月は止める間もなくあっという間にどこかへと出かけていった。
「………は?」
気にする程の事ではない。あいつはさっき確かにそう言った。
…は?このオレに?抱かれておいて?別に?気にしない?
じゃあ、あれは何だったんだ?オレに抱かれてアンアン鳴きまくってたくせに?
「…は、なるほどなぁ」
どうやらオレは期待していたらしい。
今後、オレの前でどんな風に表情を、態度を変えるのか。
だが、実際は違った。
「…あほくさ」
何をがっかりしているのか。これではまるで意識しているのは自分だけのようではないか。
ふつふつと苛立ちが込み上げてくる。ここまで虚仮にされたのは初めてだ。
「…あいつ、帰ってきたら覚えてろよ」
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