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38 side雨月
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一方その頃、雨月はゆりえの愛人たちと接触していた。
「じゃあ、新人ちゃんたちの歓迎を祝して、かんぱ~い!」
グラスを掲げ、酒を呷っていく愛人たち。その面々を酒を飲むふりをして、じっと観察する。
「じゃあ、まずは自己紹介から始めよっか。俺は栄」
乾杯の音頭をとっていた青年が名乗ると、他の面々もそれを皮切りに順に名乗り始める。
「ぼくは美弥」
「僕、詩!」
「オレは奏」
「ボクは出流だよ」
5人の青年たちが自己紹介を終えると、今度は新人たちの自己紹介となった。
今回、この歓迎会に招待された新人はおれを含めて3人。
ちなみに、おれがどうやってこの場に潜入したかというと、本当ならば今日来るはずだった青年に少し『良い話』を持ち掛けたのだ。
何でもおれと同じく風景カメラマンを目指しているらしく、それならばとおれが師と仰いでいる人を紹介した。見たところ才能はあるようだったし、あとは自分で何とかするだろう。
まあ、そんなこんなで、おれはこうして彼が座るはずだった席にいるという訳だ。
「はーい、自己紹介ありがとね。それじゃあ、この『サロン』に入るにあたっての注意事項を教えるからねー」
栄が手を叩き、注目を集めさせる。どうやら、この中では栄がリーダーのようだ。
「まず一つ目、俺たちはあくまでもゆりえさんの愛人。求められれば、どんな事でも応えなきゃいけない」
「…どんな事でも、ですか?」
「そうだよ。俺たちはゆりえさんに恩があるからね」
「そうそう。例えば、ライバル企業のお嬢様や奥様からゆりえさんが望む情報を取ってくるとかね」
「それで、旦那さんを社長にのし上げたんだもんね。やり手のキャリアウーマンって感じで、凄いよねぇ」
美弥と詩の言葉に、栄は賛同するようににこりと微笑んでみせる。
「で、二つ目はゆりえさんが俺たちに話したプライベートな事には何の関心も持たない事」
「? どうして持ってはいけないんですか?」
彼らは好き好んでゆりえの愛人をやっているくらいだ。ならば、情を交わす相手の事を少なからず知りたいと思うはずだ。
「うーん、どうする?あの話もしといた方が良いんじゃない?ねえ、奏」
「そうだね。ゆりえさん酔ったらよくその話するし」
詩に聞かれ、奏が首肯する。
…あの話?
何の事だろうと思い、栄を見る。彼は少し渋っていたようだったが、周りに説得され、とうとうその重い口を開いた。
「ここだけの話、ゆりえさんって酔ったらよく『彩子』さんって女の人の事を口にするんだよ」
───…!
その瞬間、心臓が脈打つ音がやけに近く聞こえた気がした。
「何だかよく分からないけど、裏切られたらしいよ」
「このお話する時のゆりえさん、ちょっと怖いけど…でも凄く悲しそうなんだよねぇ」
「確かに。じいやさんにも怒られるしね」
…じいや?
「じいやさんがいるんですか?」
「そうだよぉ。渋くて格好良いんだぁ」
「イケオジって感じだよね」
「…その女性の話をするとどうしてじいやさんが怒るんですか?」
「さあ、それは俺にも分かんないけど。前にじいやさんに『彩子』さんとは何があったのって聞いたら、この話題には触れないようにって怒られちゃったんだよね。だから君も気をつけて」
「…そうなんですね。分かりました」
そう頷いてみせると、5人は満足したように別の話題を話し始めた。
「ていうか、じいやさんって本当に格好良いよね」
大分酔いが回っているのか、あまり回っていない呂律で出流がそう切り出す。
「分かる!僕も一度でいいから、じいやさんに仕えて貰いたいっ」
「無理でしょ。あの人、忠誠心の塊みたいな人だよ?」
「ゆりえさんが嫁いでくる前からの付き合いらしいから…もう20年くらいになるのかな?」
「偶に見かけた時はラッキーだよねー」
その後も、話題を切り替えてはキャッキャッと盛り上がる空間に、おれは3時間ほど滞在したのだった。
「じゃあ、新人ちゃんたちの歓迎を祝して、かんぱ~い!」
グラスを掲げ、酒を呷っていく愛人たち。その面々を酒を飲むふりをして、じっと観察する。
「じゃあ、まずは自己紹介から始めよっか。俺は栄」
乾杯の音頭をとっていた青年が名乗ると、他の面々もそれを皮切りに順に名乗り始める。
「ぼくは美弥」
「僕、詩!」
「オレは奏」
「ボクは出流だよ」
5人の青年たちが自己紹介を終えると、今度は新人たちの自己紹介となった。
今回、この歓迎会に招待された新人はおれを含めて3人。
ちなみに、おれがどうやってこの場に潜入したかというと、本当ならば今日来るはずだった青年に少し『良い話』を持ち掛けたのだ。
何でもおれと同じく風景カメラマンを目指しているらしく、それならばとおれが師と仰いでいる人を紹介した。見たところ才能はあるようだったし、あとは自分で何とかするだろう。
まあ、そんなこんなで、おれはこうして彼が座るはずだった席にいるという訳だ。
「はーい、自己紹介ありがとね。それじゃあ、この『サロン』に入るにあたっての注意事項を教えるからねー」
栄が手を叩き、注目を集めさせる。どうやら、この中では栄がリーダーのようだ。
「まず一つ目、俺たちはあくまでもゆりえさんの愛人。求められれば、どんな事でも応えなきゃいけない」
「…どんな事でも、ですか?」
「そうだよ。俺たちはゆりえさんに恩があるからね」
「そうそう。例えば、ライバル企業のお嬢様や奥様からゆりえさんが望む情報を取ってくるとかね」
「それで、旦那さんを社長にのし上げたんだもんね。やり手のキャリアウーマンって感じで、凄いよねぇ」
美弥と詩の言葉に、栄は賛同するようににこりと微笑んでみせる。
「で、二つ目はゆりえさんが俺たちに話したプライベートな事には何の関心も持たない事」
「? どうして持ってはいけないんですか?」
彼らは好き好んでゆりえの愛人をやっているくらいだ。ならば、情を交わす相手の事を少なからず知りたいと思うはずだ。
「うーん、どうする?あの話もしといた方が良いんじゃない?ねえ、奏」
「そうだね。ゆりえさん酔ったらよくその話するし」
詩に聞かれ、奏が首肯する。
…あの話?
何の事だろうと思い、栄を見る。彼は少し渋っていたようだったが、周りに説得され、とうとうその重い口を開いた。
「ここだけの話、ゆりえさんって酔ったらよく『彩子』さんって女の人の事を口にするんだよ」
───…!
その瞬間、心臓が脈打つ音がやけに近く聞こえた気がした。
「何だかよく分からないけど、裏切られたらしいよ」
「このお話する時のゆりえさん、ちょっと怖いけど…でも凄く悲しそうなんだよねぇ」
「確かに。じいやさんにも怒られるしね」
…じいや?
「じいやさんがいるんですか?」
「そうだよぉ。渋くて格好良いんだぁ」
「イケオジって感じだよね」
「…その女性の話をするとどうしてじいやさんが怒るんですか?」
「さあ、それは俺にも分かんないけど。前にじいやさんに『彩子』さんとは何があったのって聞いたら、この話題には触れないようにって怒られちゃったんだよね。だから君も気をつけて」
「…そうなんですね。分かりました」
そう頷いてみせると、5人は満足したように別の話題を話し始めた。
「ていうか、じいやさんって本当に格好良いよね」
大分酔いが回っているのか、あまり回っていない呂律で出流がそう切り出す。
「分かる!僕も一度でいいから、じいやさんに仕えて貰いたいっ」
「無理でしょ。あの人、忠誠心の塊みたいな人だよ?」
「ゆりえさんが嫁いでくる前からの付き合いらしいから…もう20年くらいになるのかな?」
「偶に見かけた時はラッキーだよねー」
その後も、話題を切り替えてはキャッキャッと盛り上がる空間に、おれは3時間ほど滞在したのだった。
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