炎のように

碧月 晶

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109.表情

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アルはほとんど顔に出さないものの、楽しんでいる事がにじみ出ていて。それが何となく感じ取れた。


楽しそうだったな…

 
「何ニヤニヤしてるんだ。気持ち悪いぞ?」
「なんとでも言え」


ニヤけていた顔をイグに見られたのが何となく恥ずかしくて、口元を手で覆い隠す。

「ま、楽しかったのなら何よりだ。それに一つ収穫もあった事だし、な?」
「そうだな」
「まだ少年みたいだとは思ったが、十六か…。どうりで行動と言葉遣いがちぐはぐな訳だ」

そう。アルは言っている事や考え方などの理性的な部分は妙に大人びているのに対して、感情的なところ──つまり心で感じる所がまだそれに追いついていないようだった。

その差からくるものなんだろう。どこか違和感があった。

「何か、事情があるんだろうな…」
「偽名の事もか?」
「なんだ、気付いてたのか」
「当たり前だ。で、聞かなくて良かったのか?」
「ああ。こういうのは向こうから言ってくれないと意味はないからな。それまで待つさ」
「そうか、頑張れよ。俺も出来る限り協力してやる」
「ありがとうな、イグ」

 


お互いに笑いあいながら城へと帰った。

 

 

 
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