Estrella

碧月 晶

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…今、祭月の事を呼び捨てにした?



益々ざわつき始める中、当の本人は未だに寝息を立て続けている。



そんな祭月を目下に睨みつけているソイツは

黒髪で、少し聞いただけだったがその話し方から関西の出である事がうかがえた。


「…チッ」


一向に起きる気配のない祭月に盛大に舌打ちをすると、皆が見守る中、ソイツは一つ息を吸い込んだ。

そして、




「ええ加減起きんかい!!!!」




……………っ!!!




耳をひっ掴んで、野獣が唸るような

教室中がビリビリと震えたのではないかと錯覚する程の声量をその中へと放った。





「……………………………ぅん…?」




が、




咄嗟に耳を塞ぎたくなるような爆音を直接吹き込まれたにも関わらず、飛び起きるでもなく

たっぷりと間をおいてから、祭月はのったりと身体を起こした。





「ん゙ー…な゙に…うるさいなぁ…」





相変わらずの寝起きの悪さだが、今はそのマイペースさ加減に脱帽しそうだ。



漸く細い眼を擦りながらソイツへと目を向けた祭月。


すると、ソイツを視認するや否や
その薄茶色の眼がみるみる見開かれていく。



「あれ?…イッちゃん?わー!久しぶり~!…って、あれ?イッちゃーん?おーい、どこ行くのー?」





キャッキャッとはしゃぎ始めた祭月の襟首を無言で掴み

『イッちゃん』と呼ばれたソイツはそのまま教室から出て行った。




「「「「…………………」」」」




怒涛の勢いで過ぎ去っていった展開に、どう反応すれば良いのか


この場にいる全員がそう思っている事だろう。




「ん?何だ、今日は静かだなお前ら」




漸くお出ましになった担任の登場に、教室は一気にくすぶっていた疑問の嵐の場と化す。



「あー…取りあえず落ち着けお前ら。そいつは『砂酉 漁(すなとり いさり)』つって、見ての通りこのクラス二人目の転校生だ。不法侵入とかじゃないから、そこんとこは安心しろー」



見ての通りって…初耳なのだが?
ていうか見ただけで分かる訳ないだろ。
あと安心させるべき点はそこじゃねぇ。



「あの…その転校生?が祭月君連れてどこか行っちゃいましたけど…呼び戻さなくて良いんですか?」



(確か)委員長がオロオロしながら、先ほど起こった事を、掻い摘まんで報告するも…



「良いんじゃねーの?放っといても。じゃ、HR始めんぞー」



そう軽く一蹴すると、何事も無かったかのように出席を取り始めたのだった。

 




ええー…

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