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21「第一のカップリング1」
しおりを挟む「燈堂先輩と相性が良い人かぁ…」
うーん…
取り敢えず、今俺が知っている燈堂先輩の情報を整理して、それから相性の良さそうな相手を考えてみよう。
燈堂恭介。聖カーニア学園の三年生。生徒会長。魔力属性は『火』。契約精霊は『中位精霊サラマンダー』の『ヴェルメリオ』。燈堂財閥の跡取りで、親衛隊の人数は一番多い。また、俺様な性格で(あれでも)成績は学年一位と頭は良く、モテるが特定の相手は作らない事で有名。そして鳥肌が立つほど気障で高いプライドの持ち主。
「…って」
今更だけど情報少なっ!こんだけ?俺が知ってる情報こんだけ!?
こうなると友広の存在の有難みが余計に分かるな…
交友関係も聞いとくんだったと後悔する。だが、今はこの少ない武器でどう対抗するかを考えなければ。
「次は相性の良さそうな相手か…」
そうだな…ここは本来のゲームのシナリオをヒントに考えてみよう。
ゲームでは、燈堂先輩は主人公に事あるごとに構ってきては強引に迫ってくる俺様なキャラだったはず。
そして前述した通り、特定の相手を作らず色んな可愛い系男子生徒と遊びまくっている燈堂先輩に対して、主人公はそんな燈堂先輩の事を毛嫌いしており、ツンケンした態度ばかり取っていた。
だが、モテまくる故にそういう態度を取る人間がいなかったためか、主人公の事を気に入り、なかなか靡かない主人公を堕とそうと躍起になっている内に本気になってしまうというストーリーだったはずだ。
確か、前世の姉も『普段は追いかけられる側なのに、主人公の前だと追いかける側になっちゃったから余計新鮮だよね~。うんうん、分かるよ!懐かないネコほど俄然燃えるよね!!』などと言っていた。
いや、俺には全く分からないし共感できないけども。兎に角、燈堂先輩はそういう人間らしい。
…ん?そういえば、まだ続きがあったような……
『でも、でもね!懐かないネコで言えば、野分くんも相当だと思うのよ!だって、公式がこの二人の事を犬猿の仲って言ってるのよ?公式がケンカップルって認めてるんだよ!?めっっっっちゃ萌えるわ~!!』
………改めて思い出すと姉ちゃんって凄い妄想力逞しい腐女子だったんだな
あそこまでいくと呆れを通り越してもはや尊敬す………って、ちょっと待てよ?ケンカップル?
って、あれだよな?『喧嘩するほど仲が良い』っていう言葉を表したようなカップルの事だよな?
姉ちゃんの妄想を真に受ける訳ではないが、今現在、燈堂先輩と野分先輩は会えばケンカばかりしている事は学園中の周知の事実だ。
「これは…いける、か?」
いや、待て待て。決めつけるのはまだ早いぞ、俺。だってあの燈堂先輩のお相手だぞ?それに急いては事を仕損じるって言うしな。ここは落ち着いて野分先輩の情報を整理してみよう。
野分正宗。聖カーニア学園の三年生。風紀委員長。魔力属性は『風』。契約精霊は『中位精霊ウィンドアルゴバード』の『シルフィ』。代々教師や大学教授を多く輩出する家の出なだけあって、誰もが認める真面目な性格の持ち主。勿論、頭も良い。だが、毎回燈堂先輩に僅差で負けてしまって成績は学年二位。また、燈堂先輩とは違う方向で人気があり、人望は言わずもがなな人物。
「………」
なんか、挙げれば挙げるほど、燈堂先輩のお相手になってもらうには申し訳ないというか、釣り合わない気がしてきたな…
いや!諦めるな、俺!!姉ちゃんも言ってただろ!あの二人は『公式が認めたケンカップル』だって!
「………いやでもなぁ」
野分先輩の事は尊敬しているし、(俺以外の相手と)幸せになって欲しいとは思っている。
だが、その相手に燈堂先輩を据えるのも正直気が引けるというか、申し訳ないというか……いや、待てよ?
そういえば、ゲームでの野分先輩は真面目ゆえに自分にも周囲にも厳しすぎる事を悩んでいたがどうする事もできずにいた。そんな野分先輩に対して、初めて意見したのが主人公だった。それをきっかけに野分先輩は少しずつ主人公に惹かれていくというストーリーだったはず。
つまり!野分先輩に必要なのは『臆せずに堂々と意見を言ってくれる相手』だ!
その点で言えば、デリカシーの無い、もとい無遠慮な燈堂先輩はまさに打ってつけの相手と言えるのではないだろうか。
「…よし、これでいこう!」
そうと決まれば、早速作戦開始だ。
頑張るぞー!おー!
*****
この作戦において、キーワードとなるのは『中間試験』だ。
聖カーニア学園の中間試験は範囲が広いので、約一ヶ月前に試験範囲が発表され、試験までの一ヶ月間は部活動や委員会もお休みとなる。
従って、燈堂先輩も野分先輩も暇…という訳ではないが、その分接触しやすくなる。
さて、ここで問題になるのが『どちらから接触するか』だ。
うーん…そうだな、各ルートで考えてみるか。
まずは燈堂先輩から先に接触してみたルート。
俺の見解だが、燈堂先輩は恐らく野分先輩に対してそこまでの敵対心は持っていないはず。
野分先輩が神がかったタイミングで助けてくれたあの時も、燈堂先輩はどこか野分先輩と言い合いをするのを楽しんでいるような雰囲気を感じた。
という事を踏まえると、やはり優先すべきは野分先輩の燈堂先輩への意識改革だろう。
燈堂先輩は野分先輩の事をそれほど嫌ってはいないが、野分先輩は自分とは正反対な人柄の燈堂先輩を心底毛嫌いしているように見えた。
なので!
「───という訳で、ここはこの値を代入すると見せかけた引っ掛け問題だ。従って、正解はこちらの値を代入すれば導き出される」
野分先輩に勉強を教えてもらっている訳である!
…え?訳である、じゃない?何がどうしてそういう考えに至って、その状況になっているのかって?
説明しよう!これは名付けて『中間試験にかこつけて野分先輩に勉強を教えて貰いながら、燈堂先輩への苦手意識を改革しよう作戦』である!
勿論、高一程度のものなら別に教えてもらわなくても出来る(何なら逆に高三の範囲も教えられる)が、そこは噓も方便という事で。
「ああ、なるほど」
「この説明で分かるだろうか?」
「はい。分かりやすかったです」
まあ、そんなこんなで只今絶賛放課後の図書館で勉強会中だ。あ、ちゃんとこの前助けて貰った時のお礼は伝えてあるからな?
という訳で、今のところ順調に勉強も進んでいるし、そろそろいい感じに野分先輩とも打ち解けられてきた。
仕掛けるなら、今だろう。
「そういえば、なんですけど」
「? 何だ?」
「野分先輩と燈堂先輩って仲良いですよね」
「…は?」
一瞬何を言われたのか分からないと言わんばかりに緑眼を見開く野分先輩には気付かないふりをして、続ける。
「ほら、この前も燈堂先輩と今回の中間試験で勝負するって言ってたじゃないですか」
「あれは…!」
「あれは?」
「っ、奴と私の仲が良い訳がないだろう」
「そうなんですか?」
「そうだ。奴は不真面目だし、節操がない。あんな奴は嫌いだ」
あら~、これは思ったより根が深いぞ…。困ったな…ここからどうやって意識を変えて貰おう?
「…昔は、あんな奴じゃなかったんだがな…」
と、その時だった。野分先輩がぼそりとそんな事を言ったのは。
「え?昔って…」
思わず聞き返した俺に、野分先輩はどこかばつが悪そうに視線を逸らした。
「燈堂先輩って昔からあんなじゃなかったんですか?」
だが、そんな野分先輩を無視して、俺はすかさず質問した。きっとここがチャンスだ。
すると、野分先輩は暫く困ったように視線を宙にさまよわせていたが、やがて観念したように一つ息を吐き出すとゆっくりと口を開いた。
「…実は、あいつとは幼稚園からの付き合いなんだ」
「え」
幼稚園からって…
「幼馴染って事ですか?」
「まあ、一般的な言い方をすれば、そうなるのだろうな」
不服げに溜め息を吐く野分先輩に、俺は心の中で「マジか…」と驚いたが、顔に出さないように頑張った。凄く頑張った。
「あの頃はよく一緒に遊んでいたと思う。だが…小学校にあがって三年が経った頃、あいつは変わった。元々クラスでも中心的な立ち位置で目立った存在だったが、成長するにつれてそれに輪をかけて浮き名を流すようになり、段々と不真面目になっていった。だが、それでいて成績は良いときたものだから腹立たしい事この上なかったよ」
「………」
小学校にあがって三年が経った頃というと当時九歳か…。ちょうど九年前だ。
…ん?九年前?この数字どこかで聞いたような…
───『───そして、九年前に起きた事件で魔物が初めて確認されました』
そうだ。精霊学の授業の先生が言っていたんだ。
これが燈堂先輩が変わった理由と何か関係があるのだろうか?
「と、まあ、そんな訳で段々と反りが合わなくなっていってな。何の因果か高校まで同じで、君も知っているように今に至るという訳だよ」
「…そう、だったんですか」
そんな事が……
ゲームでは知り得なかった情報だ。
だが、これで分かった。野分先輩は完璧に燈堂先輩の事を嫌っていない。
寧ろ、昔仲が良かっただけに、変わり果ててしまった燈堂先輩に対して厳しく当たってしまうのだろう。
よし、そういう事なら、これはまだ付け入る隙があるぞ!
「…先輩は燈堂先輩と仲直りがしたいんですね」
「は!?な、何故そうなる。私の話を聞いていたか?」
「聞いたからそう思ったんです。だって、先輩、燈堂先輩の事を話している時、寂しそうな顔をされていましたから」
「え…」
「私が…?」と信じられないように自分の顔を触る野分先輩。
勿論、嘘である。
しかし、完全には嘘ではない。
寂しそうな顔はしていなかったが、どこか『悲しそう』な顔はしていたので言い換えさせてもらっただけだ。
寂しそうも悲しそうも、そんな大差ないよな!うん!
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