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【2nd】 ─ RANBU of blood ─
─ RANBU of blood ─ ※流血表現
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(1)※流血表現があります。
こちらが一息ついている間に、“飛槍”の男達はごそごそと言葉を交わしている。
シュナヴィッツもミラノもそれに気付くと、目線だけを動かし、また見交わす。敵は何か企んでいる。
彼らが使える召喚術は、彼ら自身が初召喚で繋がった召喚獣か召喚霊を呼ぶものだけ。それが何かはわからない。だが何かするつもりらしい。
その前にこちらからユニコーンを取り戻すのも手だ。
シュナヴィッツは人間の彼らを容易くモンスター相手のように殺めたいとは思っていない。気絶をさせるかユニコーンだけ取り戻せたら良いと思っている。それ故、先程取り囲まれた時もシュナヴィッツの剣先はやや緩かった。
シュナヴィッツとミラノの方針が定まる前に、彼らの相談は終わる。
“飛槍”の男達がばらばらと動き始める。
半分以上がシュナヴィッツに長剣を抜いてさわさわと駆け寄る。シュナヴィッツも抜いた長刀と、その鞘を革ベルトから外して盾とし戦い始める。
──ぬるい……先ほどの召喚術を交えていた時より、ぬるい。
シュナヴィッツは体術も交え、男達のこめかみや脇など、鎧の継ぎ目を鞘で強く打つ。男達はよろめきはするが、シュナヴィッツへの包囲網を崩さない。そして、男達は呼吸をあわせ、長剣短剣と射程の違う武器で迫る。射程を乱す作戦にきている。
ユニコーンの傍に残っていたものたちがクロスボウやらを取り出しシュナヴィッツを狙い始める。その矢をミラノが黒い魔法陣を出現させ、盾を召喚してはガードする。
敵から退きつつ動くシュナヴィッツ、彼の死角をミラノの黒い魔法陣が補い、敵から阻みそれをスムーズにさせる。シュナヴィッツの動きも早く、敵の行動も様々だが、そのどちらをもミラノは先読みしつつシュナヴィッツのフォローをする。この辺はある程度バーチャルリアリティ、インターネットゲームで培った危機予測の応用がきいた。それでも現実は違う、そういう所は、その時々である。この辺の割り切りをミラノは平気でする。シュナヴィッツも、ミラノの魔法陣を確実なものと思い込んで動いてはいない。
そしてそれは、シュナヴィッツの意識もミラノの意識も敵に集中していた時。
高い声で馬の断末魔が通路を貫いた。何度かガダンガダンと大地を激しく打つ音。
ほぼ同時、パールフェリカの悲鳴が重なる。
「いやぁあああああああああああ!!!」
薄暗い通路の向こう、大八車の上で大量の血を流すユニコーンの姿。車輪を幾筋もの黒いラインが地面に垂れる。鉄に似た血の匂いが通路を塞ぎ、唐突に場の雰囲気が不穏になる。
ユニコーンは大八車にロープでぐるぐるに束縛されたままだった。
シュナヴィッツとミラノがはっとして見た時には、もう動かなくなったそれの頭に、男達が剣を何度も付き立てている。真っ赤な血がその度飛び散り、男達に降りかかる。
「いやぁあああ!!! やめて!! やめてぇえええ!!!!」
パールフェリカは動かない足腰を必死で持ち上げようとしている。立ち上がり、よろよろと駆け出す。
「パール!」
ミラノの声も届いていない。シュナヴィッツが敵を牽制しつつ後退し、パールフェリカの腕を掴まえる。それにくらいつこうとする男達の前に、ミラノの黒い魔法陣が広がる。
魔法陣は次から次へと生まれる。そこから数本の剣が生えてくるように出現する。ここの武器庫からミラノが召喚しているのだ。そしてついに、パールフェリカが膝を付く。召喚主パールフェリカの力はミラノが魔法陣を広げる度に消耗し、彼女が再び立ち上がるだけの力を奪ったのだ。これを見越したミラノの魔法陣の大量展開だった。
ほっと一息ついてシュナヴィッツがミラノを見上げながら言う。
「ミラノ、すま──……」
だが──。
目を上げたそこには、密着する程近く、5人の男に囲まれているミラノの姿。
ミラノの黒い瞳が揺れた。
──時間が、ゆるやかに流れる。
体の正面から3本の長剣とその分の男達の手が見える。根元近くまで刺さっている。後ろからだろうか、胸に剣先が2つ、貫いて来ている。そこまで把握して、ミラノの意識は途絶えた。
──鮮血が、蓮華の如く軌跡を描いて、散った。
「ミラノォォォォォオオオオオオオ!!!」
掠れた声は喉も裂けよとばかりの絶叫。
パールフェリカの声だ。
その音が耳を貫き、顔を上げて何が起こったのかを理解した瞬間、声は溢れていた。
時間は急速に進み始める。
ミラノの髪留めは飛び、かつっと岩肌の壁に当たって地面に落ちた。黒い髪が広がり、それに弾け飛ぶ持ち主の濃い赤の液体。
剣を引き抜きもせず、男達は一斉にミラノから離れる。
「おい! 角は抜けたか!?」
「抜けた! 行くぞ!!」
男達の声を確認するような向きに体が動かない。シュナヴィッツは己の体が、自分のものと思われないような、妙な感覚にとらわれていた。
視線は縛られたように動かない。口がわななく。歯がきしむ。
ただ、見ていた。
力を失ったミラノの体がくの字に折れ、膝を付き、前に倒れ込む。だが、正面から刺さっていた剣が邪魔をした。地面についた柄に重みが乗り、つかえ、体は沈み込む。その剣先は、貫いた背中からぬるりとさらに赤く飛び出した。
そして──世界の色が、反転した。
シュナヴィッツの中で、何かがブッツリ切れた。
吼えて両手に刀を握り、低い姿勢で駆ける。
今まで聞いた事の無いような大きな音を聞いた気がした。それが自分の声だとは気付かない。
次の瞬間、どんな音も遠のいて、聞こえなくなっていた。全ての音が消えた。
体が、動いていた。
両手に長刀、短刀を握り、腰を落として地を蹴る。
敵の中心に飛び込み、右の長刀で長剣持つ男の腕を切り上げ、左手の短刀でその胸を突く。次の対象に長刀を振りかざしながら短刀を抜く。血しぶきを避けるように次の対象をすれ違いざまに斬りつけ、軸でない方の足で蹴倒す。転げたそれの首に再度長刀を振るう。
剣を振り上げて体が開いた背後の敵へ、短刀を逆手に持ち替え振り向き様に下から喉元を掻っ切る。その胴を蹴飛ばし、さらに後ろの敵へ倒す。
場所を作ってから一度体勢を整える。左手の短刀を順手に持ち直す。
クロスボウらしきものに手をかけた離れた敵を見つけた。
正面の敵に長刀を薙ぎ避けさせ、その進路に大きく体を踏み入れると、短刀をそいつの胸に突き立てる。短刀から手を離し、懐に手を突っ込んで削闘剣──いわゆる棒手裏剣──を剣先を互い違いにして3本まとめて投げた。1本がクロスボウをつがえようとしていた男の目に刺さる。
すぐに正面の男から短刀を引き抜き、痛みに呻きクロスボウを取り落とした男へ駆けた。実力差がはっきりしてきたせいか、男らがさっと道を作った。クロスボウの男を長刀で切り倒す瞬間に、背後左右から同時に斬りかかられるが、シュナヴィッツは瞬速で長刀の持つ肘を引き、軸足で回転してクロスボウの男の裏に回る。2本の長剣がクロスボウの男にトドメを刺した。
クロスボウの男がゆったりと後ろへ倒れ込んでくる前に、一息すら置かずシュナヴィッツは移動する。シュナヴィッツを後ろから狙った二人は既にターゲットを見失っている。その片方を横から一薙ぎし、短刀で喉を斬る。刺すと引き抜く時間が必要になる。また反りのある刀の最大の攻撃力は“斬り”が持っている。その事を分かった上で立ち回る。短刀は反りがあまり無いものを選んでいる為“突き”にも使う。
日頃全身を覆う鎧か部分的に覆う鎧を身にまとって戦う。しかし今は、普段着の布で出来た衣服にアクセサリがちょろちょろと付いている程度。体は異様に軽く感じられた。一撃一撃にもその分の筋力を乗せられた。装備分は無いが、十分重く迅い一撃を落とし込む。
短刀を突き、その男の長剣を奪い、殴りつけるように別の男の喉に突き立てる。また短刀を引き抜いて次の獲物を求める。
斬撃が音楽だ。
まるで舞うように刀を振り下ろし、刃を突き立てる。その動きの軌跡を赤い血が広がり斑点を描いて彩る。奏でる断末魔はシュナヴィッツの耳に届かない。
血に酔い、次第にそれを避けなくなっていた。
いつも以上に体が軽い。動く。しなやかに。
するすると肉を斬り裂く事が出来た。骨ごと断つのも容易い。刃こぼれさえ無視だ。
どこからこの力は湧き出ているのだという疑問が頭を掠め、そして、ようやっとシュナヴィッツの動きは止まった。
全てを倒して、血の海の中心に一人、シュナヴィッツは立っていた。
薄暗い通路、血と、5本の剣が貫く──……。
目が回った。
下を向く。血にまみれて握る刀が、ばしゃんばしゃんと落ちた。空いた両手を額に当てた。
──護りたかったんだ、あの人を。
(2)
ガランと音がして顔を上げた。音がしたのはミラノの居る方だ。
──当然、彼女が動いたわけではないのだが。
ミラノは膝をついた姿勢のまま、その姿が半透明になり、消えてゆくところだった。閉じきらず伏せた瞼の向こう、色の無い瞳を見て耐え切れずシュナヴィッツはその名を呟こうとした。その前に、彼女は完全に消え、残りの4本の剣も地面にガシャガシャと落ちた。
刃にべっとりと付いていた血も、壁と地面に散っていた血も、離れて落ちていた髪留めも……彼女のすべてが、消えた。
息を飲んだシュナヴィッツの耳に、パールフェリカの低い声が聞こえ始める。見ると、その四つんばいの手足の下に白い魔法陣が浮かんでいる。
シュナヴィッツは少しだけ唇を食み、強く瞼を閉じて、下を向いた。そっと肩を下げた。
「………………そう、か……“召喚獣”……だった……」
白い魔法陣が回転し移動する。魔法陣を移動させたのは、少しでも力の消耗を減らす為だろう。同じ場所に──落ちた剣の傍に、再び浮かび上がる、ミラノの姿。
元々の、グレーのスーツには剣で裂かれた穴など無く、血に染まっている事も無く、初めてこの世界で“人”としての姿をとった時と微塵も変わらぬ凛とした姿勢でそこに立っていた。どこかへ飛んでから消えた髪留めも復活している。垂れていた髪もちゃんと結い上げられている。ミラノはゆっくりと、伊達眼鏡を外して、ポケットにしまう。
「……再召喚……か」
シュナヴィッツがぽそりと呟いた。
だが、呪文の詠唱を終えたパールフェリカがどさりと前のめりに倒れたのに気付いて、すぐにそちらへ駆け寄った。支え起こす前に一番上の上着を脱ぎ捨てた。血にまみれすぎている。その上着でもましな、返り血のほとんどついていない所で手を拭った。
薄い生地の長袖にほとんど血は染みていないが、汗で湿っている。暑くも寒くもない地下通路だが、激しく動いた後なので涼しい。
近付いて見えたパールフェリカの頬には、涙の筋がいくつもあった。青い顔をしている。召喚士の力を使い尽くしたのだろう。ミラノが“人”の状態で展開した魔法陣から出てきたものを思えば、青い顔程度で済んで良かったのではないかとさえ思いはするが。
その体を起こし、壁へもたれかけさせた。
そっとパールフェリカから手を離し、片膝を立てた姿勢のまま、ほっと一息吐き出した。
「──……私、どうなりました?」
いつの間にやって来たのか、2歩の距離にミラノが居た。
涼しい目元はいつも通り、若干の戸惑いはあれど相変わらず淡々としている。
その姿を見て、しばし口がきけなかった。シュナヴィッツはこれでもかという程の溜め息を吐き出す。
「…………心臓が潰れる思いをしたのは──いや…………こんなに疲れたのは、初めてだ」
ほっとして、一気に筋肉が悲鳴を上げ始めた。どさっと腰を下ろし右膝を立て、その上に肘を置き、左膝は曲げた状態で地面に倒した。体がぎりぎりと痛い。限界まで、いや、限界を超えて動かしてしまっていたらしい。手や足を見れば切れた衣の下、痣や傷が増えている。感覚も随分と飛んでいたようだ。正面の岩壁を見つめ、シュナヴィッツはゆっくりと瞬いた。
──こんなに、激情に任せて刀を振るったのも、初めてだ。
ここに居た敵“飛槍”からは情報も得ねばならなかったのに、全員殺してしまった。ユニコーンももう死んだ……。
壁に背をもたれさせていたパールフェリカの目がふぅっと開く。ミラノに左手を伸ばした。
「ミラノ……よかった…………」
それだけ言って、がくっと首を前に倒し、左手も落とした。完全に気を失ってしまったらしい。数秒の沈黙の後、シュナヴィッツは横に立つミラノを見上げた。
「──“召喚獣”は、元々の致死量を超えるダメージを受けると強制解除されるんだ。今、パールが再召喚をして、ミラノはそこに居る」
「…………そう、ですか」
ネフィリムが、フェニックスをリヴァイアサンの攻撃の盾とし、そのダメージで消滅したものを再召喚したのと同じ事だ。ただの人であれば死んで終わっていたが、ミラノは召喚されたもの。致死量のダメージをくらっても召喚が強制解除されるだけである。再召喚をすれば、召喚士への消耗は大きいが、その姿を再び現す事が出来る。
ミラノの首が少し動いて、血の海を、見たようだ。薄暗いと言っても十分見える。
「……」
すとんとミラノがしゃがみ込んだ。右手の指先を地面に付けて支え、左手は胸元より少し下辺りを押さえている。
「? ……どうした」
「……いえ、さすがにちょっと」
くらりとする視界をミラノは地面についた指先に力を込め支える。
トロルの死体は我慢出来た。言葉もわからないし、見た目も人と違いすぎた。何より血の色が青緑色でヴァーチャルリアリティの延長のような感覚で見る事が出来た。
そう、無かった──このようにむせ返る強い臭いは──。
体の力が抜けていくのを止められない、現実への拒絶反応。突っ張っていた右肘が曲がる。ずるっと崩れ、膝を付く。
シュナヴィッツは膝立ちで近寄り、慌ててミラノの右の一の腕に手を伸ばし、掴んだ。
「ミラノ……?」
「人の遺体を見るのは、初めてなので──さすがにちょっと……」
ミラノは必死で意識を繋ぎとめようとする。血の濃い匂いと、視覚的には惨劇が広がっている。周囲を確認する為と視線を走らせてはみたが──目を剥いて動かない人の形や、千切れた手足が転がっているのだ。ごく一般庶民として平和な日本で生まれ育ったミラノには、厳しい。
シュナヴィッツは、口元に左手を当てて青い顔をしているミラノを覗き込んだ。
艶のある黒髪の間、左目の目じり、睫には涙の珠が浮いており、どこか朝霧の露を思わせ、ドキリとした。目を開いて、じっと見てしまった。
そのミラノの視線が、右腕を掴むシュナヴィッツの手を伝いこちらの顔を一度見上げ、しかし気まずそうに逸れた。
「……ごめん、なさい……」
微かな声で言って、ふっと下を向き、ミラノの体はかくりと力を失った。その重みがシュナヴィッツの腕にかかる。
「……!」
慌てて倒れ込む先に自分の体をまわして受け止め、抱きかかえた。
そして、ぽつりと呟く。
「…………………………ちょっと、驚いた……」
──なんだかとても、人らしくて……“女”らしくて……。
自分の鼓動が早くなっている事に気付いて、戸惑った。口の中が少し乾いて、自分の唇を一度舐めた。
ふと気配を感じて、シュナヴィッツは地面に腰を下ろし、ミラノを横抱きに支えなおして、待った。
ハトの大きさのティアマトが、銀色の鱗に少ない光を集めつつ、パタパタと飛んでくる。
シュナヴィッツの左腕はミラノの頭を支えている。
右腕を、座ったままの肩の高さで掲げた。腕の上をトトッと駆けながらティアマトは着地し、シュナヴィッツの肩に座った。
しばらくして、人の駆けてくる足音がする。ティアマトさえ居ればほとんどの人間など敵ではないので、シュナヴィッツはそのまま待った。
足音の主は、パールフェリカの護衛女騎士エステリオだった。
「こちらにおいででしたか」
「エステリオはパールを頼む」
シュナヴィッツは壁にもたれて眠るパールフェリカを視線で示した。エステリオはそっと傍に駆け寄り、膝を付く。
「姫様……!」
「力の使いすぎだ」
「──ミラノ様も?」
「ミラノは、血に酔ったようだ。パールを無理にも起こして“うさぎ”にさせる方がいいか悩んだが」
「そのままの方が姫様の負担は軽いものと思われます。お二人とも、意識が無いのでしたら」
「わかった。それでこの場所……“飛槍”の拠点の件だが」
「はい、地上には既に王都警備隊の一番隊カーディリュクス隊長が到着しています。この拠点内の制圧は私が外へ出る頃には完了しているでしょう。残念ながら、敵主力部隊は不在のようで。
──ネフィリム殿下も、城にお戻りです」
「兄上も……?」
「ネフィリム殿下の情報網は……私にはわかりかねますが……。
パール様とユニコーンの行方がわからなくなった事と“飛槍”が王都に残ったままだという事をご存知でらっしゃいました」
エステリオは本当に困った様子で声を絞り出している。他意は無く、わからない事が自分の力不足のように感じている、そんな雰囲気だ。
「いや、兄上は何かと謎が多いから、エステリオは気にしなくて良い」
シュナヴィッツは言ってふと、ミラノの頭を少しずらした。息苦しそうな角度に見えたから。
ネフィリムは、ひょいと姿を消したり、現れてみたり、神出鬼没でもある。反対勢力からすると、とにかく煮ても焼いても食えない、そんな第一位王位継承者らしいのだ。
「シュナヴィッツ殿下のお怪我は──」
「この程度なら問題ない。ミラノも僕が運ぶ」
「わかりました。姫様の召喚獣ですので本来は私共の役目です、力及ばず申し訳ございません。では失礼致します」
そう言うとエステリオはパールフェリカをひょいと片腕で負い、反対の手で落ちていた“うさぎのぬいぐるみ”のみーちゃんを拾い上げ脇に抱えた。女性であっさりとこの力仕事が出来る辺り、エリート中のエリートである王の近衛騎士の、その中から選り抜かれただけの事はある。
──慌てて牢を出なくてももしかしたら、助かっていたのかもしれない、とか。その方がユニコーンは生きながらえたのかもしれない、とか。色々思う事はあった。だが、それを小さく首を横に振って、払った。過ぎた事だ。
シュナヴィッツはそっとティアマトの召喚を解除し、還した。
サルア・ウェティスに詰めていた時だって、こんな短時間にこれ程色々と起こってしまう事など無かった。
ミラノが召喚されたという日から、ワイバーンと戦い、リヴァイアサンと対峙し、そしてこれだ。少々疲れた。
血生臭く、薄暗い地下通路では遠ざかるエステリオの足音が少しずつ消えていく。
ティアマトを還してしまうと、2人きりだという事に気が付いた。
──ミラノを見て、シュナヴィッツは、力のない彼女をぎゅっと抱きしめる。
左足でその背を引き寄せ、右腕で抱え寄せる。
細くて、軽くて、柔らかくて、温かい。
うなじからその肌と甘やかな髪の香りが漂う。
通路の血の臭いを押しのけて、感じられるその存在。
心はざわめきながら、同時にこれ以上無い程の安らぎが広がる。
首筋に頬を寄せて目を閉じた。
──初めて、思う。
はぁと息を吐いた。ずっとこうして、深く和やかに心が解きほぐされる事を、望んでいた気がする。
──出会えた事を、実感する。
そのまま、思い起こす。
脳裏に蘇るミラノの声。
──私はパールの召喚獣で、人では無いようですね……。
──パールは、笑っていましたよ?
「…………」
シュナヴィッツはむっと口をへの字にして、目を開く。
「もう、逃げないさ」
そう断言すると、ミラノを横抱きにしたまま立ち上がり、出口へと歩いた。
(3)
翌朝。
昨日と同様に、快晴。
王城の敷地内だが巨城エストルクから少し離れた、城下町とは反対側の小高い丘。草原が広がる。向こうへは延々と続く森を見下ろせる。朝の爽やかな風が吹きぬける。
草原の突端、その下は切り立つ崖でそこからまた森が広がる。景色を広く見渡せる場所に、太陽の日差しが輝く。
頂点に円とそれを支えるV字の棒があり下部先端から真っ直ぐ太めの棒が延びて地面に刺さっている。全体で大人の腕程の大きさだ。
その頂点の円は“神”アルティノルドを、V字の左右それぞれは召喚獣と召喚霊を示し、その下の支柱となる棒は召喚士を指していると言われている。
墓碑だ。
突き立てられた地面はこんもりと土が見えている。昨日の内にネフィリムが手配して建てさせた。
墓碑の正面で、しゃがんだままパールフェリカが見上げていた。
「──ごめんね……」
小さな声で呟く。思い出す度、何が何だかわからなくなる。だが、結論として、ユニコーンはもう居ない。名前も、付けてあげられなかった。
その後ろで、大人3人が立って見守る。シュナヴィッツ、ネフィリム、そしてミラノ。ミラノは昨日から“人”の姿のままだった。朝にはパールフェリカの眠る横、そのベッドで目覚めた。夢は、見なかった。気を失った一瞬後、そのような覚醒の仕方だった。
「パール? そろそろ戻ろう」
呼びかけるネフィリムの声は、普段よりずっと優しいものだった。
パールフェリカは首を小さく横に振った。
「……パール」
ネフィリムがふうと小さく溜め息を吐いたが、それ以上は何も言わない。パールフェリカに付き合うようだ。
ミラノが半歩下がり、ネフィリムの向こうのシュナヴィッツを見上げた。
「──チャラにしませんか?」
ミラノはスーツ姿では無く、パールフェリカの着ている服とよく似た仕立ての、こちらの国の衣装を身に纏っている。パールフェリカは白だが、ミラノは彼女の従者の着る薄い紺色を基調としたものだ。それでもそこらの貴族の娘さんが着るようなものより良いものを与えられている事は、ミラノの知るところではない。アクセサリをジャラジャラぶら下げるのは抵抗があって数える程、アクセント程度にしか付けていない。
スーツは血まみれのシュナヴィッツに抱えられて戻ってきたせいで着られるものではなくなっていて、現在洗濯してもらっている。再召喚されれば元にも戻るのだろうが、ミラノはパールフェリカの消耗を避けたいと申し出て、着替えたのだ。ちなみに“うさぎのみーちゃん”は、左耳と左手がぺったんこの上破れ、両足裏損傷わたハミ出しの為、製作者クライスラーの手で修理中だ。
「ちゃら?」
手指に包帯の増えたシュナヴィッツが体ごとミラノの方を向いた。
「ワイバーンの毒、私が恩人という事になっている件について」
「ああ、それか。だがチャラというのは……」
「昨日、助けて頂きましたから。 ちゃんと、自分の足で帰りたかったのですが……」
広場で、階段を上がった所で、地下通路で──。
「僕は当然の事をしただけなんだが……それに」
──一番大変なところで目を離して、助けられなかった。
そう言おうとするシュナヴィッツを遮るのはミラノの声。
「毒を見つけた私も、当然の事をしただけだと思っています。ですから、チャラです。私は忘れます」
ひんやりとさえするような淡々とした声を、シュナヴィッツは微笑った。
「わかった、それでいい」
ネフィリムがちらりとシュナヴィッツを見る。『おや?』と思ったのだ。
「シュナ?」
「──なんです?」
ミラノから視線を兄に移して、シュナヴィッツは答える。いつもと変わらない。
「……怪我の具合はどうなんだ? かなり無茶をしたようだが」
考えと全く別の事を平然と問うのはネフィリムのポーカーフェイス。
シュナヴィッツは一度視線を逸らした後、ネフィリムを見た。
「トエドにしばらく動くなと怒られましたね。父上も僕の部屋までいらして休めと……ウェティスにはルイスを行かせると」
骨の異常やひどい打撲などは一切無い。前線で暴れまわっているが、シュナヴィッツは王子なのである。軽いとはいえ全身裂傷と痣だらけでは、本人の“大丈夫”はさすがに周囲の許容範囲を超えてしまった、というわけである。
ネフィリムは笑った。
「それでか。ルイスがじっと私を見ていた」
ルイスはガミカの大将軍クロードの右腕とも言うべき大きな戦力である。普段は大将軍クロードとともに巨城エストルクに詰めている。先月、初めての子が出来てからは毎日早々に仕事を切り上げては家に帰っていたのだが。それがウェティスへ飛ばされたとあっては……。
ルイスもまた大将軍クロード同様、王の覚えもめでたい高潔な軍人だ。勤めとあれば喜んで行くだろうが、ほんの少し時期が悪かったようだ。
「ルイスの妻と娘には私から祝いの品を贈っておこう。少し遅い出産祝いだが、問題ないだろう」
ルイスの代わりにちゃんと家族のご機嫌をとっておいてやろうというのである。ネフィリムは表情を笑ませたまま言ったのだった。
会話が途切れ、しばらくしてパールフェリカが立ち上がった。背中を見せたまま言う。
「ネフィにいさま」
「なんだい?」
「私、色々考えた」
「へぇ? どんな?」
問うネフィリムに、パールフェリカはこちらをぱっと振り返った。
「ナイショ!」
言って笑った。だが、相手はネフィリムだ。パールフェリカを微笑み見下ろし、ネフィリムは歩み出てその頭を撫でてやる。
「いつか、“召喚獣”になって私達の前に来てくれるさ」
そのあまりに優しい声音に、パールフェリカの噛み締めた唇が揺れた。次の瞬間には、パールフェリカはネフィリムの胸にがしっと抱きついた。
声を殺してでも泣くのは、ここまで。城に戻る前に、全部、流してしまわなければならない。ネフィリムはパールフェリカをそっと抱きとめたのだった。
それを静かに見つめながら、しかしミラノの心は穏やかではない。
思い出すのは全てシュナヴィッツの声なのだが。
彼は、こういう言葉を発したことがある。
──獣使いは、この地上の魂を引き寄せ実体化させる。
──霊使いは、この地上外、異界の霊を引き寄せ、力を実体化させる。
どちらも、“魂”だの、“霊”だのと。
そして極めつけはこれだ。
──人として生活していたのだとしても、召喚されたのなら──
彼はそこで言葉を止めた。それをミラノは覚えている。
今、ネフィリムはこう言った。
──いつか、“召喚獣”になって、と。
ミラノはそっと胸元、鎖骨の下に右手の指を当てた。
少し、鼓動が早い。自分で動揺している事をはっきりと感じる。
“魂”だの“霊”だの、いつか“召喚獣”になるというユニコーンも全て、既に“死んだもの”なのだ。
鼓動は早いまま、耳元でどくどくと脈打つようにも聞こえる。
結論は、仮定に留めたい。それでも心の内で呟かずにいられない。
──私は、すでに、“死んだもの”なの?
ミラノはそっと、1人、小高い丘を降りた。
──私が、召喚獣にしろ召喚霊にしろ、いずれであったとしても……。
1人離れて、温かく、時折一筋二筋涼やかな風の混じる、爽やかすぎる春の風を浴びる。足元で緑の草がさわさわと揺れる。自然に囲まれ、ここは本当に清々しく心地よい。青空は澄み切っていて、ふと、それはシュナヴィッツの淡い蒼い瞳の色を思い出させた。彼が止めた言葉の先は……。
──“もう、死んでしまっている”……そう、なるのかしら。
──山下未来希の通帳の残高が無くなるまで、あと80日──
生活維持の為に戻らなくてはならない日まで、あと40日──
──生きて、いたならば。
こちらが一息ついている間に、“飛槍”の男達はごそごそと言葉を交わしている。
シュナヴィッツもミラノもそれに気付くと、目線だけを動かし、また見交わす。敵は何か企んでいる。
彼らが使える召喚術は、彼ら自身が初召喚で繋がった召喚獣か召喚霊を呼ぶものだけ。それが何かはわからない。だが何かするつもりらしい。
その前にこちらからユニコーンを取り戻すのも手だ。
シュナヴィッツは人間の彼らを容易くモンスター相手のように殺めたいとは思っていない。気絶をさせるかユニコーンだけ取り戻せたら良いと思っている。それ故、先程取り囲まれた時もシュナヴィッツの剣先はやや緩かった。
シュナヴィッツとミラノの方針が定まる前に、彼らの相談は終わる。
“飛槍”の男達がばらばらと動き始める。
半分以上がシュナヴィッツに長剣を抜いてさわさわと駆け寄る。シュナヴィッツも抜いた長刀と、その鞘を革ベルトから外して盾とし戦い始める。
──ぬるい……先ほどの召喚術を交えていた時より、ぬるい。
シュナヴィッツは体術も交え、男達のこめかみや脇など、鎧の継ぎ目を鞘で強く打つ。男達はよろめきはするが、シュナヴィッツへの包囲網を崩さない。そして、男達は呼吸をあわせ、長剣短剣と射程の違う武器で迫る。射程を乱す作戦にきている。
ユニコーンの傍に残っていたものたちがクロスボウやらを取り出しシュナヴィッツを狙い始める。その矢をミラノが黒い魔法陣を出現させ、盾を召喚してはガードする。
敵から退きつつ動くシュナヴィッツ、彼の死角をミラノの黒い魔法陣が補い、敵から阻みそれをスムーズにさせる。シュナヴィッツの動きも早く、敵の行動も様々だが、そのどちらをもミラノは先読みしつつシュナヴィッツのフォローをする。この辺はある程度バーチャルリアリティ、インターネットゲームで培った危機予測の応用がきいた。それでも現実は違う、そういう所は、その時々である。この辺の割り切りをミラノは平気でする。シュナヴィッツも、ミラノの魔法陣を確実なものと思い込んで動いてはいない。
そしてそれは、シュナヴィッツの意識もミラノの意識も敵に集中していた時。
高い声で馬の断末魔が通路を貫いた。何度かガダンガダンと大地を激しく打つ音。
ほぼ同時、パールフェリカの悲鳴が重なる。
「いやぁあああああああああああ!!!」
薄暗い通路の向こう、大八車の上で大量の血を流すユニコーンの姿。車輪を幾筋もの黒いラインが地面に垂れる。鉄に似た血の匂いが通路を塞ぎ、唐突に場の雰囲気が不穏になる。
ユニコーンは大八車にロープでぐるぐるに束縛されたままだった。
シュナヴィッツとミラノがはっとして見た時には、もう動かなくなったそれの頭に、男達が剣を何度も付き立てている。真っ赤な血がその度飛び散り、男達に降りかかる。
「いやぁあああ!!! やめて!! やめてぇえええ!!!!」
パールフェリカは動かない足腰を必死で持ち上げようとしている。立ち上がり、よろよろと駆け出す。
「パール!」
ミラノの声も届いていない。シュナヴィッツが敵を牽制しつつ後退し、パールフェリカの腕を掴まえる。それにくらいつこうとする男達の前に、ミラノの黒い魔法陣が広がる。
魔法陣は次から次へと生まれる。そこから数本の剣が生えてくるように出現する。ここの武器庫からミラノが召喚しているのだ。そしてついに、パールフェリカが膝を付く。召喚主パールフェリカの力はミラノが魔法陣を広げる度に消耗し、彼女が再び立ち上がるだけの力を奪ったのだ。これを見越したミラノの魔法陣の大量展開だった。
ほっと一息ついてシュナヴィッツがミラノを見上げながら言う。
「ミラノ、すま──……」
だが──。
目を上げたそこには、密着する程近く、5人の男に囲まれているミラノの姿。
ミラノの黒い瞳が揺れた。
──時間が、ゆるやかに流れる。
体の正面から3本の長剣とその分の男達の手が見える。根元近くまで刺さっている。後ろからだろうか、胸に剣先が2つ、貫いて来ている。そこまで把握して、ミラノの意識は途絶えた。
──鮮血が、蓮華の如く軌跡を描いて、散った。
「ミラノォォォォォオオオオオオオ!!!」
掠れた声は喉も裂けよとばかりの絶叫。
パールフェリカの声だ。
その音が耳を貫き、顔を上げて何が起こったのかを理解した瞬間、声は溢れていた。
時間は急速に進み始める。
ミラノの髪留めは飛び、かつっと岩肌の壁に当たって地面に落ちた。黒い髪が広がり、それに弾け飛ぶ持ち主の濃い赤の液体。
剣を引き抜きもせず、男達は一斉にミラノから離れる。
「おい! 角は抜けたか!?」
「抜けた! 行くぞ!!」
男達の声を確認するような向きに体が動かない。シュナヴィッツは己の体が、自分のものと思われないような、妙な感覚にとらわれていた。
視線は縛られたように動かない。口がわななく。歯がきしむ。
ただ、見ていた。
力を失ったミラノの体がくの字に折れ、膝を付き、前に倒れ込む。だが、正面から刺さっていた剣が邪魔をした。地面についた柄に重みが乗り、つかえ、体は沈み込む。その剣先は、貫いた背中からぬるりとさらに赤く飛び出した。
そして──世界の色が、反転した。
シュナヴィッツの中で、何かがブッツリ切れた。
吼えて両手に刀を握り、低い姿勢で駆ける。
今まで聞いた事の無いような大きな音を聞いた気がした。それが自分の声だとは気付かない。
次の瞬間、どんな音も遠のいて、聞こえなくなっていた。全ての音が消えた。
体が、動いていた。
両手に長刀、短刀を握り、腰を落として地を蹴る。
敵の中心に飛び込み、右の長刀で長剣持つ男の腕を切り上げ、左手の短刀でその胸を突く。次の対象に長刀を振りかざしながら短刀を抜く。血しぶきを避けるように次の対象をすれ違いざまに斬りつけ、軸でない方の足で蹴倒す。転げたそれの首に再度長刀を振るう。
剣を振り上げて体が開いた背後の敵へ、短刀を逆手に持ち替え振り向き様に下から喉元を掻っ切る。その胴を蹴飛ばし、さらに後ろの敵へ倒す。
場所を作ってから一度体勢を整える。左手の短刀を順手に持ち直す。
クロスボウらしきものに手をかけた離れた敵を見つけた。
正面の敵に長刀を薙ぎ避けさせ、その進路に大きく体を踏み入れると、短刀をそいつの胸に突き立てる。短刀から手を離し、懐に手を突っ込んで削闘剣──いわゆる棒手裏剣──を剣先を互い違いにして3本まとめて投げた。1本がクロスボウをつがえようとしていた男の目に刺さる。
すぐに正面の男から短刀を引き抜き、痛みに呻きクロスボウを取り落とした男へ駆けた。実力差がはっきりしてきたせいか、男らがさっと道を作った。クロスボウの男を長刀で切り倒す瞬間に、背後左右から同時に斬りかかられるが、シュナヴィッツは瞬速で長刀の持つ肘を引き、軸足で回転してクロスボウの男の裏に回る。2本の長剣がクロスボウの男にトドメを刺した。
クロスボウの男がゆったりと後ろへ倒れ込んでくる前に、一息すら置かずシュナヴィッツは移動する。シュナヴィッツを後ろから狙った二人は既にターゲットを見失っている。その片方を横から一薙ぎし、短刀で喉を斬る。刺すと引き抜く時間が必要になる。また反りのある刀の最大の攻撃力は“斬り”が持っている。その事を分かった上で立ち回る。短刀は反りがあまり無いものを選んでいる為“突き”にも使う。
日頃全身を覆う鎧か部分的に覆う鎧を身にまとって戦う。しかし今は、普段着の布で出来た衣服にアクセサリがちょろちょろと付いている程度。体は異様に軽く感じられた。一撃一撃にもその分の筋力を乗せられた。装備分は無いが、十分重く迅い一撃を落とし込む。
短刀を突き、その男の長剣を奪い、殴りつけるように別の男の喉に突き立てる。また短刀を引き抜いて次の獲物を求める。
斬撃が音楽だ。
まるで舞うように刀を振り下ろし、刃を突き立てる。その動きの軌跡を赤い血が広がり斑点を描いて彩る。奏でる断末魔はシュナヴィッツの耳に届かない。
血に酔い、次第にそれを避けなくなっていた。
いつも以上に体が軽い。動く。しなやかに。
するすると肉を斬り裂く事が出来た。骨ごと断つのも容易い。刃こぼれさえ無視だ。
どこからこの力は湧き出ているのだという疑問が頭を掠め、そして、ようやっとシュナヴィッツの動きは止まった。
全てを倒して、血の海の中心に一人、シュナヴィッツは立っていた。
薄暗い通路、血と、5本の剣が貫く──……。
目が回った。
下を向く。血にまみれて握る刀が、ばしゃんばしゃんと落ちた。空いた両手を額に当てた。
──護りたかったんだ、あの人を。
(2)
ガランと音がして顔を上げた。音がしたのはミラノの居る方だ。
──当然、彼女が動いたわけではないのだが。
ミラノは膝をついた姿勢のまま、その姿が半透明になり、消えてゆくところだった。閉じきらず伏せた瞼の向こう、色の無い瞳を見て耐え切れずシュナヴィッツはその名を呟こうとした。その前に、彼女は完全に消え、残りの4本の剣も地面にガシャガシャと落ちた。
刃にべっとりと付いていた血も、壁と地面に散っていた血も、離れて落ちていた髪留めも……彼女のすべてが、消えた。
息を飲んだシュナヴィッツの耳に、パールフェリカの低い声が聞こえ始める。見ると、その四つんばいの手足の下に白い魔法陣が浮かんでいる。
シュナヴィッツは少しだけ唇を食み、強く瞼を閉じて、下を向いた。そっと肩を下げた。
「………………そう、か……“召喚獣”……だった……」
白い魔法陣が回転し移動する。魔法陣を移動させたのは、少しでも力の消耗を減らす為だろう。同じ場所に──落ちた剣の傍に、再び浮かび上がる、ミラノの姿。
元々の、グレーのスーツには剣で裂かれた穴など無く、血に染まっている事も無く、初めてこの世界で“人”としての姿をとった時と微塵も変わらぬ凛とした姿勢でそこに立っていた。どこかへ飛んでから消えた髪留めも復活している。垂れていた髪もちゃんと結い上げられている。ミラノはゆっくりと、伊達眼鏡を外して、ポケットにしまう。
「……再召喚……か」
シュナヴィッツがぽそりと呟いた。
だが、呪文の詠唱を終えたパールフェリカがどさりと前のめりに倒れたのに気付いて、すぐにそちらへ駆け寄った。支え起こす前に一番上の上着を脱ぎ捨てた。血にまみれすぎている。その上着でもましな、返り血のほとんどついていない所で手を拭った。
薄い生地の長袖にほとんど血は染みていないが、汗で湿っている。暑くも寒くもない地下通路だが、激しく動いた後なので涼しい。
近付いて見えたパールフェリカの頬には、涙の筋がいくつもあった。青い顔をしている。召喚士の力を使い尽くしたのだろう。ミラノが“人”の状態で展開した魔法陣から出てきたものを思えば、青い顔程度で済んで良かったのではないかとさえ思いはするが。
その体を起こし、壁へもたれかけさせた。
そっとパールフェリカから手を離し、片膝を立てた姿勢のまま、ほっと一息吐き出した。
「──……私、どうなりました?」
いつの間にやって来たのか、2歩の距離にミラノが居た。
涼しい目元はいつも通り、若干の戸惑いはあれど相変わらず淡々としている。
その姿を見て、しばし口がきけなかった。シュナヴィッツはこれでもかという程の溜め息を吐き出す。
「…………心臓が潰れる思いをしたのは──いや…………こんなに疲れたのは、初めてだ」
ほっとして、一気に筋肉が悲鳴を上げ始めた。どさっと腰を下ろし右膝を立て、その上に肘を置き、左膝は曲げた状態で地面に倒した。体がぎりぎりと痛い。限界まで、いや、限界を超えて動かしてしまっていたらしい。手や足を見れば切れた衣の下、痣や傷が増えている。感覚も随分と飛んでいたようだ。正面の岩壁を見つめ、シュナヴィッツはゆっくりと瞬いた。
──こんなに、激情に任せて刀を振るったのも、初めてだ。
ここに居た敵“飛槍”からは情報も得ねばならなかったのに、全員殺してしまった。ユニコーンももう死んだ……。
壁に背をもたれさせていたパールフェリカの目がふぅっと開く。ミラノに左手を伸ばした。
「ミラノ……よかった…………」
それだけ言って、がくっと首を前に倒し、左手も落とした。完全に気を失ってしまったらしい。数秒の沈黙の後、シュナヴィッツは横に立つミラノを見上げた。
「──“召喚獣”は、元々の致死量を超えるダメージを受けると強制解除されるんだ。今、パールが再召喚をして、ミラノはそこに居る」
「…………そう、ですか」
ネフィリムが、フェニックスをリヴァイアサンの攻撃の盾とし、そのダメージで消滅したものを再召喚したのと同じ事だ。ただの人であれば死んで終わっていたが、ミラノは召喚されたもの。致死量のダメージをくらっても召喚が強制解除されるだけである。再召喚をすれば、召喚士への消耗は大きいが、その姿を再び現す事が出来る。
ミラノの首が少し動いて、血の海を、見たようだ。薄暗いと言っても十分見える。
「……」
すとんとミラノがしゃがみ込んだ。右手の指先を地面に付けて支え、左手は胸元より少し下辺りを押さえている。
「? ……どうした」
「……いえ、さすがにちょっと」
くらりとする視界をミラノは地面についた指先に力を込め支える。
トロルの死体は我慢出来た。言葉もわからないし、見た目も人と違いすぎた。何より血の色が青緑色でヴァーチャルリアリティの延長のような感覚で見る事が出来た。
そう、無かった──このようにむせ返る強い臭いは──。
体の力が抜けていくのを止められない、現実への拒絶反応。突っ張っていた右肘が曲がる。ずるっと崩れ、膝を付く。
シュナヴィッツは膝立ちで近寄り、慌ててミラノの右の一の腕に手を伸ばし、掴んだ。
「ミラノ……?」
「人の遺体を見るのは、初めてなので──さすがにちょっと……」
ミラノは必死で意識を繋ぎとめようとする。血の濃い匂いと、視覚的には惨劇が広がっている。周囲を確認する為と視線を走らせてはみたが──目を剥いて動かない人の形や、千切れた手足が転がっているのだ。ごく一般庶民として平和な日本で生まれ育ったミラノには、厳しい。
シュナヴィッツは、口元に左手を当てて青い顔をしているミラノを覗き込んだ。
艶のある黒髪の間、左目の目じり、睫には涙の珠が浮いており、どこか朝霧の露を思わせ、ドキリとした。目を開いて、じっと見てしまった。
そのミラノの視線が、右腕を掴むシュナヴィッツの手を伝いこちらの顔を一度見上げ、しかし気まずそうに逸れた。
「……ごめん、なさい……」
微かな声で言って、ふっと下を向き、ミラノの体はかくりと力を失った。その重みがシュナヴィッツの腕にかかる。
「……!」
慌てて倒れ込む先に自分の体をまわして受け止め、抱きかかえた。
そして、ぽつりと呟く。
「…………………………ちょっと、驚いた……」
──なんだかとても、人らしくて……“女”らしくて……。
自分の鼓動が早くなっている事に気付いて、戸惑った。口の中が少し乾いて、自分の唇を一度舐めた。
ふと気配を感じて、シュナヴィッツは地面に腰を下ろし、ミラノを横抱きに支えなおして、待った。
ハトの大きさのティアマトが、銀色の鱗に少ない光を集めつつ、パタパタと飛んでくる。
シュナヴィッツの左腕はミラノの頭を支えている。
右腕を、座ったままの肩の高さで掲げた。腕の上をトトッと駆けながらティアマトは着地し、シュナヴィッツの肩に座った。
しばらくして、人の駆けてくる足音がする。ティアマトさえ居ればほとんどの人間など敵ではないので、シュナヴィッツはそのまま待った。
足音の主は、パールフェリカの護衛女騎士エステリオだった。
「こちらにおいででしたか」
「エステリオはパールを頼む」
シュナヴィッツは壁にもたれて眠るパールフェリカを視線で示した。エステリオはそっと傍に駆け寄り、膝を付く。
「姫様……!」
「力の使いすぎだ」
「──ミラノ様も?」
「ミラノは、血に酔ったようだ。パールを無理にも起こして“うさぎ”にさせる方がいいか悩んだが」
「そのままの方が姫様の負担は軽いものと思われます。お二人とも、意識が無いのでしたら」
「わかった。それでこの場所……“飛槍”の拠点の件だが」
「はい、地上には既に王都警備隊の一番隊カーディリュクス隊長が到着しています。この拠点内の制圧は私が外へ出る頃には完了しているでしょう。残念ながら、敵主力部隊は不在のようで。
──ネフィリム殿下も、城にお戻りです」
「兄上も……?」
「ネフィリム殿下の情報網は……私にはわかりかねますが……。
パール様とユニコーンの行方がわからなくなった事と“飛槍”が王都に残ったままだという事をご存知でらっしゃいました」
エステリオは本当に困った様子で声を絞り出している。他意は無く、わからない事が自分の力不足のように感じている、そんな雰囲気だ。
「いや、兄上は何かと謎が多いから、エステリオは気にしなくて良い」
シュナヴィッツは言ってふと、ミラノの頭を少しずらした。息苦しそうな角度に見えたから。
ネフィリムは、ひょいと姿を消したり、現れてみたり、神出鬼没でもある。反対勢力からすると、とにかく煮ても焼いても食えない、そんな第一位王位継承者らしいのだ。
「シュナヴィッツ殿下のお怪我は──」
「この程度なら問題ない。ミラノも僕が運ぶ」
「わかりました。姫様の召喚獣ですので本来は私共の役目です、力及ばず申し訳ございません。では失礼致します」
そう言うとエステリオはパールフェリカをひょいと片腕で負い、反対の手で落ちていた“うさぎのぬいぐるみ”のみーちゃんを拾い上げ脇に抱えた。女性であっさりとこの力仕事が出来る辺り、エリート中のエリートである王の近衛騎士の、その中から選り抜かれただけの事はある。
──慌てて牢を出なくてももしかしたら、助かっていたのかもしれない、とか。その方がユニコーンは生きながらえたのかもしれない、とか。色々思う事はあった。だが、それを小さく首を横に振って、払った。過ぎた事だ。
シュナヴィッツはそっとティアマトの召喚を解除し、還した。
サルア・ウェティスに詰めていた時だって、こんな短時間にこれ程色々と起こってしまう事など無かった。
ミラノが召喚されたという日から、ワイバーンと戦い、リヴァイアサンと対峙し、そしてこれだ。少々疲れた。
血生臭く、薄暗い地下通路では遠ざかるエステリオの足音が少しずつ消えていく。
ティアマトを還してしまうと、2人きりだという事に気が付いた。
──ミラノを見て、シュナヴィッツは、力のない彼女をぎゅっと抱きしめる。
左足でその背を引き寄せ、右腕で抱え寄せる。
細くて、軽くて、柔らかくて、温かい。
うなじからその肌と甘やかな髪の香りが漂う。
通路の血の臭いを押しのけて、感じられるその存在。
心はざわめきながら、同時にこれ以上無い程の安らぎが広がる。
首筋に頬を寄せて目を閉じた。
──初めて、思う。
はぁと息を吐いた。ずっとこうして、深く和やかに心が解きほぐされる事を、望んでいた気がする。
──出会えた事を、実感する。
そのまま、思い起こす。
脳裏に蘇るミラノの声。
──私はパールの召喚獣で、人では無いようですね……。
──パールは、笑っていましたよ?
「…………」
シュナヴィッツはむっと口をへの字にして、目を開く。
「もう、逃げないさ」
そう断言すると、ミラノを横抱きにしたまま立ち上がり、出口へと歩いた。
(3)
翌朝。
昨日と同様に、快晴。
王城の敷地内だが巨城エストルクから少し離れた、城下町とは反対側の小高い丘。草原が広がる。向こうへは延々と続く森を見下ろせる。朝の爽やかな風が吹きぬける。
草原の突端、その下は切り立つ崖でそこからまた森が広がる。景色を広く見渡せる場所に、太陽の日差しが輝く。
頂点に円とそれを支えるV字の棒があり下部先端から真っ直ぐ太めの棒が延びて地面に刺さっている。全体で大人の腕程の大きさだ。
その頂点の円は“神”アルティノルドを、V字の左右それぞれは召喚獣と召喚霊を示し、その下の支柱となる棒は召喚士を指していると言われている。
墓碑だ。
突き立てられた地面はこんもりと土が見えている。昨日の内にネフィリムが手配して建てさせた。
墓碑の正面で、しゃがんだままパールフェリカが見上げていた。
「──ごめんね……」
小さな声で呟く。思い出す度、何が何だかわからなくなる。だが、結論として、ユニコーンはもう居ない。名前も、付けてあげられなかった。
その後ろで、大人3人が立って見守る。シュナヴィッツ、ネフィリム、そしてミラノ。ミラノは昨日から“人”の姿のままだった。朝にはパールフェリカの眠る横、そのベッドで目覚めた。夢は、見なかった。気を失った一瞬後、そのような覚醒の仕方だった。
「パール? そろそろ戻ろう」
呼びかけるネフィリムの声は、普段よりずっと優しいものだった。
パールフェリカは首を小さく横に振った。
「……パール」
ネフィリムがふうと小さく溜め息を吐いたが、それ以上は何も言わない。パールフェリカに付き合うようだ。
ミラノが半歩下がり、ネフィリムの向こうのシュナヴィッツを見上げた。
「──チャラにしませんか?」
ミラノはスーツ姿では無く、パールフェリカの着ている服とよく似た仕立ての、こちらの国の衣装を身に纏っている。パールフェリカは白だが、ミラノは彼女の従者の着る薄い紺色を基調としたものだ。それでもそこらの貴族の娘さんが着るようなものより良いものを与えられている事は、ミラノの知るところではない。アクセサリをジャラジャラぶら下げるのは抵抗があって数える程、アクセント程度にしか付けていない。
スーツは血まみれのシュナヴィッツに抱えられて戻ってきたせいで着られるものではなくなっていて、現在洗濯してもらっている。再召喚されれば元にも戻るのだろうが、ミラノはパールフェリカの消耗を避けたいと申し出て、着替えたのだ。ちなみに“うさぎのみーちゃん”は、左耳と左手がぺったんこの上破れ、両足裏損傷わたハミ出しの為、製作者クライスラーの手で修理中だ。
「ちゃら?」
手指に包帯の増えたシュナヴィッツが体ごとミラノの方を向いた。
「ワイバーンの毒、私が恩人という事になっている件について」
「ああ、それか。だがチャラというのは……」
「昨日、助けて頂きましたから。 ちゃんと、自分の足で帰りたかったのですが……」
広場で、階段を上がった所で、地下通路で──。
「僕は当然の事をしただけなんだが……それに」
──一番大変なところで目を離して、助けられなかった。
そう言おうとするシュナヴィッツを遮るのはミラノの声。
「毒を見つけた私も、当然の事をしただけだと思っています。ですから、チャラです。私は忘れます」
ひんやりとさえするような淡々とした声を、シュナヴィッツは微笑った。
「わかった、それでいい」
ネフィリムがちらりとシュナヴィッツを見る。『おや?』と思ったのだ。
「シュナ?」
「──なんです?」
ミラノから視線を兄に移して、シュナヴィッツは答える。いつもと変わらない。
「……怪我の具合はどうなんだ? かなり無茶をしたようだが」
考えと全く別の事を平然と問うのはネフィリムのポーカーフェイス。
シュナヴィッツは一度視線を逸らした後、ネフィリムを見た。
「トエドにしばらく動くなと怒られましたね。父上も僕の部屋までいらして休めと……ウェティスにはルイスを行かせると」
骨の異常やひどい打撲などは一切無い。前線で暴れまわっているが、シュナヴィッツは王子なのである。軽いとはいえ全身裂傷と痣だらけでは、本人の“大丈夫”はさすがに周囲の許容範囲を超えてしまった、というわけである。
ネフィリムは笑った。
「それでか。ルイスがじっと私を見ていた」
ルイスはガミカの大将軍クロードの右腕とも言うべき大きな戦力である。普段は大将軍クロードとともに巨城エストルクに詰めている。先月、初めての子が出来てからは毎日早々に仕事を切り上げては家に帰っていたのだが。それがウェティスへ飛ばされたとあっては……。
ルイスもまた大将軍クロード同様、王の覚えもめでたい高潔な軍人だ。勤めとあれば喜んで行くだろうが、ほんの少し時期が悪かったようだ。
「ルイスの妻と娘には私から祝いの品を贈っておこう。少し遅い出産祝いだが、問題ないだろう」
ルイスの代わりにちゃんと家族のご機嫌をとっておいてやろうというのである。ネフィリムは表情を笑ませたまま言ったのだった。
会話が途切れ、しばらくしてパールフェリカが立ち上がった。背中を見せたまま言う。
「ネフィにいさま」
「なんだい?」
「私、色々考えた」
「へぇ? どんな?」
問うネフィリムに、パールフェリカはこちらをぱっと振り返った。
「ナイショ!」
言って笑った。だが、相手はネフィリムだ。パールフェリカを微笑み見下ろし、ネフィリムは歩み出てその頭を撫でてやる。
「いつか、“召喚獣”になって私達の前に来てくれるさ」
そのあまりに優しい声音に、パールフェリカの噛み締めた唇が揺れた。次の瞬間には、パールフェリカはネフィリムの胸にがしっと抱きついた。
声を殺してでも泣くのは、ここまで。城に戻る前に、全部、流してしまわなければならない。ネフィリムはパールフェリカをそっと抱きとめたのだった。
それを静かに見つめながら、しかしミラノの心は穏やかではない。
思い出すのは全てシュナヴィッツの声なのだが。
彼は、こういう言葉を発したことがある。
──獣使いは、この地上の魂を引き寄せ実体化させる。
──霊使いは、この地上外、異界の霊を引き寄せ、力を実体化させる。
どちらも、“魂”だの、“霊”だのと。
そして極めつけはこれだ。
──人として生活していたのだとしても、召喚されたのなら──
彼はそこで言葉を止めた。それをミラノは覚えている。
今、ネフィリムはこう言った。
──いつか、“召喚獣”になって、と。
ミラノはそっと胸元、鎖骨の下に右手の指を当てた。
少し、鼓動が早い。自分で動揺している事をはっきりと感じる。
“魂”だの“霊”だの、いつか“召喚獣”になるというユニコーンも全て、既に“死んだもの”なのだ。
鼓動は早いまま、耳元でどくどくと脈打つようにも聞こえる。
結論は、仮定に留めたい。それでも心の内で呟かずにいられない。
──私は、すでに、“死んだもの”なの?
ミラノはそっと、1人、小高い丘を降りた。
──私が、召喚獣にしろ召喚霊にしろ、いずれであったとしても……。
1人離れて、温かく、時折一筋二筋涼やかな風の混じる、爽やかすぎる春の風を浴びる。足元で緑の草がさわさわと揺れる。自然に囲まれ、ここは本当に清々しく心地よい。青空は澄み切っていて、ふと、それはシュナヴィッツの淡い蒼い瞳の色を思い出させた。彼が止めた言葉の先は……。
──“もう、死んでしまっている”……そう、なるのかしら。
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生活維持の為に戻らなくてはならない日まで、あと40日──
──生きて、いたならば。
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