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第一章 封印の書
【1.2】別人格サイデル
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古代龍バジリスクは、オレの姿を見て驚いたように口を開けて、何かを否定するようにブンブンと首を振った。
「アリエナイ……貴方様ガ戻ッテクルナンテ、アリエナイ」
機械のような重々しい声でそう言い放つと、決心したように翼を横に大きく広げて、立ち上がって威嚇体勢を取った。それを見たオレの口から、また余裕そうな言葉が勝手に湧いてくる。
「バジルよ。遊んでやるから、全力で掛かってこい!」
ニヤリと笑いながら、自信満々の態度で、何を言いだすんですか、コイツ。ってオレ自身のことなんだけどさ。オレの中にオレならぬ何者かがいる、そんな感覚に襲われた。
こんな偉そうな人間じゃないはずなんだけどな。事態を収拾できなかったらどうするつもりなんだよ。バジリスクもなんか本気になっちゃって、血走った目で睨んでくるし。いや、オレのせいなんだけど。
「ウグッ、サイデル様ニ擬態スル偽者メ。後悔サセテヤル」
バジリスクは、地響きを起こすほど怒鳴り上げると、胸を膨らませ、透き通るほど白い色の光で高揚させた。さらに首で反動を付けながら、叫ぶかのように、真っ白な炎を放つ。
これはやばい。色からして、摂氏七千度以上の高熱と考えて間違いない。太陽の表面温度を超える灼熱だ。地球人時代の知識が、危険を告げてくる。しかし、その脅威も、たった一つの魔術で実質無効化される。
《黒体吸収(ブラックアブソープション)》
そう唱えた瞬間に、白い炎は一切外に広がることなく、熱さえ外に漏れだすことなく、一直線に掌の中に吸い込まれていく。そんなバカなといった顔で、見つめてくるバジリスク。
「ふむ。技の有効範囲に問題はないか」
そう言って自分の手をまじまじと見つめる。なんでそんなに冷静なんだよ、オレ! と叫びたい自分と、至極当然と感じるもう一人の自分のような何かが共存している。そんな気がする。
茫然とするバジリスクに向かって、まるで獲物を狙うかのように舌なめずりしながら語り掛ける。
「心配するな。殺しはしないさ」
別人格はそう言うと、足に力をためバジリスクのおなかを目掛けてダッシュする。そのまま素手で、体を貫いた。龍の内臓を破り抜けたというのに、その光景もまた、他人事のように感じられる。
オレさん、すげぇ。どうやったんだ? 感嘆した心の声が漏れるが、すぐに別人格にとってかわられる。
「やはりまだ力の封印が解けていないようだな。まぁいい」
ピクリとも動かなくなったバジリスクに歩み寄り、声をかける。
「大丈夫だ、バシル。急所は外した。お前だったらすぐに自己修復(ヒール)できるだろう」
バジリスクの巨体がゆっくり振り返る。攻撃が来るのか? と思い、臨戦態勢に入ったが、バジリスクは巨体をわなわなと震わせながら、想定外の気弱な声を出した。
「う……うわぁーん。ごめんなさい、サイデル様。僕、寂しかったんです。だって、サイデル様がいなくなってから、僕ずっと一人で」
滝のように流れる涙が焼け野原に広がり、周りを消火する。さらに畑を田んぼへと変えていく。先ほどまでの威厳のある声とはうって変わって、バジルはまるで少年のような口調になっていた。そう言えばサイデルってオレの本当の名前? 大昔の記憶はほとんど戻っていないが、言われてみると、そんな気もしてきた。
「まったく、バジルは甘えん坊だからな。お前の寿命は三万年。そのうちのたった三千年留守にしていただけではないか」
「えへっ、それもそうですね」
オレたちはこれまでの修羅場が嘘のように、水びだしのフィールドで呑気に会話をしている。その様子をまるで豆鉄砲を食らったように見つめる、精鋭隊ら五百×二の瞳があった。
ーーーー
あとがき:コメント等お気軽に頂けると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
レベル表示が欲しい等、バトルをもっと深く、逆にあっさりに等、リクエストがあればできるだけ反映いたします。
「アリエナイ……貴方様ガ戻ッテクルナンテ、アリエナイ」
機械のような重々しい声でそう言い放つと、決心したように翼を横に大きく広げて、立ち上がって威嚇体勢を取った。それを見たオレの口から、また余裕そうな言葉が勝手に湧いてくる。
「バジルよ。遊んでやるから、全力で掛かってこい!」
ニヤリと笑いながら、自信満々の態度で、何を言いだすんですか、コイツ。ってオレ自身のことなんだけどさ。オレの中にオレならぬ何者かがいる、そんな感覚に襲われた。
こんな偉そうな人間じゃないはずなんだけどな。事態を収拾できなかったらどうするつもりなんだよ。バジリスクもなんか本気になっちゃって、血走った目で睨んでくるし。いや、オレのせいなんだけど。
「ウグッ、サイデル様ニ擬態スル偽者メ。後悔サセテヤル」
バジリスクは、地響きを起こすほど怒鳴り上げると、胸を膨らませ、透き通るほど白い色の光で高揚させた。さらに首で反動を付けながら、叫ぶかのように、真っ白な炎を放つ。
これはやばい。色からして、摂氏七千度以上の高熱と考えて間違いない。太陽の表面温度を超える灼熱だ。地球人時代の知識が、危険を告げてくる。しかし、その脅威も、たった一つの魔術で実質無効化される。
《黒体吸収(ブラックアブソープション)》
そう唱えた瞬間に、白い炎は一切外に広がることなく、熱さえ外に漏れだすことなく、一直線に掌の中に吸い込まれていく。そんなバカなといった顔で、見つめてくるバジリスク。
「ふむ。技の有効範囲に問題はないか」
そう言って自分の手をまじまじと見つめる。なんでそんなに冷静なんだよ、オレ! と叫びたい自分と、至極当然と感じるもう一人の自分のような何かが共存している。そんな気がする。
茫然とするバジリスクに向かって、まるで獲物を狙うかのように舌なめずりしながら語り掛ける。
「心配するな。殺しはしないさ」
別人格はそう言うと、足に力をためバジリスクのおなかを目掛けてダッシュする。そのまま素手で、体を貫いた。龍の内臓を破り抜けたというのに、その光景もまた、他人事のように感じられる。
オレさん、すげぇ。どうやったんだ? 感嘆した心の声が漏れるが、すぐに別人格にとってかわられる。
「やはりまだ力の封印が解けていないようだな。まぁいい」
ピクリとも動かなくなったバジリスクに歩み寄り、声をかける。
「大丈夫だ、バシル。急所は外した。お前だったらすぐに自己修復(ヒール)できるだろう」
バジリスクの巨体がゆっくり振り返る。攻撃が来るのか? と思い、臨戦態勢に入ったが、バジリスクは巨体をわなわなと震わせながら、想定外の気弱な声を出した。
「う……うわぁーん。ごめんなさい、サイデル様。僕、寂しかったんです。だって、サイデル様がいなくなってから、僕ずっと一人で」
滝のように流れる涙が焼け野原に広がり、周りを消火する。さらに畑を田んぼへと変えていく。先ほどまでの威厳のある声とはうって変わって、バジルはまるで少年のような口調になっていた。そう言えばサイデルってオレの本当の名前? 大昔の記憶はほとんど戻っていないが、言われてみると、そんな気もしてきた。
「まったく、バジルは甘えん坊だからな。お前の寿命は三万年。そのうちのたった三千年留守にしていただけではないか」
「えへっ、それもそうですね」
オレたちはこれまでの修羅場が嘘のように、水びだしのフィールドで呑気に会話をしている。その様子をまるで豆鉄砲を食らったように見つめる、精鋭隊ら五百×二の瞳があった。
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あとがき:コメント等お気軽に頂けると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
レベル表示が欲しい等、バトルをもっと深く、逆にあっさりに等、リクエストがあればできるだけ反映いたします。
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この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
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本当に、ありがとうございます。
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