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第三章 美少女学園一年目 芽吹き根付く乙女心
【第14話】 再教育(14)つばさ
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(5)末舛つばさサイド
情事を終えたつばさは、メスの顔をして、可愛らしく小さな寝息を立てている。
豊満な女体を持ったスクール水着の少女を、明人は感慨深く見つめていた。
これでペニスを切り落として、造膣手術を行えば、だれも彼女を男とは疑わないだろう。
(初めて見た時から可愛らしい坊主だと思っていたが、母親に似て、ますますいい女になってきたな。ここまで精神が女性化してしまえば、もう元には戻れない。もっとも、女性ホルモンのおかげで股間の大きな一物以外、完全に女体化しきっているから、どっちみち取り返しは付かんがな。くくくっ)
明人はつばさの髪を優しく撫でる。
「そうだ。あの時もこんな熱い夏の日だったな。確かまだ、翔って名前だったか」
そのうなじを見ながら、十何年前、生意気な少年だったころの彼女の姿を思い出していた。
ーーーー
『お昼のニュースです。昨日午後三時ごろ、疾風市浪速町の岡村翔くん、三歳が行方不明になりました』
ラジオニュースを聞き流しながら、明人は新しい診療室で足を組んだまま大あくびをした。
駆け出しの精神科医の自分には、行方不明者なんて関係ない世界だ。
『翔くんは人気アイドル岡村隆司さんと、人気女優、一条香織さんの息子で、自宅近くの公園で遊んでいたところを、何者かに連れ去られたということです。警察は、現場近くで目撃された不審な二人組が何らかの事情を知っているものとみて……』
(ブチッ)
うざったいとばかりに、明人はラジオを電源から引き抜いた。
暑苦しい日に、暗いニュースだ。
忙しかったわけではない。陰鬱なニュースを聞いていると気分が晴れなかっただけだ。
それだけ明人は切羽詰まっていた。基本的にはお金の問題だ。
開業資金の回収はめどが立たないし、こうしているうちにも預金はどんどん減っていく。
気晴らしにラジオでもと思ったが、うつな気分になるだけで逆効果だった。
「脳波専門クリニック」を開業して早二年。
当初は物珍しさに数人の客が来たものの、数か月で冷やかしの客すら来なくなった。
今日も閑古鳥だ。
異常性癖の治療を目的にクリニックを開いたが、誤算続きで行き詰っていた。
表向きは精神科クリニックだが、明人は怪しげなヘッドギアを用いた治療しか行わない。
ヘッドギアの認可は、もちろん省庁から受けていないし、通る見通しもない。
いわば個人的趣味に近い。
明人は自ら開発した装置への愛着が強すぎて、奇抜な治療しか行わないので自業自得と言える。
まわりからは、ゲテモノ扱いされていた。
明人自身はヘッドギアを、統合失調症から異常性癖までなんでも治せる万能機器と自負していた。
だが、学会で発表しても、マッドサイエンティスト扱いされるのが関の山だった。
誰もまともに相手にしてくれなかった。
たった一人、得体のしれない女医を除いて。
「あら、面白いじゃない? なんならあたしが力を貸してあげてもいいわよ」
そう言って近づいてきた彼女は、早紀と名乗った。
早紀は洗脳装置の図面を見ただけで、その問題点と改善方法を指摘した。
その洞察力と知識の深さに、明人は感銘を受けた。
さらには、費用を出資してもいいと持ち掛けてきた。
「何が条件だ?」
あまりのうまい話に明人は警戒したが、早紀は質問に質問で返した。
「この機械を使えば、男の子の心を女の子に変えることも出来るんじゃないかしら。好みも、性格も、恋愛対象も」
「そうだな。物心つく前の子供だったら、確かにできないことはないが、なんでそんな質問を?」
「さて。個人的な趣味かしら」
そう言って、早紀は改修費用とその他経費を気前よくポンと置いていった。
明人は早紀に得体のしれない恐ろしさを感じた。
男の子の心を女の子に変えるだって? そんなの狂気の沙汰だ。
だが、早紀からのお金で、助かったことは確かだ。
まさか数か月後、本当に精神性転換の洗脳を自ら行うことになるとは、夢にも思っていなかった。
ーーーー
「はいっ、次の方?……ってだれも来るわけないか」
脳波クリニックなんて、繁盛するわけがない。分かってはいても、妄想するくらいはいいだろう。
「先生よろしくお願いします」
若い男性の声がした。幻聴だろう。
「先生? いらっしゃいますか?」
今度は若い女性の声だ。
(なんで、こんな割に合わない開業をしてしまったのかな。認可のない医療行為を行っていることがばれたら、刑務所行きだっていうのに。いよいよ頭までおかしくなって、幻聴まで聞こえてきやがった)
「先生、お返事がないので勝手に入らせていただきますよ」
今度は、男女の声が同時に聞こえた。
(いや、これはさすがに幻聴ではないか。一体どんなもの好きが、オレのクリニックに来たんだろう)
「……お入りください」
明人は慣れていない営業スマイルを浮かべた。自分でも、接客は下手だと思う。
「すいません。先生、こちら脳波クリニックでよろしかったですか?」
明人が気が付くと、見たことのない若いカップルと小さな男の子が目の前にいた。
いつの間に入ってきたのだろう?
ここを洗脳装置を扱ういわくつきのクリニックと知って、やってきたのだろうか。
「そうですよ。本日はどうされました?」
「実はこの子のことなんです。こんなこと先生にしか頼めなくて」
カップルが抱きかかえていたのは、とても可愛らしい少年だった。
親子だとしたらあまりにも似ていない。親戚の子供だろうか。
明人はやんちゃそうな少年の顔を見て、なぜか憧れの女優だった一条香織を思い浮かべた。
「精神病か何かですか? 周りには言わずにこっそり治したいとか」
「いえ、この子は健康です。実は私たちはずっと子供ができなくて……、不妊治療でずっと苦しんでて」
「そういった要件は産婦人科の方が……」
「いえ、そうじゃなくて。先生にしか頼めないことなんです。だって、私たちはこの子の本当の親になりたいんですから。私たち末舛家は代々の地主でお金には困っていないのですが、どうしても可愛い子供が欲しくて、公園でこの子を見たら、つい。もちろん娘として大切に育てるつもりです」
「末舛さん。話が掴めないのですが、手短にお願いできませんか」
「申し訳ありません。気が動転していました。一言で言いますと、この子を私たちの娘になるように、洗脳してほしいんです。女の子にしてほしいんです」
「えっ? どういうことですか?」
「この子はとっても可愛らしい顔をしています。そもそも男の子に生まれてきたのが何かの間違いなんです。私たちがきちんと育てれば、必ず美少女になれるはずです。その方がこの子は幸せなはずです。適齢期になったら女性ホルモンをたっぷり与えてあげますし、性転換手術も受けさせてあげます」
「いえ、先走らないでください。そもそもそういうことは、本人の意思がないと」
さすがに、医師としての良心がとがめた。
自分も大概だが、依頼主は頭が狂っている。
どう考えてもまともじゃない。
どうやって諭そうかと考えていると、どこからともなく人影が表れた。
あの時の女医、早紀だった。
早紀は遠慮なく、会話に割って入ってきた。
「いいんじゃないかしら。お顔を見てみたけど、なかなかの逸材よ。本当の母親以上の美女になれる素質を持っているわ。あなた、ファンなんでしょ? 一条香織のこと」
「ど、どうしてそれを」
明人は動揺を隠せない。一条香織は明人にとってのアイドルであり、永遠に届かない高根の花だった。
「私の情報網を甘く見ない方がいいわよ。あたしがその気になれば、こんなクリニック簡単につぶせるの。でも私はあなたの味方だから、心配しなくていいわ。まずあなたの実力が知りたいの。無事この子の精神の女性化に成功したら、雇ってあげてもいいわ」
情事を終えたつばさは、メスの顔をして、可愛らしく小さな寝息を立てている。
豊満な女体を持ったスクール水着の少女を、明人は感慨深く見つめていた。
これでペニスを切り落として、造膣手術を行えば、だれも彼女を男とは疑わないだろう。
(初めて見た時から可愛らしい坊主だと思っていたが、母親に似て、ますますいい女になってきたな。ここまで精神が女性化してしまえば、もう元には戻れない。もっとも、女性ホルモンのおかげで股間の大きな一物以外、完全に女体化しきっているから、どっちみち取り返しは付かんがな。くくくっ)
明人はつばさの髪を優しく撫でる。
「そうだ。あの時もこんな熱い夏の日だったな。確かまだ、翔って名前だったか」
そのうなじを見ながら、十何年前、生意気な少年だったころの彼女の姿を思い出していた。
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『お昼のニュースです。昨日午後三時ごろ、疾風市浪速町の岡村翔くん、三歳が行方不明になりました』
ラジオニュースを聞き流しながら、明人は新しい診療室で足を組んだまま大あくびをした。
駆け出しの精神科医の自分には、行方不明者なんて関係ない世界だ。
『翔くんは人気アイドル岡村隆司さんと、人気女優、一条香織さんの息子で、自宅近くの公園で遊んでいたところを、何者かに連れ去られたということです。警察は、現場近くで目撃された不審な二人組が何らかの事情を知っているものとみて……』
(ブチッ)
うざったいとばかりに、明人はラジオを電源から引き抜いた。
暑苦しい日に、暗いニュースだ。
忙しかったわけではない。陰鬱なニュースを聞いていると気分が晴れなかっただけだ。
それだけ明人は切羽詰まっていた。基本的にはお金の問題だ。
開業資金の回収はめどが立たないし、こうしているうちにも預金はどんどん減っていく。
気晴らしにラジオでもと思ったが、うつな気分になるだけで逆効果だった。
「脳波専門クリニック」を開業して早二年。
当初は物珍しさに数人の客が来たものの、数か月で冷やかしの客すら来なくなった。
今日も閑古鳥だ。
異常性癖の治療を目的にクリニックを開いたが、誤算続きで行き詰っていた。
表向きは精神科クリニックだが、明人は怪しげなヘッドギアを用いた治療しか行わない。
ヘッドギアの認可は、もちろん省庁から受けていないし、通る見通しもない。
いわば個人的趣味に近い。
明人は自ら開発した装置への愛着が強すぎて、奇抜な治療しか行わないので自業自得と言える。
まわりからは、ゲテモノ扱いされていた。
明人自身はヘッドギアを、統合失調症から異常性癖までなんでも治せる万能機器と自負していた。
だが、学会で発表しても、マッドサイエンティスト扱いされるのが関の山だった。
誰もまともに相手にしてくれなかった。
たった一人、得体のしれない女医を除いて。
「あら、面白いじゃない? なんならあたしが力を貸してあげてもいいわよ」
そう言って近づいてきた彼女は、早紀と名乗った。
早紀は洗脳装置の図面を見ただけで、その問題点と改善方法を指摘した。
その洞察力と知識の深さに、明人は感銘を受けた。
さらには、費用を出資してもいいと持ち掛けてきた。
「何が条件だ?」
あまりのうまい話に明人は警戒したが、早紀は質問に質問で返した。
「この機械を使えば、男の子の心を女の子に変えることも出来るんじゃないかしら。好みも、性格も、恋愛対象も」
「そうだな。物心つく前の子供だったら、確かにできないことはないが、なんでそんな質問を?」
「さて。個人的な趣味かしら」
そう言って、早紀は改修費用とその他経費を気前よくポンと置いていった。
明人は早紀に得体のしれない恐ろしさを感じた。
男の子の心を女の子に変えるだって? そんなの狂気の沙汰だ。
だが、早紀からのお金で、助かったことは確かだ。
まさか数か月後、本当に精神性転換の洗脳を自ら行うことになるとは、夢にも思っていなかった。
ーーーー
「はいっ、次の方?……ってだれも来るわけないか」
脳波クリニックなんて、繁盛するわけがない。分かってはいても、妄想するくらいはいいだろう。
「先生よろしくお願いします」
若い男性の声がした。幻聴だろう。
「先生? いらっしゃいますか?」
今度は若い女性の声だ。
(なんで、こんな割に合わない開業をしてしまったのかな。認可のない医療行為を行っていることがばれたら、刑務所行きだっていうのに。いよいよ頭までおかしくなって、幻聴まで聞こえてきやがった)
「先生、お返事がないので勝手に入らせていただきますよ」
今度は、男女の声が同時に聞こえた。
(いや、これはさすがに幻聴ではないか。一体どんなもの好きが、オレのクリニックに来たんだろう)
「……お入りください」
明人は慣れていない営業スマイルを浮かべた。自分でも、接客は下手だと思う。
「すいません。先生、こちら脳波クリニックでよろしかったですか?」
明人が気が付くと、見たことのない若いカップルと小さな男の子が目の前にいた。
いつの間に入ってきたのだろう?
ここを洗脳装置を扱ういわくつきのクリニックと知って、やってきたのだろうか。
「そうですよ。本日はどうされました?」
「実はこの子のことなんです。こんなこと先生にしか頼めなくて」
カップルが抱きかかえていたのは、とても可愛らしい少年だった。
親子だとしたらあまりにも似ていない。親戚の子供だろうか。
明人はやんちゃそうな少年の顔を見て、なぜか憧れの女優だった一条香織を思い浮かべた。
「精神病か何かですか? 周りには言わずにこっそり治したいとか」
「いえ、この子は健康です。実は私たちはずっと子供ができなくて……、不妊治療でずっと苦しんでて」
「そういった要件は産婦人科の方が……」
「いえ、そうじゃなくて。先生にしか頼めないことなんです。だって、私たちはこの子の本当の親になりたいんですから。私たち末舛家は代々の地主でお金には困っていないのですが、どうしても可愛い子供が欲しくて、公園でこの子を見たら、つい。もちろん娘として大切に育てるつもりです」
「末舛さん。話が掴めないのですが、手短にお願いできませんか」
「申し訳ありません。気が動転していました。一言で言いますと、この子を私たちの娘になるように、洗脳してほしいんです。女の子にしてほしいんです」
「えっ? どういうことですか?」
「この子はとっても可愛らしい顔をしています。そもそも男の子に生まれてきたのが何かの間違いなんです。私たちがきちんと育てれば、必ず美少女になれるはずです。その方がこの子は幸せなはずです。適齢期になったら女性ホルモンをたっぷり与えてあげますし、性転換手術も受けさせてあげます」
「いえ、先走らないでください。そもそもそういうことは、本人の意思がないと」
さすがに、医師としての良心がとがめた。
自分も大概だが、依頼主は頭が狂っている。
どう考えてもまともじゃない。
どうやって諭そうかと考えていると、どこからともなく人影が表れた。
あの時の女医、早紀だった。
早紀は遠慮なく、会話に割って入ってきた。
「いいんじゃないかしら。お顔を見てみたけど、なかなかの逸材よ。本当の母親以上の美女になれる素質を持っているわ。あなた、ファンなんでしょ? 一条香織のこと」
「ど、どうしてそれを」
明人は動揺を隠せない。一条香織は明人にとってのアイドルであり、永遠に届かない高根の花だった。
「私の情報網を甘く見ない方がいいわよ。あたしがその気になれば、こんなクリニック簡単につぶせるの。でも私はあなたの味方だから、心配しなくていいわ。まずあなたの実力が知りたいの。無事この子の精神の女性化に成功したら、雇ってあげてもいいわ」
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