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しおりを挟む朝日が昇る時間。
せっせと掃除の支度が始まり、ほうきや熊手を持って庭に出てくる者たちがいた。
お偉い貴族の屋敷は広大だ。早く準備しなければお昼までに終わらない。
「なぁ、今日はあの妖精見かけなかった」
「うわ……お前まだ言ってるのかよ。そんなの幻だろ?ていうか本当に見たことあるのかよ」
ケラケラとバカにするように笑う茶髪の少年を、可哀想な者を見る目で赤髪の青年は見下ろした。
「はぁ……どうしたんだろう。体調を崩したのかな?」
「あ~はいはい。たかが一日見かけないくらい何だよ。ていうか、不法侵入じゃないか?だってそいつこの庭に出るんだろ?俺たち以外の部外者って言ったら……」
そんなの、吸血鬼だろ?
そう言葉を飲み込んだ少年は、馬鹿げた考えに首を振った。
吸血鬼は朝日に弱い。そんな事は誰もが知っている。
実際に陽の光に触れて焼け爛れた姿を見た事がある。だから、そんなことは有り得ない。
こうして屋敷の窓も締め切られ、分厚いカーテンをかけている。少しの隙間も許さないよう、厳しく言いつけられて。
「俺の癒しがっ!」
「でもま、本当にいるなら少し見てみたいかもな……」
「おぉ?そうだろう?!お前分かってるじゃないか!」
「っクソ!叩くんじゃねぇよ!ぶっ飛ばすぞ?!」
「悪い悪い」
くだらない雑談を交わし、せっせと手を動かすふたり。
赤髪の青年レドンは、吸血鬼の貴族の元で働き始めて約10年。今年で18になる。茶髪の少年ライタンとは、僅か1年の付き合いだが、何だかんだ馬が合う為こうして絡みに行っていた。
「それじゃ俺、この水変えてくるわ!」
「はーい、いってら~」
片手を上げ相打ちを打つライタンを軽く小突いて、レドンはスタスタと井戸場へと向かった。
その背中を見送りながら、ライタンはふと、朝の庭へ視線をやった。
(……本当に、いるのかな)
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