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第三章
③助演モンスタークレーマー賞の受賞は間違いない
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***
地下奥にあるドリンク提供のカウンター、その中にはバーテンダーが一人、背後には見るからに高級そうな酒がずらりと並んでいる。
「やあ」
先程ここで酒を貰った男がまたここに戻ってきた。
「さっきのこれ、とても飲めたもんじゃないよ。酒じゃないものが入ってるよね、一体何を入れたんだい」
「……失礼いたしました。少々キンカンを絞って入れましたが、お気に召しませんでしたか?」
「そんなんじゃないよ、わかってるんだろう?余計な薬を入れてるだろ」
店員は無表情を貫いていたが、不服に感じている事は間違いなかった。
「けして、そのような事はありません」
「じゃあ君はこれを飲めるんだね?」
客の男は間髪入れず、畳み掛けた。店員は一瞬たじろぐ。これは誰の目にも明らかだった。
「……いえ、仕事中ですからお酒は、」
「なんだ飲めないのか!やっぱり何か入れてるんだろ!」
あまりに無茶な要求だ。誰もが不当な訴えと理解できる。
しかしお得意様の注文は無下にする訳にはいかなかった。
「…………かしこまりました。その前に、代わりのご用意は」
「要らない」
「……それでは」
店員の男は突き返された酒に口を付け……そしてそのままの形で動かなくなった。
「僕の出番は必要なかったな。ヴィータ、良い演技だった」
スディが、店員のいるカウンターから顔を出した。
どうやら二人が話している間に壁に通り穴を開けたようだ。ヴィータもその穴から内部に侵入する。
「そうかな、大分無理があったと思うけど」「いいや素晴らしかったさ、助演モンスタークレーマー賞の受賞は間違いない」「どうせなら主演俳優賞がよかったなぁ……」
冗談話は早々に切り上げ、二人は店内を物色していた。
「この幻覚剤ってやつ、何かに使えるんじゃない?」
酒の中に紛れていた瓶を、ヴィータが取り上げた。
「……術の効果量を上げる効能があるのか」
「それでバーテンがすぐに固まったのか。俺の術じゃ効果が出るまで30秒くらいかかるはずだから」
「そうなのか?」
「もっと凄い術師なら凄い式が書けるのかもしれないけどさ」
「効くんなら構わないさ。それより、術用の資材は無いのか?」
「そっちは見当たらないね。彼は錬金術は使ってなかったって事かな」
「それなら仕方ない」
二人は探索を止め、酒の陳列棚に向き合う。よく見ると棚には不自然な位置にレバーがついていた。
これを動かせば、VIPルームの入り口になる設計なのだろう。
「これは動かしたら音がするから、さっきみたいに穴を開けて入ろう」
「わかった。すぐ用意するから、穴から光が入らないように何か遮れるものを探してくれないか?」
スディはそう言うと返事を待たずに穴を開ける術式を書き始めた。その用意が終われば今度は姿を隠すための式も書いた。
そうしているうちに店内を漁っていたスディが帰ってきた。
「スディ、これを被せてみるのはどうかな?」
店のどこかのカーテンを引き裂いて持ってきた。
早速棚に布をかぶせ、酒瓶を重石にして固定した。
術を発動させるほんの数秒ならば、問題なく遮蔽出来るであろう。
これで突入の準備は整った。
「透明化の術を使うぞ。はぐれないように手でも繋いでおこう」「いいね、デートみたいだ」「気持ち悪い事を言うんじゃない」
などといいながら、式を書いた紙を貼り付けた。
手を繋いだ二人は姿が見えなくなった。
「多少の物音ぐらいは吸収するようにしたが、間違っても大声なんか出すなよ?」
最後の会話を済ませ、穴の奥に続く階段を下っていった。
地下奥にあるドリンク提供のカウンター、その中にはバーテンダーが一人、背後には見るからに高級そうな酒がずらりと並んでいる。
「やあ」
先程ここで酒を貰った男がまたここに戻ってきた。
「さっきのこれ、とても飲めたもんじゃないよ。酒じゃないものが入ってるよね、一体何を入れたんだい」
「……失礼いたしました。少々キンカンを絞って入れましたが、お気に召しませんでしたか?」
「そんなんじゃないよ、わかってるんだろう?余計な薬を入れてるだろ」
店員は無表情を貫いていたが、不服に感じている事は間違いなかった。
「けして、そのような事はありません」
「じゃあ君はこれを飲めるんだね?」
客の男は間髪入れず、畳み掛けた。店員は一瞬たじろぐ。これは誰の目にも明らかだった。
「……いえ、仕事中ですからお酒は、」
「なんだ飲めないのか!やっぱり何か入れてるんだろ!」
あまりに無茶な要求だ。誰もが不当な訴えと理解できる。
しかしお得意様の注文は無下にする訳にはいかなかった。
「…………かしこまりました。その前に、代わりのご用意は」
「要らない」
「……それでは」
店員の男は突き返された酒に口を付け……そしてそのままの形で動かなくなった。
「僕の出番は必要なかったな。ヴィータ、良い演技だった」
スディが、店員のいるカウンターから顔を出した。
どうやら二人が話している間に壁に通り穴を開けたようだ。ヴィータもその穴から内部に侵入する。
「そうかな、大分無理があったと思うけど」「いいや素晴らしかったさ、助演モンスタークレーマー賞の受賞は間違いない」「どうせなら主演俳優賞がよかったなぁ……」
冗談話は早々に切り上げ、二人は店内を物色していた。
「この幻覚剤ってやつ、何かに使えるんじゃない?」
酒の中に紛れていた瓶を、ヴィータが取り上げた。
「……術の効果量を上げる効能があるのか」
「それでバーテンがすぐに固まったのか。俺の術じゃ効果が出るまで30秒くらいかかるはずだから」
「そうなのか?」
「もっと凄い術師なら凄い式が書けるのかもしれないけどさ」
「効くんなら構わないさ。それより、術用の資材は無いのか?」
「そっちは見当たらないね。彼は錬金術は使ってなかったって事かな」
「それなら仕方ない」
二人は探索を止め、酒の陳列棚に向き合う。よく見ると棚には不自然な位置にレバーがついていた。
これを動かせば、VIPルームの入り口になる設計なのだろう。
「これは動かしたら音がするから、さっきみたいに穴を開けて入ろう」
「わかった。すぐ用意するから、穴から光が入らないように何か遮れるものを探してくれないか?」
スディはそう言うと返事を待たずに穴を開ける術式を書き始めた。その用意が終われば今度は姿を隠すための式も書いた。
そうしているうちに店内を漁っていたスディが帰ってきた。
「スディ、これを被せてみるのはどうかな?」
店のどこかのカーテンを引き裂いて持ってきた。
早速棚に布をかぶせ、酒瓶を重石にして固定した。
術を発動させるほんの数秒ならば、問題なく遮蔽出来るであろう。
これで突入の準備は整った。
「透明化の術を使うぞ。はぐれないように手でも繋いでおこう」「いいね、デートみたいだ」「気持ち悪い事を言うんじゃない」
などといいながら、式を書いた紙を貼り付けた。
手を繋いだ二人は姿が見えなくなった。
「多少の物音ぐらいは吸収するようにしたが、間違っても大声なんか出すなよ?」
最後の会話を済ませ、穴の奥に続く階段を下っていった。
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