街の闇掃除は錬銀術師たちにおまかせあれ

クロイノ

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第三章

②"黒のロイヤルストレートフラッシュをくれるかな?"

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階段で地下に降りると、そこにも広いダンスフロアが広がっていた。
「うわ、まだ人いるんだ」
「まだだよ、VIPルームはもういっこ下」
そういってヴィータはフロアの奥を指差す。その先に下へ向かう階段があるようだ。

「まさかこれを突っ切るのか?階段を繋げてくれれば早かったのに」
「仕方ないよ、隠さなきゃVIPルームじゃないからね」
「わざわざ部屋を隠す意味がわからない」

ヴィータは「まあまあ」と言って人混みへ向かって進み始めた。スディも置いていかれないようについていく。
ついていくと、行き止まりには酒を提供するカウンターがあった。

「無いじゃないか、階段」
「まあまあ、見てなって」

そう言うと彼はカウンター奥の店員に話しかけた。
「やあ、"黒のロイヤルストレートフラッシュをくれるかな?"」

店員の男は少しだけ口角を上げ……しかしすぐにまた無表情になって返した。
「今日の分は完売です、お引き取りください」
「そうかわかった。なら代わりのものを貰おうかな。オススメはあるかい?」
「では『ミア・フレンチ』はいかがですか?」
「じゃあそれを二人分」

すると店員は酒を混ぜて、グラスに注いだ。つまりこれが『ミア・フレンチ』という名の、彼のオリジナルカクテルだ。
「どうぞ」
カクテルを両手に持って、ヴィータは戻ってきた。

「……階段はどうしたんだ」
「あのバーテンに合言葉を言うと、普段はVIPルームに通してくれるんだけどね。どうも既に使用中みたいだ」
それを聞いたスディは、それはそれは深い、大きなため息をついた。

「君のパパがその部屋を使ってるんだから、易々通してくれる訳がないだろ」
「けど、パパと俺が親子なのはあの人も知ってるんだよ?」
「だから何だ、家族になら隠し事なんてしないとでも言うのか?」
ボンクラ息子は口をもごもごさせていた。

「とりあえず、VIPルームとやらに行くにはあの店員を何とかしないといけないな。殴って気絶でもさせれば手っ取り早いだろうが、そんなことをしたら流石に客もこちらに気付くだろうし」
ヴィータは何か言いたげだったが、口を挟む度胸は失くしたようだった。

「他の客みたいに踊らせてやればいいだろうか?そういえば、こいつらはなんで僕たちに目もくれず踊っているんだ?何か術でも使ったか、でないなら……ヴィータ、何か知っているか?……おーい?」
「いいや、別に文句は」
「……何の話だ?」

「別に。ええと、客がおかしくなった理由でしょ?何したのかは知らないけど、理由があるならコレなんじゃない?」
と、持っていたカクテルのグラスを少し持ち上げた。

「確かに、それぐらいしか無いか。音楽や空間に細工があるなら、君も既に踊り出しているだろうし」
「君もね」
スディは何も返さなかった。

「これをヤツに飲ませるとして、術か薬かくらいは調べておくか」
「わざわざ調べる必要なんてあるの?」
「あの店員も関係者なら、何か対策をしているかも知れない」
「そもそも目論見が外れてる可能性だってあるだろ。ただの酒だったらどうするんだい?」
「それなら強行突破するしかないな」

「それよりもいい方法がある。飲ませさえすればいいならね」
ヴィータの真意を読み取ったスディはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「……確かにその通りだ」
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