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第一章
十九話 生理現象*
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※このお話に本番描写はありませんが、少しだけ性的な描写があります。
※このお話を読まなくても話は繋がりますので、「受けの自慰行為擬き」が地雷の方は飛ばしていただいたほうがいいかと思います。
顔を隠して視界を塞いでいても、律樹さんの視線がどこに注がれているかがわかる。
ただ単に恥ずかしいからなのか、それとも見られているからなのか、体が熱くて仕方がない。
顔を隠したからと言って何か解決するわけでも変わるわけでもないのだが、兎に角羞恥心がすごかった。穴があったら入りたい。心臓はドクドクと煩いし、全身が溶けるように熱かった。もしも俺が普通に話せたならば、きっと情けない声をこぼしていたことだろう。
羞恥で脳がパニックを起こしているのか、本来隠さなければならない場所を隠していないせいで全てが丸見えになっていることに、俺自身気がついていなかった。
律樹さんが驚いているのが手に取るようにわかる。俺だって驚いているんだ、律樹さんが驚かないはずがない。
「……ゆづき?」
「……っ!」
律樹さんが俺を呼ぶ。その声は戸惑いに満ちていて、俺はやっぱりと思った。
おさまれ、おさまれと内心何度念じてみても何も変わらない。俺が覚えている限りでにはなるが、最後にソレが反応を示したのは二年以上前のことだ。
中学生の頃、朝起きた時のあの生理現象が最後だったように思う。あの頃はどうやっておさめていたっけ。朝から処理なんてする余裕も時間もなかったから、多分そのまま元に戻ったんだと思うけれど、正直今までにないくらいの反応を示しているから戻らない気もしている。
(み……見ないで、って……!)
手で覆った顔の下、俺はそう口を動かしていた。けれども当然律樹さんに伝わるわけもなく、未だ彼の視線を感じる。
どうしよう、もしかして引かれているのだろうか。もしかしなくてもそうかもしれない。だって湯船に浸かっていたら急にアレが元気になるなんて、普通に考えたらおかしいもんな。
(……やだな……引かれたく、ないな……)
常識的に考えてお風呂で突然勃ったらほとんどの人は引くだろうが、それでも律樹さんにだけは引かれたくないし嫌われたくないなと思った。
……どうしてだろう、律樹さんに引かれた時のことを想像したら目頭が熱くなる。やだな、引かれたくないなと思っているのに、俺の思いに反して熱と硬さを保ったそれがおさまることはなかった。
「弓月……?」
顔を覆っていた手を、律樹さんが掴む。そして優しく俺の顔の前から手を退けていった。今の今まで真っ暗だった視界が突然クリアになり、目の前に律樹さんの顔が現れる。それは困っているのか、はたまた俺の醜態に対しての羞恥なのかわからない表情だったが、頬は赤く染まっているように見えた。
律樹さんの琥珀色の瞳に見つめられたところから熱が湧き起こり、顔が、全身がどんどん熱を帯びていく。あまりの熱さに頭がクラクラした。
「……かわいい」
「……?」
律樹さんの口から今にも消えそうな声がこぼれた気がするが、何を言っているかまでは聞こえなかった。今なんて言ったの、と首を傾げると、同時に律樹さんの喉仏が上下に動く。それを目で追っていると、不意に名前を呼ばれた。
「大丈夫……?」
顔を覗き込みながら赤い顔で不安そうにそう聞いてくる律樹さん。それにこくんと頷いて目を細めた。
赤く色づいた唇の合わせ目から僅かに覗く白い歯と赤い舌。蒸気した肌も相まってかそれが酷く扇情的に見え、俺の心臓は煩く鳴り響く。勃起しているせいでおかしくなっているのか、はたまた熱にやられているのか、俺は徐にそれを食べてみたいと思った。
後から思えばどうしてそういう思考回路になったのか全くわからないが、恐らく昨日のよくわからないスイッチと似たようなものだったのだろうか。
「え……ゆづき……?」
徐々に近づいていく顔。
困惑する律樹さんの声が聞こえる。
「え、あ……ちょっ……ま……っ、Kneel!」
「……?」
思わずといった風に放たれたコマンドと共に掴まれたままだった腕を押され、俺は浮かせていた腰を再び下ろす。すると触れ合いそうだった彼との距離がまた開いてしまった。
突然のコマンドのせいか、頭も体もふわふわとしている。熱くてふわふわして、なんだか気持ちがいい。
ふと律樹さんの顔を見てみれば、さっきとは比べ物にならないほどに赤い。寧ろ顔だけではなくて全身が赤く染まっているようだ。
「ほ、本当に大丈夫……?」
「……」
「……弓月?」
「……」
片方だけだけど、俺の腕を掴んでいた律樹さんの手が離れていく。名残惜しかったのか、無意識に「あ…」と口が開いた。そんな俺の反応に気がついたのか、離された律樹さんの手が俺の頬に添えられ、するりと輪郭をなぞっていく。触れた箇所に甘くぞくぞくとするような刺激が生まれ、俺は身体をぶるりと震わせた。
「熱い……頬も赤いし、目もとろんとしてる……?」
「……っ」
触れられた場所から生まれた甘い痺れが背筋を這う。
それはまるで電流のようだった。
――触りたい、触って欲しい。
そんな考えが脳を支配する。俺は熱に浮かされたようにお湯の中で主張するモノに手を添えた。
「……、ッ!」
駄目だってわかってる。ここはお風呂で、俺は今律樹さんの足の上に跨りながらお湯に浸かっているんだから、こんなことしたら駄目だって頭ではわかっているのに、そこから手が離せない。でも、かといって動かせるわけでもない、添えるのが精一杯だ。
熱い、早くこの熱をどうにかして欲しい。
俺は耐えるように背中を丸めて俯いていた顔を少しあげ、助けてと律樹さんの琥珀色の瞳を見上げた。
「……っ、く……その顔は、やばい……ッ」
律樹さんの顔がさらに赤くなっていき、綺麗な顔がほんの少し歪む。俺と同じように何かに耐えているのか眉間に皺を寄せ、歯を噛み締めていた。
律樹さんの手が俺の二の腕を掴む。大きくて骨張った薄い手のひらに心臓が跳ねる。いきり勃ったそこから離せなかった手が簡単に離れていく。それと同時に掴まれた腕を強く引かれ、俺の身体は律樹さんの胸へと倒れ込んだ。
「落ち着け、っ……はぁ……落ち着け……」
耳に彼の熱い吐息が掛かる。俺に言い聞かせているのか、それとも自分自身に言い聞かせているのかはわからない。
すん、と息を吸うとシャンプーの匂いに混じって、律樹さんの優しい匂いがする。濡れた素肌同士がぴたりとくっついた所からまた新たな熱が生まれていくが、心臓が激しくなるだけだったさっきまでとは違い、僅かにではあったが落ち着きを取り戻していくようだった。
「……大丈夫、落ち着け……」
「……」
「大丈夫、これはただの生理現象……生理現象、だから」
「……っ」
俺を抱きしめる腕に力が込もる。合わさった肌から伝わる速くて大きい振動が、律樹さんの鼓動の音だと気づいた時、思わず笑みが溢れた。俺だけじゃなかったんだと安心したのかもしれない。
(なにこれ……こんなの、俺……しらない……)
強く抱きしめられているせいで互いの腹部に熱い塊が押し付けられている。苦しくて痛いのもあるが、律樹さんと俺の鼓動で身体が揺れるたびに擦れて少し気持ちがいい。
「……っ、……ッ!」
擦れるたびに身体が小刻みに揺れる。
全身が燃えるように熱くて、頭がふわふわとして、もう何も考えられなかった。
「……く、っ……まっ……動かないで、っ」
「っ、……!」
確かにこれは生理現象だ。
自分の力ではどうすることもできない、ただの生理現象のはずだった。
でもこれは何かが違う気がした。今まで朝勃ち以外のものを経験したことがないからはっきりとは言えないけれど、こんなにも熱くなったことはなかったように思う。それにどうして眠った後でもないのに勃ったのかもわからない。どんどんと増していく熱に、息が上がる。もう頭も身体も熱くて、どうにかなりそうだった。
「ちょっ、本当に……まっ……ゆづ、ッ」
「っ、――――……ッ!」
律樹さんが俺を抱きしめながら身体を起き上がらせた時、俺たちの間に挟まっていた俺のモノがぐちゅりと音を立てて強く擦れた。その瞬間、力の入った身体がびくびくっと大きく震え、お腹の辺りに熱が広がっていくと同時に俺の頭は真っ白になっていく。
「あ……ごめ……?」
「……っ」
困惑したような声が頭上から降ってくる。息が上がる。こんなに必死に呼吸しているというのに、酸素がうまく取り込めていないのか頭がぼんやりとしていった。
「……弓月?」
全身が溶けてしまいそうなほど熱いのに、むず痒いような寒気のようなものを感じて身体がぶるりと震えた。ふわふわとしているような、そんな感覚が全身を包み込んでいく。
「……っ、弓月?!」
律樹さんの慌てた声が聞こえる。
俺を呼ぶ律樹さんの声に反応する間もなく、俺の視界は真っ暗になった。
※このお話を読まなくても話は繋がりますので、「受けの自慰行為擬き」が地雷の方は飛ばしていただいたほうがいいかと思います。
顔を隠して視界を塞いでいても、律樹さんの視線がどこに注がれているかがわかる。
ただ単に恥ずかしいからなのか、それとも見られているからなのか、体が熱くて仕方がない。
顔を隠したからと言って何か解決するわけでも変わるわけでもないのだが、兎に角羞恥心がすごかった。穴があったら入りたい。心臓はドクドクと煩いし、全身が溶けるように熱かった。もしも俺が普通に話せたならば、きっと情けない声をこぼしていたことだろう。
羞恥で脳がパニックを起こしているのか、本来隠さなければならない場所を隠していないせいで全てが丸見えになっていることに、俺自身気がついていなかった。
律樹さんが驚いているのが手に取るようにわかる。俺だって驚いているんだ、律樹さんが驚かないはずがない。
「……ゆづき?」
「……っ!」
律樹さんが俺を呼ぶ。その声は戸惑いに満ちていて、俺はやっぱりと思った。
おさまれ、おさまれと内心何度念じてみても何も変わらない。俺が覚えている限りでにはなるが、最後にソレが反応を示したのは二年以上前のことだ。
中学生の頃、朝起きた時のあの生理現象が最後だったように思う。あの頃はどうやっておさめていたっけ。朝から処理なんてする余裕も時間もなかったから、多分そのまま元に戻ったんだと思うけれど、正直今までにないくらいの反応を示しているから戻らない気もしている。
(み……見ないで、って……!)
手で覆った顔の下、俺はそう口を動かしていた。けれども当然律樹さんに伝わるわけもなく、未だ彼の視線を感じる。
どうしよう、もしかして引かれているのだろうか。もしかしなくてもそうかもしれない。だって湯船に浸かっていたら急にアレが元気になるなんて、普通に考えたらおかしいもんな。
(……やだな……引かれたく、ないな……)
常識的に考えてお風呂で突然勃ったらほとんどの人は引くだろうが、それでも律樹さんにだけは引かれたくないし嫌われたくないなと思った。
……どうしてだろう、律樹さんに引かれた時のことを想像したら目頭が熱くなる。やだな、引かれたくないなと思っているのに、俺の思いに反して熱と硬さを保ったそれがおさまることはなかった。
「弓月……?」
顔を覆っていた手を、律樹さんが掴む。そして優しく俺の顔の前から手を退けていった。今の今まで真っ暗だった視界が突然クリアになり、目の前に律樹さんの顔が現れる。それは困っているのか、はたまた俺の醜態に対しての羞恥なのかわからない表情だったが、頬は赤く染まっているように見えた。
律樹さんの琥珀色の瞳に見つめられたところから熱が湧き起こり、顔が、全身がどんどん熱を帯びていく。あまりの熱さに頭がクラクラした。
「……かわいい」
「……?」
律樹さんの口から今にも消えそうな声がこぼれた気がするが、何を言っているかまでは聞こえなかった。今なんて言ったの、と首を傾げると、同時に律樹さんの喉仏が上下に動く。それを目で追っていると、不意に名前を呼ばれた。
「大丈夫……?」
顔を覗き込みながら赤い顔で不安そうにそう聞いてくる律樹さん。それにこくんと頷いて目を細めた。
赤く色づいた唇の合わせ目から僅かに覗く白い歯と赤い舌。蒸気した肌も相まってかそれが酷く扇情的に見え、俺の心臓は煩く鳴り響く。勃起しているせいでおかしくなっているのか、はたまた熱にやられているのか、俺は徐にそれを食べてみたいと思った。
後から思えばどうしてそういう思考回路になったのか全くわからないが、恐らく昨日のよくわからないスイッチと似たようなものだったのだろうか。
「え……ゆづき……?」
徐々に近づいていく顔。
困惑する律樹さんの声が聞こえる。
「え、あ……ちょっ……ま……っ、Kneel!」
「……?」
思わずといった風に放たれたコマンドと共に掴まれたままだった腕を押され、俺は浮かせていた腰を再び下ろす。すると触れ合いそうだった彼との距離がまた開いてしまった。
突然のコマンドのせいか、頭も体もふわふわとしている。熱くてふわふわして、なんだか気持ちがいい。
ふと律樹さんの顔を見てみれば、さっきとは比べ物にならないほどに赤い。寧ろ顔だけではなくて全身が赤く染まっているようだ。
「ほ、本当に大丈夫……?」
「……」
「……弓月?」
「……」
片方だけだけど、俺の腕を掴んでいた律樹さんの手が離れていく。名残惜しかったのか、無意識に「あ…」と口が開いた。そんな俺の反応に気がついたのか、離された律樹さんの手が俺の頬に添えられ、するりと輪郭をなぞっていく。触れた箇所に甘くぞくぞくとするような刺激が生まれ、俺は身体をぶるりと震わせた。
「熱い……頬も赤いし、目もとろんとしてる……?」
「……っ」
触れられた場所から生まれた甘い痺れが背筋を這う。
それはまるで電流のようだった。
――触りたい、触って欲しい。
そんな考えが脳を支配する。俺は熱に浮かされたようにお湯の中で主張するモノに手を添えた。
「……、ッ!」
駄目だってわかってる。ここはお風呂で、俺は今律樹さんの足の上に跨りながらお湯に浸かっているんだから、こんなことしたら駄目だって頭ではわかっているのに、そこから手が離せない。でも、かといって動かせるわけでもない、添えるのが精一杯だ。
熱い、早くこの熱をどうにかして欲しい。
俺は耐えるように背中を丸めて俯いていた顔を少しあげ、助けてと律樹さんの琥珀色の瞳を見上げた。
「……っ、く……その顔は、やばい……ッ」
律樹さんの顔がさらに赤くなっていき、綺麗な顔がほんの少し歪む。俺と同じように何かに耐えているのか眉間に皺を寄せ、歯を噛み締めていた。
律樹さんの手が俺の二の腕を掴む。大きくて骨張った薄い手のひらに心臓が跳ねる。いきり勃ったそこから離せなかった手が簡単に離れていく。それと同時に掴まれた腕を強く引かれ、俺の身体は律樹さんの胸へと倒れ込んだ。
「落ち着け、っ……はぁ……落ち着け……」
耳に彼の熱い吐息が掛かる。俺に言い聞かせているのか、それとも自分自身に言い聞かせているのかはわからない。
すん、と息を吸うとシャンプーの匂いに混じって、律樹さんの優しい匂いがする。濡れた素肌同士がぴたりとくっついた所からまた新たな熱が生まれていくが、心臓が激しくなるだけだったさっきまでとは違い、僅かにではあったが落ち着きを取り戻していくようだった。
「……大丈夫、落ち着け……」
「……」
「大丈夫、これはただの生理現象……生理現象、だから」
「……っ」
俺を抱きしめる腕に力が込もる。合わさった肌から伝わる速くて大きい振動が、律樹さんの鼓動の音だと気づいた時、思わず笑みが溢れた。俺だけじゃなかったんだと安心したのかもしれない。
(なにこれ……こんなの、俺……しらない……)
強く抱きしめられているせいで互いの腹部に熱い塊が押し付けられている。苦しくて痛いのもあるが、律樹さんと俺の鼓動で身体が揺れるたびに擦れて少し気持ちがいい。
「……っ、……ッ!」
擦れるたびに身体が小刻みに揺れる。
全身が燃えるように熱くて、頭がふわふわとして、もう何も考えられなかった。
「……く、っ……まっ……動かないで、っ」
「っ、……!」
確かにこれは生理現象だ。
自分の力ではどうすることもできない、ただの生理現象のはずだった。
でもこれは何かが違う気がした。今まで朝勃ち以外のものを経験したことがないからはっきりとは言えないけれど、こんなにも熱くなったことはなかったように思う。それにどうして眠った後でもないのに勃ったのかもわからない。どんどんと増していく熱に、息が上がる。もう頭も身体も熱くて、どうにかなりそうだった。
「ちょっ、本当に……まっ……ゆづ、ッ」
「っ、――――……ッ!」
律樹さんが俺を抱きしめながら身体を起き上がらせた時、俺たちの間に挟まっていた俺のモノがぐちゅりと音を立てて強く擦れた。その瞬間、力の入った身体がびくびくっと大きく震え、お腹の辺りに熱が広がっていくと同時に俺の頭は真っ白になっていく。
「あ……ごめ……?」
「……っ」
困惑したような声が頭上から降ってくる。息が上がる。こんなに必死に呼吸しているというのに、酸素がうまく取り込めていないのか頭がぼんやりとしていった。
「……弓月?」
全身が溶けてしまいそうなほど熱いのに、むず痒いような寒気のようなものを感じて身体がぶるりと震えた。ふわふわとしているような、そんな感覚が全身を包み込んでいく。
「……っ、弓月?!」
律樹さんの慌てた声が聞こえる。
俺を呼ぶ律樹さんの声に反応する間もなく、俺の視界は真っ暗になった。
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