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IFストーリー(本編9話以降分岐)
IF 3話*
しおりを挟む※この『IFストーリー』は作者が考えていた複数ある没になったプロットの一つを文章化した『もしものお話』です。
※本編10話の途中でクロヴィスに出会わなかった世界線です。本編9話まで読み進めた後に読む事をおすすめします。
意識が、飛んでいた。
足を持ち上げられ、後孔を貫かれた状態でゆさゆさと揺さぶられている。今俺の中に入っているのは、そうだオードリックとかいう枢機卿だ。
薄らと目を開けるとぼんやりとその姿が浮かび上がり、喉がヒクつく。これは恐怖ではない、嫌悪だ。ゆさゆさパンパンと打ちつけられ揺らされる自分に対しても嫌悪が湧く。自分のものではない低い喘ぎが聞こえた瞬間、胎内で質量が増し、弾けた。熱いものが中に注がれる感覚にピクピクと体が震える。
「はあっ……はぁ、っ」
二人分の荒い息が部屋にこだまする。ずちゅりと音を立てて精液と腸液に塗れた陰茎が抜かれ、無意識に力んでいた身体からふっと力が抜けた。
視界もだが、頭がぼんやりとしている。どれくらいこの行為をしていたかももう覚えていないが、枢機卿が手を出してこないことを考えると恐らくはもうすぐ夜明けなのだろう。
水音が微かに聞こえる。どうやらシャワーを浴びているようだ。あいつが帰ったら俺もシャワーを浴びようか、なんて考えている間にまた意識が飛んでいたようで、次に目を開けた時には身体は清められていた。
自分の精液や透明な液体でべとべとしていた体はさらさらとして、情事の欠片もない。そのことにホッとしていると、ドミニクが食事を持ってやって来た。
「あらー、かなり手酷くされたみたいだね」
そう言いながら渡された治癒用と浄化用の二種類を混ぜた特殊なポーションをぐびっと一気に煽ると、喉が焼けるように熱くなった。しかしすぐに熱さと共に全身の痛みが引いていく。
「今……何時?」
「もうすぐお昼だよ。食欲はないだろうけど、少しだけでも一緒に食べようよ」
情事後の気怠い体を引き摺るように椅子に腰掛けると、いつも給仕をしてくれる女性が俺の前にスープとパンを並べてくれた。相変わらず味覚は戻らないが、それでもスープだけは何とか飲むことが出来るようになった。
俺は湯気がたつ熱々のスープの入ったカップを手に取り、恐る恐る口をつける。辛うじて塩味はわかるがやはり味はわからない。慣れたとはいえ、塩味のある白湯を飲んでいるような感覚に少し顔を顰めた。飲み終えてから白い錠剤を水で流し込み、はあと息を吐く。
向かいの椅子に腰掛けたドミニクが今日の予定を告げていくが、まあいつも通りの内容だった。夕方までは、大聖堂に来た治癒に関する依頼を俺を含めた聖女五人で分担し、夜は今日のように奉仕をする。
そんな日が五日続いたある日、いつものように気怠い体に鞭打ってシャワーを浴びていた時、ドミニクが部屋に転がり込んできた。シャワーを終え、身支度を整えた俺が部屋に戻ると、慌てた様子のドミニクが俺の両肩をがっしりと掴んできた。
「なっ……なに?」
「聖女の一人が、亡くなった」
「……は?」
その言葉に俺の動きが止まる。
聖女が死んだ、その言葉は言葉以上の重みを持って俺に重くのしかかる。聖女の死、それは俺たちだけでなく大聖堂、そして国にとっても衝撃なことだ。王都から随分と離れた村で暮らしていた俺も、聖女の代替わりに関してだけはすぐに耳に入ったくらいだ。それだけ聖女という存在はこの国にとって重要なのだろう。
――俺にはよくわからないが。
ただ聖女が一人少なくなったということは残りの聖女の負担が大きくなるということと同義だ。況してや最近は聖女に対する依頼が多い。いくら魔力が多い俺でも最近の量が続けば危うい気がする。
「新しい聖女は……」
「早くてもひと月はかかると思う。今国境付近の村が他国の兵に襲われていてね……聖女探しにあまり人員を割けないんだ」
その割に毎晩大聖堂の奴らが俺を抱くのはどうしてなんだろうなと言葉が出そうになるが、グッと堪える。いやまあ、戦力を高めるという意味では効率的なのかもしれない。
「地下迷宮の探索に行っている聖女もいるから、三人で依頼をこなすことになるけど……魔力量はどうだい?」
「……あまり余裕はないな」
「そうだよね……ただでさえ元々の魔力量が多いラウルくんに負担を掛けているのにこれ以上は」
「でも他の聖女も危ういんだろ?」
正直、今いる聖女の中で魔力量が多いのは、俺ともう一人、第二皇子の地下迷宮探索に同行している聖女だけだとドミニクは言っていた。その中でも俺は群を抜いて多いらしい。だが毎日毎日治癒魔法を多く使っているせいで回復も追いつかず、日に日に最大魔力量は減っていっている。
それでも他の聖女よりもましだと言うことで多く請け負っている。これ以上魔力がなくなって亡くなる聖女を減らしたいという気持ちが強いかもしれない。自己犠牲?……そんなの今更だ。
傷ついた兵士や騎士達を多く治し、ポーションを大量に生成する。無理矢理身体を暴かれるよりも全然ましだ。
自嘲気味に聞けば、ドミニクは苦虫を噛み潰したような表情で言葉を詰まらせた。
「ほら……俺しか出来るやつがいないんだろ?」
「っ……でも!君の命も……!」
「なら……奉仕をなくしてくれ」
「……っ!」
ほら、出来ないんだろ?
当たり前だ。だってこれから国同士の戦争になるかもしれないのに、光属性と闇属性の魔力の底上げ手段を削ることは出来ない。俺はわかっていて今言っている。……ずるいよな。
ドミニクはぐっと下唇を噛み締めて俯いた。握りしめられた拳は白く色が変わっている。
リアムは当分ここには来れないらしいと聞いてから、俺は少し投げやりになっていた。第三皇子であっても直系皇族なのだからそれなりに忙しく動いているのだろう。
我儘なのはわかってる。無理なこともわかってる。
それでも俺は、リアムに会いたかった。
けれどそれを言っても叶えてもらえないだろう。それならばせめて奉仕を減らしてくれと言うと、口元に手を当てて何かを考えるような仕草をした後、彼は口を開いた。
「なしには出来ないと思うけど、何とか減らしてもらえるようには交渉してみるよ。ラウルくんの願いをどうにかするのも、俺の仕事だからね」
「……え?」
「ん?……ああ、そりゃこれだけ頑張ってくれてるんだから少しは、ね?」
予想だにしなかった返答に驚いてドミニクを見ると、彼は苦笑いを浮かべながら「少しでも君の努力に報いないとバチが当たるよ」と言った。そんな彼に、俺は無意識に「あんた、なんか変わったよな」呟いていた。それにきょとんとするドミニク。
「前は、胡散臭い笑顔を撒き散らしてるだけの胡散臭い奴だと思ってたけど……最近は人間味があるというか?」
「……それは多分、ラウルくんのお陰だよ」
俺は最近感じていたことをベッドに腰掛けながら言うと、ドミニクは目をぱちくりと瞬かせながら俺を見て、ふっと眦を下げて笑った。
「ああそうだ、言い忘れてたんだけど今日は全員役目は無しだよ。夜に一度迎えにくるから……それまではゆっくり休んで」
そう言い残して、ドミニクは部屋を出ていった。
残された俺は突然出来た休みにどうすればいいのかわからず、ベッドに寝転んで天井を見上げたのだった。
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