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IFストーリー(本編9話以降分岐)
IF 9話*
しおりを挟む※この『IFストーリー』は作者が考えていた複数ある没になったプロットの一つを文章化した『もしものお話』です。
※本編10話の途中でクロヴィスに出会わなかった世界線です。本編9話まで読み進めた後に読む事をおすすめします。
リアムがむくりと起き上がり、床で呻き声を上げながら伸びている男のローブを引っ張って扉付近まで引きずっていき、そして部屋の外へと思い切り放り投げた。まるで手についた埃でも払うかのようにパンパンと手のひらをはたき合わせて扉の施錠をしっかりとした後、リアムは再び俺に覆い被さるように俺を抱きしめた。
首についている金属の首輪を避けながら首筋を念入りに見ていたリアムは、唾液のついた一部分を視界に入れた瞬間、目の色が変わった。
「これ……くそっ!」
いつもよりも乱暴な言動のリアムに驚く。もしかしてリアムも俺のフェロモンに当てられてラットを誘発しそうになっているのだろうか。その証拠に彼の息は上がり、額には玉のような汗が浮かんでいる。
「ラウル」
「……ん、リアム?」
切羽詰まったように名前を呼ばれる。体の感覚が徐々に戻ってきているのか、身体が再び疼き始めた。オメガのヒートは本当に厄介だなと内心独り言ちながら、リアムのハニーブロンドの瞳を見つめる。
「もう俺はお前を誰かにくれてやるつもりなんてない。だから……だから、俺の番になってくれ……っ」
「……番、ってなんだ?」
何かを堪えるように辛そうな表情から一転、リアムはきょとんとした。
「ラウル……もしかして、番を知らない?」
「しら、ない……」
肌がベッドに擦れる度にぴくんぴくんと跳ね、全身を小さな快感が襲ってもどかしい気分だ。頭の中がまた性欲でいっぱいになっていく。
「番は、アルファとオメガの特別な関係……繋がりのことだ。ヒート中にオメガの頸をアルファが噛むことで番になれる。それに番になればフェロモンは番にしか感じ取れなくなる」
「おれ……リアムと、番に、なりたい」
へらりと笑うと、リアムが目を見開いた。
ごくりと喉が鳴らしたあと、ハニーブロンドの瞳をこれでもかというほどに蕩けさせてふわりと笑む。
そろそろリアムも理性が怪しくなってきたのか、息遣いが荒さを増している。ただでさえアルファにとってヒート中のオメガのフェロモンはきついものがあるのに、リアムはそれに気力と意地だけで対抗しているのだ。
俺に手酷くしたくない、俺を大事にしたいのだと伝わってくる。俺はのそりと起き上がり、首筋にかかる髪を指先で避けて頸を外気に晒した。
「リアム……おれを、リアムの番にして?」
頸を見せつけながら小首を傾げる。
一瞬の沈黙が流れ、俺が不安になって頸を隠そうとした時、リアムがさらりと俺の髪に触れた。そして背後からお腹に片手を回し、もう片方の手で頸にかかる髪の毛を掻き上げ、リアムは頸に唇を寄せた。ちゅっという音の後、ざらざらとした滑りのある熱い舌が頸を舐め上げ、ひくひくと喉が鳴る。
リアムの熱い吐息が首筋に掛かり、ぞくぞくとする。唇が近づき、ゆっくりとリアムの犬歯が頸に食い込んでいく。
「っ、あ」
つぷ、と皮膚が裂け、血が首筋を伝っていく。しかしそれを気にもとめず、皮膚にリアムは歯をぐっと食い込ませた。歯形がつくように、噛み跡が消えないように、俺はリアムのものだというように深く刻まれていく。じんわりとした痛みが充足感や幸福感に変わり身体中を満たしていく感覚に、体が打ち震えた。
リアムはぺろりと傷口を舐めた後、俺の顎を掴んで後ろを振り向かせた。見えた彼の口元は赤くてらてらと鈍く光るその姿は酷く官能的で妖艶だった。唇が重なり、上唇を喰まれる。歯茎を舐められ歯列をなぞられ、舌を絡め取られた。
閉じることができず、口端からは俺の血液が混じったお互いの唾液が溢れでていた。透き通った中に僅かな赤が混じる光景に自然と笑みが溢れる。ちゅぷ…と離れた唇、その間を名残惜しそうに透明な糸が繋いでいた。
「ねぇ……身体が、熱い」
「俺もだ……もう我慢が、できそうにない」
「うん、いいよ……っ、ん」
やはり俺のフェロモンで彼もラットになっていたようだ。尋常じゃない汗、そして堪えるように噛み締められた唇が彼の限界を表していた。俺も限界だ。激しく、訳がわからなくなるくらいまで犯してほしい――いや、違うな。リアムと気持ちよくなりたい。いっぱいいっぱい気持ちよくなって、ただ一つになりたいんだ。
俺は四つん這いになって、ぐずぐずになっている後孔に指を挿れた。すぐに挿れても大丈夫だから、と挿れた指二本を少し開いてくぱあ…と後孔を開いてみせると、険しい表情の彼が聳り立った陰茎を取り出して後孔に充てる。指を抜いてベッドに頭をつけた瞬間、ずちゅんっと卑猥な水音を立てて一気に貫かれた。
「か、は……――ッ!」
目の前がちかちかする。多分イった。イったと思うけど、あまりの衝撃でわからない。背中がのけ反り、ビクビクッと痙攣している。
「ははっ……挿れた瞬間に、イったな……ッ」
「……っ、……!」
息が出来ない。はくはくと酸素を求めて口が開閉しているが、全く酸素が入ってこない。生理的な涙が眦から流れていく。
リアムが俺の腕をぐっと持ち上げて上半身を起こし、涎まみれの口を塞いだ。口を閉じられ、呼気を入れられて初めて呼吸ができた気がした。
「けほ、っ……あ、あぁっ」
「番の、証……好きだ、ラウル、っ」
「おれ、もっ……く、ああッ!」
頸の噛み跡を舐められ喰まれ、脳天を突くような快感が襲ってくる。当たり前のように子宮口を押し広げているリアムのそれをきゅうきゅうと締め付けていると、中で大きくなったのがわかった。ずちゅ、ずちゅっと抽挿を繰り返し、俺が射精すると同時にリアムも俺の中で精を吐き出した。
ヒートとラット、初めてお互いの発情期を過ごしたこの期間、俺たちは互いの発情期が終わるまでずっと抱き合い続け、気がついた時には抱き潰されていた。
発情期が明けた夜、俺の部屋にはまだリアムがいた。
帰らないのかと聞いたら、こんな状態の俺を一人には出来ないと言うのだ。今までもこんな状態になったことはあったが、その時はドミニクに全てを任せていた。しかしそれを知ったリアムが俺が起き上がれるようになるまではここにいると言ったのである。
嫉妬なのだと気がついた時には、俺は両手で顔を押さえて天を仰いだ。神様ありがとう、初めて神に感謝した気がする、と思いながら俺は幸せを噛み締めている。
「……あとラウルのそんな表情を誰にも見せたくない」
「……!」
ぼそりと呟かれた言葉に胸がキュンとする。胸がときめき過ぎて俺はこのまま死ぬんじゃないかと言うくらいなんだが、それでもリアムは追い打ちをかけるように拗ねた表情で「嫉妬してるんだよ、わかれ」と言うのだ。
――幸せだ。幸せ過ぎて不安になるくらい幸せだ。
リアムの下唇が切れていることに気がついて、俺は彼を呼んだ。キスしてと言うと、リアムは触れるだけの口付けをしてくれる。その時に俺は気付かれないように治癒魔法を使った。
聖女なんだから、これくらいはね。
そう思いながら自分の腰や足にも治癒魔法をかけていく。光が患部に集まってキラキラと輝き、少しするとぱあぁぁ…と光が霧散していった。
「……いつ見ても綺麗な魔法だな」
そう言われるとやっぱり嬉しい。治癒魔法のお陰で動けるようになったはいいが、やはり少し気怠い。それに何故か心臓が変な鼓動をしている気がする。
でもそんなことはお首にも出さず、俺はリアムとの幸せな時間を目一杯過ごしたのだった。
「また来週……はあ……いつになったら毎日ずっと一緒にいられるんだろう」
「……そうだね」
俺たちが毎日一緒にいられるようになんて夢のまた夢かもしれない。けれど、リアムはそれを諦めずに望み続けている。それは俺にとっては希望で、救いだ。
リアムが部屋を出ていくのをじっと見つめる。寂しいなんて言葉をかけたら彼が困るだろうから、またねしか言えないけど、でもそれでもまた会えるならそれでいい。
でもその約束が果たされることはなかった。
これは俺だけが幸せになった罰だったのかもしれない。
――二日後の礼拝中、俺は血を吐いて倒れた。
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