アイツはいつの間にか俺たちの中にいた。誰一人として気づいていない。俺以外は…。え?嘘だろ?変なのはオレっ?〜未来への追憶〜

もこ

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白雪姫の初体験

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「!…し、駿也っ…!!」
俺の脇に駆け寄ってきて跪いているのは…駿也だった。会場がざわついている。前の方に座っている子から「誰?アレ…?」「カッコよくない?」という声が聞こえてきた。駿也はメガネをしていない…。まともに起きている状態で素顔を見るのは初めてだ。ど、どうしてメガネを外した?あんなに嫌がっていたのに…。目を見開いて顔を凝視する…。駿也もいつになく真面目な顔をしていた。

「目を瞑ってろ。」
駿也の囁きに慌てて目を瞑る。いけない。俺は倒れてるんだ…。

 『姫、どうしたんですか?』

 『目を開けて!…あああ…初めてこの森で貴方を見てから……』

駿也の声で長いセリフが続く。ここは最大の見せ場。王子の悲嘆を最大限に引き出そうと、頑張ってセリフを多くしたんだ。

「望、ごめんな…。でもやっぱり無かったことにはしたくないんだ。」
「?」
王子のセリフに隠れて、駿也が話しかけてきた。何だ?観客から遠い方の目を少しだけ開けて駿也を見る。駿也は、少しだけ顔を歪めていた。

「どうした?」
なるべく口を動かさないように気をつけながら、駿也に話しかける。駿也は背を見せているから、観客から顔が見えない。動作で、白雪姫にキスをしているように見せかけるんだ。

「俺のこと覚えていて欲しい…。」
「?」
覚えていてって…。いや、忘れていたのは本当だけどさ。また忘れるとでも思ってるわけ?それに…何でそんなに悲しそうなの?目の端に小人たちが映る。舞台にやってきたとこだ…。

 『この亡骸を…私にください…大事に……大事に…見送ります。』

ここで周りにいた小人たちが無言で頷く。そして…キス…。何となく…目を瞑る。観客には見えないのに…。


 『ああ、姫……なんて美しいんだ……。』
 「また…絶対に会えるから…。」
録音した声と駿也の声が重なった。パサっと王子のマントが風を切った。暗くなって…駿也の顔が近づいてくる。爽やかな香り…駿也の香り。どんな制汗剤を使ってるんだろ…。

どんどん香りが近づいてきて、唇に何か柔らかいものが触れた。

「!!」

「お……」
おいっ!何をしてんだ?小声で呟こうとした言葉が奪われる。目を見開く。目の前の暗がりには、目を瞑った駿也の顔があった。苦しそうに眉間にシワを寄せている。

『やめろっ!』
声にならない声を上げる。白雪姫は倒れてるんだ。動いたらまずい。その途端に、駿也の舌が入り込んできた。

「ンン……。」
少しだけ顔を動かす。でも駿也の唇は離れなかった。レモンの香り…レモン味…。レモン味の舌が俺の口内を掻き回す。喉の奥に何度も舌を差し込まれた。く、苦しいっ!

「ンンンン…。」
ようやく唇が離された。唇と唇の間に糸を引いていたものがぷつりと切れた。駿也の目に涙が光る…。深く息をした瞬間に、俺はどちらのものかわからない唾液と一緒に、小さなレモン味の何かを飲み込んだ。

 『おいっ!姫が目を開けたぞっ!』
 『白雪姫が生き返ったっ!』
 『やった…』

次々と紡がれる小人たちのセリフを聞きながら、俺は意識が遠のくのを感じていた。

……しゅん…や…なぜ……?



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