未来も過去も

もこ

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19年前

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三階から四階へ通じる真っ白な螺旋階段を昇る。鉄骨風なのにカンカン音がしない。木でもないし、どちらかといえばプラスチック?謎の素材で出来ているが頑丈そう。

四階へ上がると縦に長い六畳ほどの白い空間に出る。向こう側には一間幅に広がる窓があり、白い空間が輝いている。手前右手が目指す部屋。手をつけると手紋に反応して扉が開く。

「…。」

今日も扉の向こうにコウイチが立っていた。相変わらず無愛想。こちらを一瞥すると奥のパソコン台へと向かう。

「おはよう。今日もよろしく。」
「ああ。」

笑顔が基本。社会人だからな。でもコウイチはどうでもよさそうに、素っ気ない。後をついていってパソコンの前に携帯を置く。前回の反省をもとに、言われる前に。

「今日は大丈夫だ。さっき調整した。」
ディスプレイに映り出された表を見ながら、コウイチが呟いた。

って、まって?
「へっ?」
この携帯、荷物と一緒に一昨日届いたんだけど。…どういうこと?俺の部屋の鍵持ってるの?いや、鍵はなかったんだ。じゃあ、何?俺の部屋って偉い人なら誰でも入れるとか…。

グルグル考えていた俺はとんでもなく変な顔をしていたらしい。こちらをちらっと見たコウイチがクスっと笑った、…気がした。

「遠隔操作できる。こっちと同期してる。」
コウイチが目の前のディスプレイを指差した。画面には俺の携帯の画面がそのまま映し出されていた。

「っていうと、俺が操作しなくてもこっからいろいろ操作できるってこと?」
「そう。」
「へー。すごいな。いきなり進歩じゃん。」
素直に感心した。俺が持たされてる昔の型の携帯にそんな機能がつけれるなんて。ネット見れないよな?スマホじゃないんだし。

そんな事を考えていた俺はコウイチの呟きを聞き逃した。
「そのための出張だ。」

「へっ?何だって?」
「別にいい。」
コウイチは立ち上がって机の引き出しからメガネケースを取り出した。

「今日は泊まりになる。」
「明日の午前中に帰ってくれば問題ない?今回の住所は、県内だけど、巌城さん、出張?」
メガネを受け取りながら喋ると、コウイチが背を向けながら呟いた。

「行けば分かる。」

それはそうだろうよ。俺は文句を言いたくなるのを飲み込んだ。

「じゃ、行ってきます。」
コウイチに背を向けて出口に向かう。今日はあちらは曇りのようだ。窓から富士山が見えない。雨が降り出す前に着けるといいな。

そんなことを考えながら出口を通った俺は、後ろで俺を見つめている視線には気づかなかった。
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