未来も過去も

もこ

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19年前

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外へ出た途端、いつもの身体の揺れを感じた。下に降りようとしたはずなのに下がない。

メガネのスイッチを入れ、バス停へ向かおうと歩きはじめると、前から来た若い男に声をかけられた。
「すみません。東進製薬という会社がこの辺りと聞いたのですが分かりますか?」
「すみません。この辺りは詳しくないので。」
「あ、そうですか。ありがとうございます。」

簡単に会話を済ませて、バス停へ歩き出した。周りの木はもう色づき始めている。空は曇っているが雨は降らなそうだ。今回はちょうど19年前の10月31日。前回から1か月かからなかった。でもこっちの世界では3年ちょっと経ってるわけか…。変な感じ。ちょっぴり肌寒い風を受けて、足を速めた。

バスに乗り込み、いつもの通り後ろの方の席を目指す。席に座ると、宛先までの行程を確認した。4つ目のバス停で降車。後は…徒歩!?
『近っ!』
あっという間に着きそうだ。今日は泊まりって言ってたけど、そんなに時間かかるか?

今日は荷物を届けるだけでなく、巌城さんが良いというまで滞在するように言われている。どうなることやら、と小さくため息をついた。

迷うことなくたどり着いたそこは平家の一軒家だった。瓦屋根に漆喰の壁。昔ながらのたたずまいで広い庭に池があり、鯉が泳いている。小さい頃一度訪れたことがある田舎の親戚の家みたいだ。懐かしい気持ちになりながら、インターフォンというより呼び鈴と言った方が良さそうな白いボタンを押した。

「はーい!だーれー?」

家の裏側から元気な声が響き、少年が家を回るようにかけてきた。俺の姿を見て目を丸くした少年は、満面の笑顔で俺に抱きついてきた。
「お兄ちゃん!!」

「こう君?」
俺はその成長ぶりに目を見張った。3週間前は幼児と言っても良いくらい幼かったのに、怖いくらい成長している。
「大きくなったなー!何年生?」
「2年生!」
ついこの前会ったときには、人見知りしていたのに。子どもの成長は凄いと思う。
「入って!お父さん研究室にいるよ。お父さーん!」
俺の手を引き、玄関に招き入れたこう君は、廊下に上がると、ドタドタと奥へ走って行った。


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