未来も過去も

もこ

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19年前

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こう君に頭を洗ってもらってる。銭湯の広い洗い場で向かい合わせに座って。湯船の中から、巌城さんがニコニコしながらこっちを見ている。ゆっくりと洗うこう君の手が、だんだん顔に落ちてきた。
「どうかした?」
目を瞑りながらこう君に聞く。
「お兄ちゃんのほっぺに泡がついたの。」
そのまま、泡を拭き取るように撫でられた。
「ありがと。」

…意識が浮上する。
『ああ、夢を見てたんだ。銭湯か。こう君と行ってみたいな。』
まだ体が動かない。なんだか金縛りにあったようだ。あったことないけど。つか、本当に金縛り?その時、左の頬を撫でられるような感触があった。

『おわっ!な、何だ?』
目を開けようとするがあけられない。また、左の頬に手の感触が。今度はなかなか動かない。スッと頬から唇に指が動いたと思ったら、離れていった。
『ゆ、ゆ、幽霊?目を開ければ見える系!?』
しばらくすると、唇に柔らかな感触が当たった。そっと触れるか触れないかの感触だったが、緊張している俺には感じられた。鼓動が速くなる。金縛りを解くにはどうしたらいいんだっけ。…分からん。何か俺の顔の近くにいる。…確かめたい。顔の近くにいる何かが遠ざかる気配がする。待って。ちょっと待ってってば…。

「…ふん!」
鼻息を荒く吐き出し、目を開けた。幽霊でも見えるかと、辺りをキョロキョロするが、なんてことない、だんだん慣れてきたいつもの「過去の部屋」だ。…明るい。窓から見える空には、羊雲がみえる。遠くに富士山がはっきりと見えた。

コウイチはどこだ?いつのまにか開いていたカプセルに起き上がり、机の方を見ると、コウイチがパソコンの前で何やらやっていた。
「おはよう!」
俺の声に椅子を回しこちらを見たコウイチが立ち上がった。
「昼、食べるか?」

何故か優しく感じる。あれ?コウイチってこんなに柔らかい雰囲気だったっけ?
「作ったの?食べる食べる!」
俺の笑顔を確認し、コウイチが奥の部屋へ消えて行った。

「おわっ!うまそう!」
しばらくしてお盆を持って出てきたコウイチは、前回と同じく机の上にそのまま置いて椅子に座った。俺も隣の椅子を引いて座る。今日はハンバーグだ。一口食べて俺は唸った。デミグラスソースとは違うトマトベースのオリジナルタレがかかっている。初めての味だが、トマトの酸味が効いててとても美味い。

ご飯をごくんと飲み込み、何となく違和感を感じた。
「…コウイチさんは食べないの?」
「狭いからな。後で部屋で食べる。」
「あー、なんだかごめんな?俺ばっかり。」

今度、お礼にテーブルをプレゼントしよう。2人で一緒に食事が取れるぐらいの。折り畳み式のがあるといいな。

このショッピングセンターで家具を売っている場所はどこだっけ?物思いにふけりながら食事を続けた。

コウイチは何を話すでもなく、そんな俺をジッと見つめていた。
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