未来も過去も

もこ

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14年前

1

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螺旋階段を登って白い部屋にたどり着く。配達業務も6回目ともなれば慣れたものだ。時間を見ると、9時40分。ちょっとだけ早く来すぎた。部屋の入り口には真っ白な上がり框がついている。ちょっと時間を潰そうとベンチがわりに腰掛けた。

4回目と5回目は18年前と16年前に飛んだ。相変わらずの巌城さんのお宅に泊まらせてもらって、こう君と楽しく過ごした。最後に会ったのはこう君が5年生の12月。

『大きくなってくよなあ。』
こんな短期間で1人の人間の成長を見るのは驚きでしかない。向こうは数年おきだが、こう君を初め、巌城さんの家ではみんな歓迎してくれる。4回目にはこう君の祖父母と近づきになった。秋大根を収穫するのを手伝って、外の水道で、こう君と冷たい!と悲鳴を上げながら洗ったのが楽しかった。毎回写真を撮るのが恒例になった。ただフィルムカメラからデジタルカメラに変わったけど。

「さ、今回は14年前。こう君は中学生か。部活は…サッカーだろうな。」
ひとり言を呟いて、立ち上がると部屋に入るべく右手を上げた。

「…だからもう少し時間がかかるよ。」
急に聞こえてきた声に後ろを振り向くと、思いもよらぬ人たちが、真後ろに表れた扉から出てくるところだった。

「…?…巌城さん!」
間違えようがない、グレーのスーツでバッチリ決めているが巌城さんだ。大分老けた。オールバックの髪に白髪が多く混じっている。俺を見て、巌城さんの後ろにいた濃紺のスーツの男2人が、巌城さんを守るように前に出てきた。その後ろから、巌城さんが一歩踏み出し笑顔を見せた。

「小野寺さん!…そうだ、今日でしたね。うっかりしてた。よろしくお願いしますね。」
「はい。あの…」
何でここに巌城さんが?そこの部屋は何ですか?聞きたいことがたくさんあったが、うまく言葉が出てこない。

「洸…が待ってますから…。これで失礼しますね。気をつけて行ってきて下さい。」
他の3人に視線を送り、螺旋階段を降りていく。技術者と思われる作業着を着た小柄の男と、巌城さんを守るようにしていたガタイの良い2人のスーツ姿の男たちが後に続いて降りて行った。

『こう君が待っている?どこで?ここで?ああ。14年前?』

無意識に「過去の部屋」へ手紋を合わせる。扉が表れ、音もなく開く。コウイチはいつものように目の前に立っていた。

「おはよう!」
慌てて笑顔を取り繕い、挨拶をした。
「…何かあったのか?」
俺を通すために身体を脇にどけながら、コウイチが呟いた。

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