未来も過去も

もこ

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12年前

7

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今日の夜も当然のようにこう君の部屋に布団が敷いてあった。おばあさんがすぐに寝られるようにと準備してくれたらしい。夜中の1時はとっくに過ぎていたが、俺たちはまだ布団の中で起きていた。

こう君の部屋は、2年前とさほど変わらなかった。本棚の中に増えた参考書や教科書が受験生だと物語っている。机の上の棚には、アナログの目覚まし時計や、使い古しの携帯、壁掛け時計などが並んでいた。時計は動いている様子がない。

「これ、どうしたの?」
指を指して聞く俺に、分解するんだ、とこう君は笑った。
「分解してから組み立てると、また動き出すことがあるんだ。どうしてなのか、それが知りたい。」
はあ…。俺には予想がつかないが、「分解」という言葉にさすが巌城さんと親子だと感心した。

「今日は楽しかったなぁ。いい年になりそう。小野寺さんに御守りもらったし。たこ焼き奢ってもらったし。」
こう君が、ベッドの上からこちらを向いて話しかける。
「いや、このスウェット準備してくれたんだから、全然チャラだよ。」

寝るときに前回置き忘れた下着や寝間着を受け取ったが、それと同時に2種類のスウェットの上下が布団の上にあった。
「小野寺さんにクリスマスプレゼント。どっちがいい?」
透明なビニールに包まれたそれは、黒とグレーのお揃いのスウェットだった。
「1つはこう君用?」
「うん、そう。」

「じゃあ、グレーかな。こう君、きっと黒似合うよ。」
黒のスウェットをこう君の胸に当てながらそういうと、こう君は嬉しそうに笑った。
「今日は年初めだから、こっち着て寝ようよ。」
こう君の提案に特に異議もなく、俺たちは真新しいスウェットに着替えて布団に入ろうとした。俺とこう君にサイズはピッタリだった。

『…あれ?このロゴ…どこかで見たような…。』
「ね、記念写真撮ろうよ。一緒に。こっちに来て!」
こう君がベッドの端をポンと叩く。俺は思考を中断され、ベッドの端に腰掛けた。
机の端に、本棚から取り出した辞書や参考書を重ねて高さを調整する。何度かカメラを覗いていたが、満足する高さになったようだ。

「はい、笑って!」
こう君が隣に座り、俺に顔を寄せてきた。タイマーがセットされたそれは、程なく「カシャ」と音を立てて時間を切り取った。
「それ、置いてってね。次に来た時もそれ着て寝て。もう、自分で持ってくることないよ。」
布団に入り込む前にこう君が言った。


…しかし、次にこのスウェットを着る機会は訪れなかった。

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