ある時、ある場所で

もこ

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2か月前、「自分の部屋」で(真人)

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「………」

母さんは、なかなか返事をしなかった。俺は、そんな母さんをずっと見ていた。コーヒーをジッと見つめていた母さんは、一口飲むと俺に顔を向けた。
「父さんは…父さんの事は、忘れたことなんてないわ。」

「父さんって…誰なの?」
今まで聞きたくても我慢してきた。でもここで聞かなかったら、絶対に一生聞かされる事はない。…そう感じた。

「真人…。誰と結婚するのかって聞かないの?」
フッと笑顔を見せた母さんが逆に問いかけてきた。
「箕田さんだろ?…最近、箕田さん頻繁に来てるし。分かるよ。」
母さんと箕田さんに男女の性的な雰囲気があるかといえば、そうともいえない。どちらかといえば長年連れ添った夫婦のような…?…わからない。俺が鈍いだけかもしれない。

「そうね…。分かっちゃった?」
悪戯が見つかった時のような表情をする母さんに微笑みかけ、コーヒーに口をつける。母さんが淹れたコーヒーは、同じ豆を使っていても何故か俺とは違う味がする。
「…で?父さんは…誰なの?」

「………真臣さん…。」
小さく呟いた母さんの言葉を聞いたと同時に、俺は飲み込んだはずのコーヒーが気管に入ったことに気づいた。
「おっ、ゴホッ、ゴホッ…か、母さん…ゴホッ、ゴホゴホッ…ンンっ!」
無理矢理気管に入ったコーヒーを出し、呼吸を整えた。

「母さん!!箕田さんは知ってなかったよ!?」
間違いない。1年半前、「minori's coffee」に初めて行く車の中で、箕田さんに聞いた。母さんに好きな人ができたって。俺を身籠ったと聞いて身を引いたって。

「言わなかったからよ。」
「どうして?」
俺の言葉に母さんは少しだけ遠い目をした。
「あの頃は…2人とも若かったし…。お金も無かったし。真臣さんは、ずっと夢を追いかけていて不安だったのよ。それに、」

俺の顔を見て、笑いかけた。
「箕田みのり、なんて冗談みたいでしょ?」
母さんの初めて見るような笑顔に、何と返したらいいか分からなかった。名前って…。そこでふと気づいた。

「俺の名前の漢字は、箕田さんからとったの?」
「ええ、もちろん!真臣さんは未だに気づいてないけどね?それに、このお店の名前も関係あるのよ?」
この店の名前?「trois」が?何の関係?

「分からない…何?」
「3つのM。真人、みのり、真臣…。本当は3Mってつけようとしたんだけど、なんだか洋服のサイズみたいでしょ?だから、ちょっとだけ捩ったの。」
母さんの言葉に、生まれてからずっと埋まらなかった穴が急速に閉じていくような気がした。

「『minori's coffee』に『trois』か…。」
なんだ…お互いにずっと想っていたわけだ…。あんなに聞きたかった父さんが箕田さんと分かって、ビックリしたけど心が満たされる気がした。何となく、何となくだけど俺も箕田さんに繋がりを感じていたような気がする。

「それで?…プロポーズはいつされたの?」
自然に笑顔を作っていた。…母さんの返事を聞くまでは、だ。

「プロポーズ?されてないわ。今度、私からするの。」



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