84 / 118
2か月前、「自分の部屋」で(真人)
4
しおりを挟む
「大丈夫よ。」
母さんが箕田さんからタオルを受け取りながら答えた。
「いや…俺、真人に聞いてるんだけど。」
もう、母さんのペースだ。間違いない。俺はこれから先の展開を幾つか思い浮かべながら、身構えた。
「大丈夫。真人のお父さんは真臣さんだから。」
…言ったっ!
箕田さんが椅子をガタッと音立てて立ち上がった。俺は最悪な展開にならないように祈った。無事、2人がくっつきますように…!どうして俺がこんなにドキドキしてなくちゃならないんだ?その間箕田さんは、口を開けたり閉めたりしながら、俺たちを見ていた。
「本当に…?」
「ええ。」
箕田さんは、信じられないって顔をしながら母さんを見た。母さんは少しだけ真面目な顔に戻っていた。俺は、その場から逃げ出したかった。
「…本当なんだな……やっぱりっ!」
箕田さんは、そう言ったかと思うと、俺のところへ飛んできて抱きしめてきた。
「真人!…小学生だったお前を見てた時、俺の小さな頃に似ているとずっと思ってたんだ。…聞けなかった…怖くて…。」
「…箕田さん………父さん…。」
俺は、どうしたら良いかわからなかったが、手を箕田さんの両肩に添えた。父さんの匂い…。初めて感じた父親の香りはコーヒーの香りでいっぱいだった。
「真臣さん、ごめんなさい…。」
母さんがそばに来ていた。俺を抱きしめている真臣さんの腕に手を乗せて、少しだけ俯き、殊勝な顔をしていた。
「奥ちゃん…!」
俺から離れた箕田さんは、母さんの手を取るとキッチンを出て、一緒に店の方へ行ってしまった。誰もいないテーブルに座る。…大丈夫だと信じたい。食事の続きをしようと箸を取ったが、何を口に入れても、何の味もしなかった。
ようやくご飯がなくなるという頃、バタンと扉が開く音がして、2人分の足音が戻ってきた。一旦鎮まりかけた心臓が、また早鐘を打つ。手を繋いで戻ってきた姿を見た時、心からホッとした。
「真人、明日は金曜日だ。仏滅だろうが何だろうが籍入れる。」
箕田さんは、今までに見たことがないほど、精悍な顔つきになっていた。母さんは…少しだけ赤い顔を俺に向けて、にっこり微笑んでいた。
「やったっ!…おめでとう!!母さん…父さんっ!」
立ち上がって2人の所に行く。3人でハグをしながら、人生で何度あるかわからないような幸福感に包まれていた。
「3人で一緒に寝る!」
箕田さん、いや、父さんは譲らなかった。俺と2人で一緒に風呂に入るとも言ってきたが、それは断った。結局「お客さんが泊まる部屋」に、敷き布団を2枚並べ、掛け布団を3枚重なるように掛けて俺たちは横になった。母さんがいつの間にか準備していた3人お揃いのパジャマを身につけて…。
「母さん…良かったね。」
真ん中に横になった母さんに声をかける。父さんはすでに寝ていた。母さんとこうやって一緒に寝るのも小学生以来だ。
「ええ。ありがとう…。…真人?あなたは…いないの?好きな人。」
「いるよ…。ずっと前から…いる…。」
目を瞑る…。ゆうのことを思い浮かべながら、ここまでなら別に言ってもいいかな、そう思っていた。
母さんが箕田さんからタオルを受け取りながら答えた。
「いや…俺、真人に聞いてるんだけど。」
もう、母さんのペースだ。間違いない。俺はこれから先の展開を幾つか思い浮かべながら、身構えた。
「大丈夫。真人のお父さんは真臣さんだから。」
…言ったっ!
箕田さんが椅子をガタッと音立てて立ち上がった。俺は最悪な展開にならないように祈った。無事、2人がくっつきますように…!どうして俺がこんなにドキドキしてなくちゃならないんだ?その間箕田さんは、口を開けたり閉めたりしながら、俺たちを見ていた。
「本当に…?」
「ええ。」
箕田さんは、信じられないって顔をしながら母さんを見た。母さんは少しだけ真面目な顔に戻っていた。俺は、その場から逃げ出したかった。
「…本当なんだな……やっぱりっ!」
箕田さんは、そう言ったかと思うと、俺のところへ飛んできて抱きしめてきた。
「真人!…小学生だったお前を見てた時、俺の小さな頃に似ているとずっと思ってたんだ。…聞けなかった…怖くて…。」
「…箕田さん………父さん…。」
俺は、どうしたら良いかわからなかったが、手を箕田さんの両肩に添えた。父さんの匂い…。初めて感じた父親の香りはコーヒーの香りでいっぱいだった。
「真臣さん、ごめんなさい…。」
母さんがそばに来ていた。俺を抱きしめている真臣さんの腕に手を乗せて、少しだけ俯き、殊勝な顔をしていた。
「奥ちゃん…!」
俺から離れた箕田さんは、母さんの手を取るとキッチンを出て、一緒に店の方へ行ってしまった。誰もいないテーブルに座る。…大丈夫だと信じたい。食事の続きをしようと箸を取ったが、何を口に入れても、何の味もしなかった。
ようやくご飯がなくなるという頃、バタンと扉が開く音がして、2人分の足音が戻ってきた。一旦鎮まりかけた心臓が、また早鐘を打つ。手を繋いで戻ってきた姿を見た時、心からホッとした。
「真人、明日は金曜日だ。仏滅だろうが何だろうが籍入れる。」
箕田さんは、今までに見たことがないほど、精悍な顔つきになっていた。母さんは…少しだけ赤い顔を俺に向けて、にっこり微笑んでいた。
「やったっ!…おめでとう!!母さん…父さんっ!」
立ち上がって2人の所に行く。3人でハグをしながら、人生で何度あるかわからないような幸福感に包まれていた。
「3人で一緒に寝る!」
箕田さん、いや、父さんは譲らなかった。俺と2人で一緒に風呂に入るとも言ってきたが、それは断った。結局「お客さんが泊まる部屋」に、敷き布団を2枚並べ、掛け布団を3枚重なるように掛けて俺たちは横になった。母さんがいつの間にか準備していた3人お揃いのパジャマを身につけて…。
「母さん…良かったね。」
真ん中に横になった母さんに声をかける。父さんはすでに寝ていた。母さんとこうやって一緒に寝るのも小学生以来だ。
「ええ。ありがとう…。…真人?あなたは…いないの?好きな人。」
「いるよ…。ずっと前から…いる…。」
目を瞑る…。ゆうのことを思い浮かべながら、ここまでなら別に言ってもいいかな、そう思っていた。
0
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる