ある時、ある場所で

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5回目〜20年前〜(悠)

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「ごめん。…1年半ぐらい前に『minori's coffee』に仕事で行ってたんだ。」
正直に話す。これ以上、隠し事を増やしたくない。
「どうして…?」
「どうしてか」…これを言ってしまったらどうなる?あの時、真人は俺に気づいてた…今ならわかる。絶対にあの時の俺を不審に思うだろう。名前まで聞いたんだ。

「あの時は…真人のことを真人だって分からなかった。」
「………」
でも、正直に言うしかない。そんな気持ちが俺の口を動かしていた。
「あの時、どうしても会ったことがあるような気がして名前を聞いた。でも、それでも思い出せなかったんだ。…ごめんな。」

「…うん、いいよ。こうして…話せるだけでとても嬉しい。『minori's coffee』は、多分、ゆうに会った日で辞めたんだ。元々コーヒーの事を教えて貰うために期間限定で働いていたから。」
信じてくれるの…?真人は…優しい…。会いたい。今すぐこの腕の中に抱きしめたい。

「そうか。『ミノ・カフェ』のコーヒーは旨いよな。俺も好き。それで、何のコーヒーを教えてもらったの?」
「……モカとかブルマンとか……煎り方から…教えてもらった…。」
真人の口調が明らかに変わった。ん…?どうした?

「ゆう…もしかしてだけど…うちの近くに住んでたりする?」
『!!!』
「ミノ・カフェ」っ!?しまったっ!あの時のターゲットが、コーヒー繋がりで「ミノ・カフェ」に関係あることが自分の中で当たり前になってた。本人に近い人しか分からないだろうに…。なんて言う?嘘はつきたくない。でもこのモールに住んでることを言ってしまったら、何故ここから出られないのかいう事になる。それはダメだ…。契約云々ばかりじゃない。電話でなんか絶対に信じさせられない…。…どうする…?

「…うん。近くに住んでる。」
結局、俺の中では正直に話す事を選んでいた。
「どうして…。」
「どうしても明かすわけにはいかなかったんだ。3月まではここからも出られない。仕事で…。」
「………。」
沈黙が痛い…。テーブルに乗った空の弁当箱を見つめながら、真人の言葉を待つ。俺の…隠し事…無くなればいいのに。

「…ゆう…4月1日…待っててもいいの?」
真人の言葉に瞬時に反応した。
「もちろん!絶対に行く。拘束されるのは3月31日までだ。それ以降は絶対に大丈夫。会いに行く!」
真人…待っててくれる?信じられないぐらいの明るい光が俺の全身を包んだ。自然と早口になる。

「…うん。…待ってる。」
「待っててくれるの!?」
信じられない気持ちで、無意識に立ち上がっていた。部屋の中をグルグル歩き回る。テーブルを回り、キッチンへ向かった。
「待ってる…今までも待ってたよ。」
その瞬間、足がピタッと動きを止めた。信じられない…。嬉しい…。シンクの中で水につけてたコップをジッと見つめた。

「……ありがとう…。」


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