96 / 118
5回目〜20年前〜(悠)
9
しおりを挟む
「『trois』で新しくコーヒーのメニュー増やしたんだ。多分、『ミノ・カフェ』にも負けない自信がある。」
真人の明るい声が聞こえた。俺も瞬きをして出てこようとした涙を抑えると、努めて明るい声を出した。
「へー、楽しみ。今度ご馳走してよ。」
「うん。『minori's coffee』での修行の成果見せるよ。」
それから、なるべく4月の話題に触れないように気をつけながら、話を続けた。真人は一人っ子。俺は2人姉弟だ。聞きづらいことも敢えて聞いてみる。
「真人は…お父さんは?」
20年前に飛んだ時、母親が父親がいないって言ってた。だからか、男の人に甘えるって…。
「ずっといなかったんだけど、最近できた。」
えっ?お母さんが結婚したってこと?」
「うん、そんなとこ。今度会った時に話すよ。結構劇的な話だから…。」
「苗字は…?変わるの?」
「…う…ん、どうかな…。まだ分からない。実は昨日結婚が決まって、今日届出を出しに2人で行ってた。俺は…どうなるのかな?」
俺の家は両親が健在で、4つ離れた姉も嫁に行ってない。つか、あいつが誰かと付き合ってるなんて聞いたことない。真人にアドバイスできるような知識は皆無だった。
それから、友だちの話をしたり、好きな音楽の話を聞いたりしながら楽しい時間を過ごした。
「来週、また出来るだけ同じ時間に電話するよ。」
「うん。…待ってる。その日はずっと待ってるから、大丈夫。店を優先させて。」
よく話を聞くと、「trois」の閉店は8時だが、もちろん客が帰らなければ店を閉めるわけにはいかない。閉店が10時近くになってしまうことも珍しくないんだそうだ。
「お休み…。」
「お休みなさい。」
耳に心地よい真人の声をインプットする…。この声を今直接聞きたい。俺の腕の中で…。もうすぐそうなる日も近い。そう思いながら、電話を切った。
その晩は真人との会話を思い出しながら、幸せな気持ちで眠りについた。
真人の明るい声が聞こえた。俺も瞬きをして出てこようとした涙を抑えると、努めて明るい声を出した。
「へー、楽しみ。今度ご馳走してよ。」
「うん。『minori's coffee』での修行の成果見せるよ。」
それから、なるべく4月の話題に触れないように気をつけながら、話を続けた。真人は一人っ子。俺は2人姉弟だ。聞きづらいことも敢えて聞いてみる。
「真人は…お父さんは?」
20年前に飛んだ時、母親が父親がいないって言ってた。だからか、男の人に甘えるって…。
「ずっといなかったんだけど、最近できた。」
えっ?お母さんが結婚したってこと?」
「うん、そんなとこ。今度会った時に話すよ。結構劇的な話だから…。」
「苗字は…?変わるの?」
「…う…ん、どうかな…。まだ分からない。実は昨日結婚が決まって、今日届出を出しに2人で行ってた。俺は…どうなるのかな?」
俺の家は両親が健在で、4つ離れた姉も嫁に行ってない。つか、あいつが誰かと付き合ってるなんて聞いたことない。真人にアドバイスできるような知識は皆無だった。
それから、友だちの話をしたり、好きな音楽の話を聞いたりしながら楽しい時間を過ごした。
「来週、また出来るだけ同じ時間に電話するよ。」
「うん。…待ってる。その日はずっと待ってるから、大丈夫。店を優先させて。」
よく話を聞くと、「trois」の閉店は8時だが、もちろん客が帰らなければ店を閉めるわけにはいかない。閉店が10時近くになってしまうことも珍しくないんだそうだ。
「お休み…。」
「お休みなさい。」
耳に心地よい真人の声をインプットする…。この声を今直接聞きたい。俺の腕の中で…。もうすぐそうなる日も近い。そう思いながら、電話を切った。
その晩は真人との会話を思い出しながら、幸せな気持ちで眠りについた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
47
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる