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1日前
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握り飯を作る。最近は、毎日飯を炊くから余ってしょうがない。今日はバイト開始が午前中だから、昼休憩に食べる予定だった。野菜はまあ、お気に入りのサラダでも1つ買えばいいだろう。
ちょうど3つ目の飯を握り終わり、海苔を巻いているところでベランダに人影が見えた。
『あっ、あいつ!』
思った時には、飯を置いて音を立てないようにキッチンを出、窓へと向かっていた。人影は床に何かを置いて、またサッと戻っていく。
『忍者のような奴!』
「おいっ!」
俺は窓を開けると、ちょうど隣のベランダに降り立った男に声をかけた。その瞬間、男の動きがピタッと止まったのが分かった。
足元には案の定、昨日の皿と茶碗が綺麗に洗ってトレーに乗せて置いてある。皿と茶碗の間にはメモ用紙。かがみ込んで紙片を拾い上げた。
「お前、口聞けねえのか?」
「……。」
「言葉で言ってもらった方が、俺は嬉しいんだけど。」
「……。」
手の中にある、メモ用紙に目を落とす。そこには、やはりペン書きの綺麗な文字でお礼が書いてあった。
〈ありがとう。助かった。〉
はあ、とため息が1つ漏れる。こんなちっぽけな紙で絆される俺なんかじゃない。
「お前さ、今日は入学式だろ。何か食べたのか?」
「……。」
「金は? 仕送りとかないのか。」
「…………。」
「あああああっ! ちょっとそこで待ってろ!」
俺はある決心をすると部屋の中に舞い戻った。海苔をつけたばかりの握り飯を1つずつアルミホイルに包む。わりと綺麗なまま保存されてた買い物袋を1つ広げて3つ全てぶち込んだ。
「ほら俺ん家、飯は山ほどあるんだ。持ってけ。」
足元にあるお盆を踏みつけないように気をつけながら、隣のベランダに腕を伸ばす。なかなか受け取らない。躊躇しているのかどうなのか。腕を伸ばしている俺の身にもなってみろ! 覗くぞ。
「ほら、まだ飯はあるんだ。遠慮しなくていい。」
「……。」
本当に、この数日は何故か飯を炊きすぎた。食べてもらえると万々歳なんだが。
「ほらっ。」
「……にゃー。」
腕を揺らした途端に、奴の手が俺の手を掠めるのが分かった。そして袋が離れていく感触。手が触れた瞬間に体のどこかにゾクっとしたような痺れが走ったが、気のせいだよな?
「お前さ、そんなに身軽なんだから俺ん家にいつでも入っていいぜ? 窓の鍵開けとくから。貴重品は持って歩いてるし。あ、ただしパソコンだけは持っていくなよ? そしてベッドの下のエロ本もだ。見てもいいけど持ってくな。それさえ守ってくれればいつでも入っていい。冷蔵庫の中やキッチンの下漁って、何でも食いたいものを食えよ。何かなくなったらお前だな、と思っとくから。」
「……にゃ」
「じゃ、入学式行ってこい。昼からだろ?」
「にゃ。」
俺の言葉に返事をした男が、窓を開けて中に入って行くのが分かった。俺は何故か満足して、まだ炊飯器に残っている飯でもう一度握り飯を作ろうと足元のトレーを拾い上げた。
ちょうど3つ目の飯を握り終わり、海苔を巻いているところでベランダに人影が見えた。
『あっ、あいつ!』
思った時には、飯を置いて音を立てないようにキッチンを出、窓へと向かっていた。人影は床に何かを置いて、またサッと戻っていく。
『忍者のような奴!』
「おいっ!」
俺は窓を開けると、ちょうど隣のベランダに降り立った男に声をかけた。その瞬間、男の動きがピタッと止まったのが分かった。
足元には案の定、昨日の皿と茶碗が綺麗に洗ってトレーに乗せて置いてある。皿と茶碗の間にはメモ用紙。かがみ込んで紙片を拾い上げた。
「お前、口聞けねえのか?」
「……。」
「言葉で言ってもらった方が、俺は嬉しいんだけど。」
「……。」
手の中にある、メモ用紙に目を落とす。そこには、やはりペン書きの綺麗な文字でお礼が書いてあった。
〈ありがとう。助かった。〉
はあ、とため息が1つ漏れる。こんなちっぽけな紙で絆される俺なんかじゃない。
「お前さ、今日は入学式だろ。何か食べたのか?」
「……。」
「金は? 仕送りとかないのか。」
「…………。」
「あああああっ! ちょっとそこで待ってろ!」
俺はある決心をすると部屋の中に舞い戻った。海苔をつけたばかりの握り飯を1つずつアルミホイルに包む。わりと綺麗なまま保存されてた買い物袋を1つ広げて3つ全てぶち込んだ。
「ほら俺ん家、飯は山ほどあるんだ。持ってけ。」
足元にあるお盆を踏みつけないように気をつけながら、隣のベランダに腕を伸ばす。なかなか受け取らない。躊躇しているのかどうなのか。腕を伸ばしている俺の身にもなってみろ! 覗くぞ。
「ほら、まだ飯はあるんだ。遠慮しなくていい。」
「……。」
本当に、この数日は何故か飯を炊きすぎた。食べてもらえると万々歳なんだが。
「ほらっ。」
「……にゃー。」
腕を揺らした途端に、奴の手が俺の手を掠めるのが分かった。そして袋が離れていく感触。手が触れた瞬間に体のどこかにゾクっとしたような痺れが走ったが、気のせいだよな?
「お前さ、そんなに身軽なんだから俺ん家にいつでも入っていいぜ? 窓の鍵開けとくから。貴重品は持って歩いてるし。あ、ただしパソコンだけは持っていくなよ? そしてベッドの下のエロ本もだ。見てもいいけど持ってくな。それさえ守ってくれればいつでも入っていい。冷蔵庫の中やキッチンの下漁って、何でも食いたいものを食えよ。何かなくなったらお前だな、と思っとくから。」
「……にゃ」
「じゃ、入学式行ってこい。昼からだろ?」
「にゃ。」
俺の言葉に返事をした男が、窓を開けて中に入って行くのが分かった。俺は何故か満足して、まだ炊飯器に残っている飯でもう一度握り飯を作ろうと足元のトレーを拾い上げた。
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