僕とオオカミどものシェアハウス

もこ

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教育実習一週目

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『適当に授業を流しているように見えて、結構押さえてるところはキチンと教えてるんだよな。』

 僕は、3年2組の子どもたちを引き連れてランチルームに来ていた。体育館の半分ほどあるここで、全学年で昼食をとる。当番が分けてくれた給食を自分でトレーに乗せていく仕組み。テーブルはどこを選んでもいい。異学年交流で、仲良くするのが狙いなのだとか。

 これまでに、佐々木先生や、吉村先生、森田先生とベテランの先生方の授業を一通り見せてもらった。森田先生は毎回ワークプリントを準備して、きっちり授業を進めるけど、僕の趣味じゃない。やっぱりノートに書かせた方が……。

「わー先生、こっち!」
「ん? ああ。」
 気がつくと、1つのテーブルを占領していた子どもたちから声がかけられていた。今日のメニューはポークカレーに福神漬け、フルーツヨーグルトに……トマトが2切れ。

『どうしてトマト? あれ? 給食って火を通したものしか出さないんじゃなかったっけ?』
 小鉢に入ったトマトに視線を奪われながら、呼ばれたテーブルに近づいていった。

「先生、ここ座って。」
「ありがとう。」
 1番端の空いている場所にトレーを乗せて見渡すと、3年2組の男子たちが顔を揃えていた。僕を呼んだのは色黒の……。

「菊池くんだったよね?」
「そう、当たり。全員覚えた?」
「いや……。」
 まだまだだ。目の前にいる五十嵐《いからし》と、その隣の加納、僕の隣の菊池は覚えた。でもその他は遠くに座っている小池、あとその隣の三井ぐらいか。

「いただきます。」
 スプーンを取ってカレーを掬う。給食のカレーは家で作るのと一味違う。ある程度の辛さはあるけど甘い。フルーティな甘さ。昔、りんごをすりおろすカレールーのCMを見たことがあるけど、実際に入ってるのかな?

「わー先生、中学の時って部活何してた?」
「和《かず》先生。す、水泳……?」
 五十嵐に声をかけられて、思わず声が小さくなる。結構得意だった水泳も、部活動では全然通用しないと知って、早々と諦めた。

「へぇ、すげー。泳げるんだ?」
「い、いや。一年でやめたし。」
 スイミングスクールで得意だと思っていた平泳ぎも、全然ダメだった。やっぱり体格のいい奴には太刀打ちできない。中学では背が小さい方だったし。

「なんで?」
「ドクター……ストップ?」
 お願いだから、それ以上掘り下げないでくれ。今でも平均には届かない身長。結構なコンプレックスなんだ。

「へぇ、体弱いんだ? これもらい。」
 斜め前からスプーンを出して、加納が僕のトマトを1つ奪っていった。
「おい、こらっ!」
 隣の菊池が声を荒げる。でも僕には好都合。

「あ、菊池くんも食べる? いいよ。」
 残りの一個。菊池くんに押しつけて、苦手なトマトがバレることなく食べずに済んだ。


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