僕とオオカミどものシェアハウス

もこ

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教育実習ニ週目

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「ただいま……って、あれ? みんなは?」
 食事が終わり、それぞれワインやコーヒーで寛いだ後、僕はキッチンで食器洗いをしていた。玄関の扉の開閉する音が聞こえたと思ったら、ユウが帰ってきてキッチンに顔を出した。

「リョウさんは自室に。トモさんはお風呂です。あ、トンカツを揚げますね。」
 油鍋を乗せて、IHの温度を170度に設定してスイッチを押す。さっき見ていたから大丈夫。僕でも出来るだろう。

「サンキュ。じゃあ、俺もシャワー浴びてくるかな。」
「えっ? シャワーですか?」
 何日か前のリョウの剣幕を思い出す。そしてトモの告白……。いや、こんな事を考える自分が変なのか? ユウはノーマルなんだから、大丈夫だ。でも……。

 自分が風呂に入っている時にユウが入ってきたら、と考える。ちょっとだけ恥ずかしい。リョウだったら……? いや、リョウなら平気か? トモは……? そこまで考えてハッとする。なにを考えてるんだ僕は! 僕は、僕もノーマルなんだって。好きになるのはいつも女の子だった!

「どうぞ。トンカツ揚げておきますよ。」
 平常心を保とうと努力しながら笑顔を作った。そんな僕の顔を見て、ユウがボソッと呟いた。
「一緒に入る?」

「んなっ、なっ、何を……!!」
 泡立つスポンジで磨いていた皿をシンクに落とす。ガチャンとコーヒーカップに触れて音を立てた。僕は、咄嗟に取り繕うことができなかった。

「あはははははっ! 冗談だって。カズ顔が真っ赤。面白い。」
 笑いながらキッチンを出て行くユウの後ろ姿に、皿を投げつけたい気分だった。くそっ! 揶揄われたっ! みんな同じ歳って言ってたよな? ここでは僕が1番年下なのはわかるけど、みんな何歳なんだろう?

 トモが、リョウは2年遅れて入社したって言ってた。という事は、みんな大学を卒業しているとしても、24歳にはなってる。でも3人の落ち着きぶりをみたら、僕と2つしか違わないとは思えない。20代……後半? 30代には見えないよな?

 ピー、ピー

 洗剤まみれの食器を水で濯ぎながら考えに耽っていると、IHが適温になったと知らせてきた。冷蔵庫から衣の纏ったカツを取り出す。端からそっと油に入れると、ジュワーと泡立つ音がした。

「あ、揚げてくれてるのか?」
 水の音と肉を揚げている音で気がつかなかった。トモがタオルを肩にかけながら、キッチンに入ってきた。濡れた黒髪を後ろに流してオールバックになった顔に、少しだけ羨ましくなった。トモやユウのような顔だったらモテるだろうな!

「はい。170度で良かったですか?」
「ああ。肉が厚いからな。後は俺がやる。仕事をしていいぞ?」
「あ、大丈夫です。食器洗いだけは済ませてしまいます。」

 洗った物をどんどん水切りカゴに立てておく。自然に乾燥させておいてからしまうのが、最近の流れになっていた。僕は、木曜日と金曜日には2日連続で授業をする事になっていた。でも、昨日教材研究をしていたおかげで余裕がある。今日ぐらいはのんびりしたい。

 隣に来てカツの面倒を見始めたトモと何を話すでもなく、僕は食器洗いを済ませるために手を動かし続けた。


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