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オオカミは1人だけ

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 無言で家までたどり着く。途中ランニングをしていたおじさんとすれ違ったけれど、繋がられた手は緩むことはなかった。玄関のドアを開けて中に入る。その途端にまたトモに抱きしめられた。

「ユウとリョウがこれから夕飯を買ってくる。先に風呂に入っておくか?」
 いつもならリョウが風呂に入っている頃だ。でも今日は僕たちの方が早いから、それもいいかもしれない。

「あっ、じゃあ僕、お風呂を洗ってきます。」
「毎朝のリョウが風呂洗いは済ませている。知らなかった?」

 僕の体を離して靴を脱ぎながらトモが話し始めた。風呂洗いはリョウの担当だけど、朝のうちにしていたなんて初めて知った。僕が出かけてから洗っていたのだろうか?

「先に入って? それとも一緒に入るか?」
「さ、さ、先に入ります!」
 一足先に上がり込んだトモの言葉に焦る。一緒? 一緒にってなんだよ! 慌てて僕も靴を脱ぎ、トモの脇をすり抜けて階段を昇っていった。後ろからトモがクツクツと笑う声が聞こえてきた。



「ただいま。」
「買ってきたよーー!」
 風呂から上がってテーブルに座り、スポーツドリンクを飲んでいると、ユウとリョウが帰ってきた。またピザの箱を4つ抱えている。ユウは小さなダンボールも小脇に抱えていた。

「トモが小池基治だってことは知ったんだろ?」
「……はい。」
 ユウがテーブルの上にダンボールを置いて僕を見た。途端に恥ずかしくなって俯いた。そうだった……トモの気持ちをユウが1番知ってたって言ってたんだ。
 
「じゃあ、僕たちは?」
「?」
 リョウの言葉で反射的に顔が上がった。えっ? 僕たち? 僕たちってリョウやユウのこと? その時、リビングのドアが開いてトモが入ってきた。
 
「いいだろ、明日で。それよりも腹が減った。ユウたちはどこで食べるんだ?」
 トモはジーンズに上半身裸で、バスタオルで頭を拭いていた。肩に掛けているのは白い……Tシャツ? トモの半裸を見るのは初めてだ。な、何だかもっと恥ずかしくなってまた俯いた。

「オイオイ、何でそんなにフェロモン撒き散らしてるんだよっ!」
 怒鳴るように喋り出したリョウの口を塞いで、ユウが言葉を続けた。

「それはさっき決めた通り。今日はリョウの部屋に行くよ。下着のコレクション見せてもらわなくちゃ。」
「ば、ば、ばかっ! 誰が見せるか!」
 ユウの手を引き剥がして、リョウが驚いた顔をしてユウを見上げた。

「もうビキニやソングを持ってることは確認済みだけどね。ジョックストラップのコレクションもあるみたいだから、今日はそれを履こうな?」

 声も出ない様子で、パクパクと口を動かしながらユウを見るリョウの顔が真紅に染まっていった。ソング? ジョックストラップ? どんな下着なんだ?

 頭の中に疑問符を貼りつけて、僕はただ、真っ赤になったリョウの頭にキスを落とすユウの姿を見ていた。


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