自分とアイツ、俺とオマエ

もこ

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 ー純ー

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『もうちょっと待ってて! 後1時間はかかる。』

 今日はシュンと、ショッピングモールの3階にある映画館で映画を観ようと待ち合わせをしていたのに、残業しなくてはならないというメールが入った。

 今日から公開。新作映画を観たいというシュンの願いを叶えようと、定時で速攻家に車を走らせ、急いで支度をして来ていた俺がバカみたいだ。

 俺のマンションはモールの近く。歩いて10分ほどの所にある。今日は映画を観たら、自分の家に初めてシュンを招待するつもりだった。

『家に帰るっていってもな。』
 つまらん。が、シュンがやってくるのは遅くなるし、その後で映画鑑賞なんてした日には、その場で寝ちまう自信がある。

『今日は諦めるか……。』

 シュンに「デートはまた今度。帰るわ。」とメールを打ち、自分のマンションへ帰ろうとモールの裏の公園へと足を踏み入れた。

 この公園は好きだ。夜も街灯がつき散歩をしている年寄りもいる。特に夜中は、噴水側に設置している6つのベンチがカップルでいっぱい。この噴水の前で何度かキスすると、ソイツと結ばれるらしい。……何度だ?

 枝分かれする道を左に行くと、遊具広場がある。とても広い。昼間はガキの声が煩くて、近くを通りたくないが、幸にして自分のマンションは反対側にある。

 桜や欅の葉が、片付けられることのないままで落ちている。くすんだ赤や黄色の絨毯を踏みしめながらゆっくりと歩いていくと、前から小柄な男が歩いてくるのが分かった。

『? 男だよな?』
 黒っぽい服、ジーンズに帽子。だが、帽子が何だか違和感がある。ベレー帽のように、少し膨らみがあって……いや、ベレー帽よりは大きいが。

『!』
 ソイツが街灯の近くに来た時、全身に稲妻が走ったような気がした。この前シュンと駅前を歩いていたときにすれ違った、そして以前、大学で俺の台車にぶつかったヤツ。

 すれ違いざまに、あっちが道を譲ろうとした。木々の生い茂る中に作られた遊歩道。この公園1番の古い桜の木の根元に避けて、俺に道を譲ろうとした男に向き直った。

「お前、バイか?」 
 びっくりした顔で、大きく目を見開きコッチを見てきた。ストレートの茶髪が、ダークブラウンの帽子の下から垂れ下がっている。見開いた目が大きい。元彼の哉太を思い出す。……女みたいだ。

「オイ、お前に聞いてんだ。お前、大学で俺にぶつかってきた奴だろ? なぁ。」
 
 なかなか話をしないソイツに痺れを切らして一歩近づくと、ソイツもまた一歩下がった。安心しろよ。こんな外で襲ったりなんかしねぇよ。

「オイ、何か喋れよ。」

 もう少しだけ、間合いを詰める。その途端、ソイツが元きた道を戻るように走り出した。気がつくと、俺も一緒になって走り出していた。
 

 
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