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遭遇6 〜侑〜
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パチパチパチパチ……
25名の拍手が鳴り響く。創作理論の発表が終わった。今日は前に夏帆ちゃんが発表した後だったから、自分の発表まで心を落ち着ける時間があった。
「侑ちゃん、良かったよーー。分かりやすかった。」
「ありがと。」
教授が感想を述べるのを聴こうともせずに、隣に座る夏帆ちゃんが話しかけてくる。終わってホッとしたのと、想像通りに発表できた安心感で思わず笑顔になった。
「創作理論」の授業は、自分の創作に影響を与えると思われる文献の紹介とその中身についての発表をしなくてはならない。いわゆるゼミ形式。発表を一回すれば単位がもらえる。自分は迷わずに「源氏物語」を選んだ。
10月の初めの方に、喜市くんが同じもので発表していたから躊躇していたけど、彼は「紫の上」の魅力について力説していた。違うと思うんだよね。ここはやはり主人公でしょ。
源氏の君が義母に当たる藤壺に恋をした。そしてその面影を求めてって、その一途さがいい。自分もそんな風に思われたい。いや、思っていきたいんだ。……誰を? 誰かを。
「侑ちゃん、これで終わりでしょ? 駅まで一緒に行かない?」
思いに耽っている間に授業が終わったっぽい。夏帆ちゃんの誘いに同意して、いつもの鞄に荷物をまとめて教室を後にした。
「侑ちゃんって彼氏いるの?」
「ん? いないよ?」
購買の方を振り返りながら答える。今日も純に会えなかった。熱を出してから1週間。学校で購買や学食に来るたびに姿を探すけど、会うことができなかった。あの時の、熱を出した時のお礼が言いたいのに。
「……あのさ、こんなこと聞いちゃまずいかなぁって、ずっと思っていたんだけど。」
「何?」
夏帆ちゃんの躊躇いがちな声に、耳を傾ける。何だろう?
「侑ちゃんって、女の子と付き合ってたりする?」
「ふはっ、はははっ!」
思わず笑ってしまった。そりゃあ、大学の構内で元カレたちと一緒にいることなんて稀だったけど……。
「ナイナイ。ないからっ! 自分彼氏はいたことあるけど、彼女はいたことない。」
「そっかーー。」
自分の言葉にテンションが低くなった夏帆ちゃんの声が少しだけ気になる。夏帆ちゃんはウール地のフレアースカートに黒いタイツ。フードの着いたロングコートを掛けて中にはタートルネックの白いニット。とても温かそう。そしてチェック柄のスカートが可愛い。ブーツに合ってる。
「何かあった?」
何だかしょんぼりしてしまった夏帆ちゃんに、そう聞かずにはいられなかった。
「う……ん、噂なんだけどね? 侑ちゃんが好きだという女の子結構いるみたい。」
「えっ? 自分を?」
反射的にそう聞かずにはいられなかった。今まで、告白してきたのは男の子ばかりだった。そりゃあ、女の子の誰にでも話しかける自分じゃないけど、話しかけられれば普通に話すし。でも、そんな風に見られていたなんて初めて聞いたんだけど。
「だって侑ちゃんカッコいいもの。私から見てもそうよ?」
「そうかなあ。」
そう言わずにはいられなかった。別に同性愛に偏見があるわけじゃないけど、付き合う対象っていったら、《そういう》関係を考えていくっていうことでしょ? 女の子どうしで……どうやって?
25名の拍手が鳴り響く。創作理論の発表が終わった。今日は前に夏帆ちゃんが発表した後だったから、自分の発表まで心を落ち着ける時間があった。
「侑ちゃん、良かったよーー。分かりやすかった。」
「ありがと。」
教授が感想を述べるのを聴こうともせずに、隣に座る夏帆ちゃんが話しかけてくる。終わってホッとしたのと、想像通りに発表できた安心感で思わず笑顔になった。
「創作理論」の授業は、自分の創作に影響を与えると思われる文献の紹介とその中身についての発表をしなくてはならない。いわゆるゼミ形式。発表を一回すれば単位がもらえる。自分は迷わずに「源氏物語」を選んだ。
10月の初めの方に、喜市くんが同じもので発表していたから躊躇していたけど、彼は「紫の上」の魅力について力説していた。違うと思うんだよね。ここはやはり主人公でしょ。
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「侑ちゃん、これで終わりでしょ? 駅まで一緒に行かない?」
思いに耽っている間に授業が終わったっぽい。夏帆ちゃんの誘いに同意して、いつもの鞄に荷物をまとめて教室を後にした。
「侑ちゃんって彼氏いるの?」
「ん? いないよ?」
購買の方を振り返りながら答える。今日も純に会えなかった。熱を出してから1週間。学校で購買や学食に来るたびに姿を探すけど、会うことができなかった。あの時の、熱を出した時のお礼が言いたいのに。
「……あのさ、こんなこと聞いちゃまずいかなぁって、ずっと思っていたんだけど。」
「何?」
夏帆ちゃんの躊躇いがちな声に、耳を傾ける。何だろう?
「侑ちゃんって、女の子と付き合ってたりする?」
「ふはっ、はははっ!」
思わず笑ってしまった。そりゃあ、大学の構内で元カレたちと一緒にいることなんて稀だったけど……。
「ナイナイ。ないからっ! 自分彼氏はいたことあるけど、彼女はいたことない。」
「そっかーー。」
自分の言葉にテンションが低くなった夏帆ちゃんの声が少しだけ気になる。夏帆ちゃんはウール地のフレアースカートに黒いタイツ。フードの着いたロングコートを掛けて中にはタートルネックの白いニット。とても温かそう。そしてチェック柄のスカートが可愛い。ブーツに合ってる。
「何かあった?」
何だかしょんぼりしてしまった夏帆ちゃんに、そう聞かずにはいられなかった。
「う……ん、噂なんだけどね? 侑ちゃんが好きだという女の子結構いるみたい。」
「えっ? 自分を?」
反射的にそう聞かずにはいられなかった。今まで、告白してきたのは男の子ばかりだった。そりゃあ、女の子の誰にでも話しかける自分じゃないけど、話しかけられれば普通に話すし。でも、そんな風に見られていたなんて初めて聞いたんだけど。
「だって侑ちゃんカッコいいもの。私から見てもそうよ?」
「そうかなあ。」
そう言わずにはいられなかった。別に同性愛に偏見があるわけじゃないけど、付き合う対象っていったら、《そういう》関係を考えていくっていうことでしょ? 女の子どうしで……どうやって?
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